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第6話

いゃぁぁぁぁぁぁぁ!


なんでこんな大事な日に寝坊?

部室寄って、新しいグリップテープ巻いて外に出ると、祐一も男子更衣室から出てきた。


「祐一おはよ!」

「おぅ!おはよ。なんか置きにきた?」

「ううん、グリップテープ巻きに寄ったの。」

「そっか。またピンク?」

「もちろん!」

「ギリだな。走るぞ!」

「うん!」

「いいアップになるな。」

「ね!」

「かぉはなんの競技出るの?」

「むかで競争。祐一は?」

「借り物競争。」

「お互い頑張ろう。」

「OK。」


“キーンコーン・・・”


「やべっ、鳴ってる!」

「ダッシュ!」

「じゃ、後でな!」

「うん!」


祐一と別れて教室に入ると、


「アウト」


待ち構えてた先生。


「すみません。」


素直に謝って席に着く。


「今日はどしたの?」


まぁこが聞いてきた。


「部室寄ってきたの。グリップテープ張り替えてた。」

「大事な試合だもんね。」

「そう。」



校庭に出て、開会式。

選手宣誓がなんと祐一と亜理紗だった。


うわ、異色(笑


競技開始!

うちの学校はまさに運動会!

紅白に分かれて競技するんだ。

最初は「ダサーイ」とか言ってても、玉入れなんか気づくとむきになってる(笑)


あたしはまぁこと出たムカデ競争はなんと一位入賞したんだよ!


男子の借り物競争が始まった。

祐一が出るんだっけ。

5番目くらいに出てきた祐一。

スタートダッシュはものすごく早かったのに、メモ見て固まってる。


「祐一どしたんだろ?」


キョロキョロしてあたしの方に走ってきたの。


「ごめん、俺は嘘つけないから。」

「は?」


祐一があたしの手を引っ張って、メモを持たせてお姫様抱っこをしたの。


「ちょっと!何??」

「メモ見ろよ。」


祐一、あたし抱えて走り出した。


『好きな人をお姫様抱っこ』


「引き強いね。」

「おぅ。」

「今だけ付き合ってやろう。」

「サンキュ。」


祐一の息が上がっている。


「重くてごめんね。」

「ノープロブレム」


ニッと笑ってくれた。


当然1位!

ハイタッチでお互いを祝福。


「助かった!」

「完全にうちら公認カップル?」


ひゅ〜ひゅ〜言ってるギャラリーに祐一はあたしを引っ張ってガッツポーズ。


「先生には悪いけどな。」


祐一はニッと笑った。


全競技が終わって閉会式。

今年は赤組が勝った。

うちのクラスも赤組だったんだよ!


「よく頑張ったな!」


先生もご満悦そう。

閉会式も済んで、ランチタイム♪

お昼をはさんで引退試合は行われるの。

お腹も満腹になって、いざ、着替えに部室に行きますか!


「まぁこ行くね!」

「うん、頑張って優勝してね!」


まぁこが言うと、みんなも「頑張れー!」って声かけてくれた。


「ありがとう!あとでね!」


教室を出て、階段のところで先生に呼びとめられた。


「花っ!行くのか?」

「はい。」

「うちのクラス代表でもあるんだから、頑張れよ。」

「はい。頑張ります。」


あたしちゃんと目見れなくて、さっさと走って部室に向かった。

洗い立てのユニホームを着て、新しいグリップを握って素振り。

後輩が整備しておいてくれたコートでアップして、軽くボールを打つ。

その頃に、続々と生徒がコートに集まった。

どんくらいがミス清南の“亜理紗”プレーを見にきたんだろ?


「こんな中やるの・・・」

「ギャラリー多すぎ。」

 

各々に緊張している。

 

あたしも・・・

だって、うちのクラス一番初めに到着してるし。

 

校長の話しから始まって、引退試合準決勝まで男女6ペアが紹介された。



第一試合。

ミス清南“亜理紗”ペアの試合から始まった。

全国レベルのボールは、やっぱ対戦ペアには歯が立たないみたいで、あっさり

3―0で圧勝。



そして、第二試合。

いよいよあたしの出番。

あたしがコートにでると、


「花田―!」

「かぉー!」


って声援が上がった。


なんか照れくさいよ。


もう、あらかじめ“トス”はしてあったから、ウィンドブレーカーのまま

コートにはいるいなや、対戦相手としばらく乱打で体をコートになじませる。


一球返すたんび、「おぉ〜」「やるぅ〜」って(笑


審判の『レディ』って声で乱打をやめて、軽く相手に会釈して相方に駆け寄る。

相方の手を握って、


「なっちゃん、頑張ろう!」

「うん、すぐそこで見てるの」

「かっこいいとこみ見せるしかないね!」

「うん!せーの、」


“ハイッ”


