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天賦




 「……えっと……」

 唐突な星野による選択肢の提示に二の句が継げないでいると、琴音が前に進み出て、言った。

「……少なくとも、あの<代行者>の勝ちだけは避けなければ。この楽園が、破壊されてしまう」

「それは肯定するよ琴音さん、いや、<イブ>。彼にとってのここは、憎くてしようがない場所だろうから」

 星野は琴音に向き直ると、真剣な眼差しで言った。

「失楽園の話において、アダムを巻き込んだのはイブだ。ここは琴音さんすなわちイブに決めてもらおうじゃないか」

「――待ってくれ」

 琴音に詰め寄る星野の目の前に割り込むようにして立ってから言った。

「この戦いが、はじめからなくなるってことは……全てが元通りになるのか……?」

「まあ、そういうことにはなるだろう」

「なら……<アダム>の俺は、第三の選択をしたい」

 その場が静まり返る。

 まるで一瞬、“無”が通り過ぎたかのように。

「誰が世界を創造しようと……例え星野、お前が創造する世界だとしても……こんなにたくさんの犠牲で創造される世界なんて、俺は……嫌だ」

 俺がきっぱりと言い切ったことに驚いたのか、星野は目を丸くして、即座に琴音に話しかける。

「琴音さんも、賛成なのかい?」

 琴音がこくりと頷くと、星野はしまったと言いたげな顔をしたが、すぐにいつもの余裕ぶった笑みを浮かべた。

「じゃあ賛同しよう。<創造主>としてはご遠慮願いたいところだが……生憎、僕もひねくれててね。アダムとイブの自由意志に神が従ったらどうなったかを、みてみたいのさ」

「……」

 世界の創造者になる。

 そんな絶対に二度と訪れないチャンスを、みすみす捨て去るのか。それも、いとも、簡単に。

 俺がそう尋ねようと口を開きかけた、その時。



 「――さて」

 冷たく、棘はないが人を見下したような、<ルシフェル>の声が響く。

 振り返ると、彼はすぐそこまできていた。無論背後に広がるは、数多の戦車、戦闘機、核弾頭。

「コーヒーブレイクはもう終わりだ。次のステップ、知恵と恥じらいの象徴を所有する時がきたのだ」

「ほざけ。その象徴を武器に使うなんて、随分と焦ってるみたいじゃないか」

「戯言を。君の望む世界を作る決意はできたのかね?」

「……できたはできたな。僕の決意ではないが」

 次の瞬間、星野は周囲に結界を張り巡らせた。

「谷戸」

「……なんだ」

「僕の結界はこれほど大きいと長くは持たない。あいつの攻撃がこちらに向くよう囮になるからケリをつけてくれ。お前と琴音さんなら、あいつを倒せる」

「星野、お前……」

「行け! あいつの裏に回れ!」

 遮るように発せられた星野の言葉に反射的に頷くと、琴音の手をひいて駆けだした。

 ふと、<ルシフェル>の方を見たが――星野の結界を武器にも利用した攻撃方法に苦戦し、こちらには気づいていないようであった。

「琴音、行こう」

「ええ、アダム」

「アダムはやめてくれ、気持ち悪いから」

 そうね、とほほ笑む琴音。<イブ>と化してから、どこか大人びたように感じる。

 ――そんなことを考えてる余裕など、ないはずなだけど。


 ※    ※


 木々が豪快に倒れ、煙幕がたちこめる。

 戦闘兵器を利用したパンツ攻撃を全てはじき返し、隙あらば結界で攻撃してくる星野の動きに、さすがの<ルシフェル>も動揺していた。

「まだ使える戦闘機はどこだ……ええい……! 知恵を与えてやった産物も、こんな体たらくでは……」

「どうした、もう終わりか。パンツの無駄遣いだぞ、<代行者>」

「考え直せ、<創造主>!」

 <ルシフェル>が残存する戦車を前進させ主砲を発射させつつ、声高に叫ぶ。

 それでも星野は結界で次々と弾丸を弾き、一歩一歩確実に前進していた。

「<アダム>と<イブ>は所詮神に設定された身……産物が自由意志を持つなど、道理に反している!」

「道理から外れまくってる奴に言われたくないね」

「本当に君の考えることは分からない……これは君と私の戦いだ、産物に邪魔されるような戦いではないはずだ! これでいいのか!」

「いいかどうかは、後ろを見れば分かるさ――産物の力を、見定めるといいよ」

自然権万歳ということです

やっぱり中編と長編は苦手です


ぶっちょ

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