04
「ご苦労様。それじゃ、中に入りましょうか。ちょうどこのダイヤに関わる情報が入ってきたところなのよ」
そう言ってローザは背後の扉を開き、キースとサイラスが後に続く。
淡い紫を基調とした内装はどこか怪しげな雰囲気を放っていた。うっすらと壁紙に描かれたバラの柄も、日に焼けた床板も、どこか古臭さを感じさせる。唯一、要所に取り付けられた間接照明だけが真新しい。
しばらくはローザが歩むたびに鳴るヒールの音だけが廊下に響き、誰も一言も発さない時間がすぎる。廊下を進み、階段をのぼり、さらに突き当りの部屋へたどり着くと、ようやくローザが口を開いた。
「今回の相手は、少し大きいわよ」
大胆不敵な怪盗の口調は揺るがない。
むしろ楽しげに言ってのけたローザは、立ち止まることなく扉を開けて部屋の中に滑り込んだ。
部屋には、様々な種類の棚が並んでいた。宝石や装飾具などの収まる薄い箱。ガラスケースの中には骨董品、棚の隙間から見える壁には絵画が詰め込まれている。
怪盗ローザのコレクションルーム。その中に、今日盗まれたダイヤモンドも収まることになる。
棚に並んだ小箱の一つを取り出して、ローザはその中にダイヤモンドを流し込んだ。甕から甕へと水を移す「節制」のタロットカードの美しさを思い出しながら、キースは簡潔に問う。
「繋がったんですか?」
ダイヤモンドを注視していた紫紺の瞳が、一瞬だけキースを向いた。
それだけでキースの気持ちは小躍りしそうなほどに舞い上がっているのだが、顎を引いてなんとかこらえる。
「ええ」
短く答えたローザが、小箱の蓋をパタンと閉める。