05
一刻もはやく抜け出したいのはキースも同様なので、目当てのものを探して室内を見まわす。
扉の正面には、二つのモニターが並ぶ大きなデスクが鎮座していた。円錐形の構造をしているため、壁はわずかに傾斜していて天井も床より狭い。壁の傾斜に合わせ、三方向にある窓の形も台形に近いものになっていた。超高層に位置しているため、差しこんでくる明かりは月光のみ。地上から見るよりも空が広い。
重要な書類──というよりは、隠すべき書類が入っていそうな金庫は、デスクの足元、板を一枚外した場所に収まっていた。
ダイヤル式の金庫を前に、キースは一度こめかみを揉んでからしゃがみこむ。開錠に必要な数字は五桁。聴覚と触覚だけを頼りに、特定の数字を見つけ出さなければならない。
大物を相手にしているのだから仕方のないことなのだが、さすがに連戦は厳しいものがあった。
「それにしても──なんだかアンバランスですね」
ダイヤルを回しながら、キースは呟いた。
一桁目はすぐに判明。
「なにが?」
控えめに問うローザは、聴覚に集中する作業を気づかっているのだろうか。
二桁目に目星をつけながら、キースが答える。
「警備員の装備は最新型なんですよね。でも、鍵の方はそうでもなくて……電子錠とか、生体認証とか、なかったじゃないですか」
言いながら、二桁目を確定。三桁目のダイヤルを回し始める。
ローザは何も言わない。サイラスも黙ったままだ。
「……えーっと、僕なにか妙なこと言ってます?」
「いいえ」
否定の言葉は速かった。
囁くような、それでいて堂々としたローザの声が続く。
「内戦時に使用される武器の話になるけれど、政府側はともかくとして反政府側の質は基本的に悪いわ。そういうときに他国が絡んでくると、良質だったり最新式だったりする武器が流れていくんだけど、今回の場合」