ギュって握って気合入れんの。

相手が「ボールいきます」って言って先攻のうちらにボールをよこした。


『5ゲームス マッチ プレイボール』


審判の開始の合図でいっせいに「さぁこーい」って声をだした。


まずは、あたしのサーブから。

あたしはボールを空に投げた。


“まずはフラット”


力強い振りが、フラットで当たれば、ものすごい勢いでサービスコートに向かっていく。

ボールはサービスコートの角に入った。

相手は少し前のめりになってたけど、しっかりとした返球。

あたしはかまわずシュートボールで返す。

こうしてしばらく後衛の打ち合いが始まった。


あたしのペアはレギュラー。

相手は補欠。


男子相手に打ち合ってるあたしらや、全国クラスの亜理紗たちとの力の差は歴然としていた。

ほとんどあたしに振り回される形で、最後に際どい角にシュートボールを打ち込んで1点。

続いてのサーブはネットにかかってフォルト。

セカンドサーブはアンダーカットサーブ。

ボールにスライス入れてイレギュラーさせるの。

セカンドサーブはね、緩い球だからコントロール自在。

相手がクロスに返してくるか、センターに返ってくるかでどちらが拾うか変わってくるの。

返ってきたボールはセンターより。

前に少し出た前衛のなっちゃんがローボレーに入って返した瞬間、


“決まった”


ってあたしは思ったよ。

その思惑通りに、なっちゃんのボレーに相手の後衛の反応が遅れて拾えなかったの。


『2―0』


今度はなっちゃんのサービスから。

なっちゃんはサウスポー。

カットサーブは強烈。

ネットにかかってあっさり1点。


今日のなっちゃんのカットサーブは絶好調!

次もあっさり1点取っちゃったんだ。


「絶好調じゃん!」

「恋のパワーは凄いの!」


そっか、好きな人が見てるんだもんね。

このセットもあっさり取ったけど、その後もあたしたちの流れにもっていったから、


『3―0』であたしたちの圧勝に終わったの。


決勝進出♪


クラスメイトの拍手で迎えられてベンチに座った。


「花田かっけー。」

「ありがと。」

「ナイスファイト!花田。」


クラスのみんなが声をかけてくれた。


「みんなありがとう!」

「かぉ、相変わらずかっこいい!次も頑張ってね!」


まぁこがタオルを渡してくれた。


「うん。」


遠くの方で先生と目が合った。

親指立ててグゥ〜サイン。

パッと目を反らしてしまった。


ダメ!

意識しちゃ。


今度は、男子の試合。

2ペアしかいないから早くも決勝戦。

コートで軽くアップする祐一に、


「祐一、絶対勝って。」

「かぉの前で負けるわけないだろ。3―0で勝ってやる。」

「頑張って!」


祐一は親指立ててコートに入っていった。

祐一は言葉通り3―0で勝ったの。

男子の優勝は祐一のペア。



後輩がコートの整備をしてる間アップをして、クラスの声援を背にコートに入った。

先攻は亜理紗のペアのサーブから。

意外にもあたしたちの優勢の流れだった。

軽く1セット取ってしまったの。

浮かれてもいられないんだけどね・・・。

相手はこの学校1番のペア。

全国クラスだし、プロがついてるから、あたしらなんかとはパワーも場数も違うの。

いとも簡単に1セット取りかえされてしまった。



『1―1』で始まった3セット目。

デュースが続く長い戦い。

どっちもゆずらない対決。


『アドバンテージ レシーバー』


相手は力強い振りでサーブを打ってきた。

あたしはこのおもた〜いサーブをストレートに打ち返してこのセットと勝ち取った。


あまりにも長いセットだったから、5分の休憩が与えられたの。

ベンチで水分補給してると、


「なんで最後はいとも簡単に決まったんだ?」


ってクラスの男子が聞いてきたの。


「うん、サーブが入ってきたとき、軸足をクロスに打つように見せかけて、前衛をクロスに走らせるように仕向けたの。打つギリギリでストレートに変えたから前衛が守りきれなかったんだ。」

「よくわかんないけど、すげぇ〜。」

「じゃ、行くわ。」


これでとれれば優勝、とればければ振り出し。


『2―1』


4セット目はあたしのサーブから。

最後に力をとっておきたかったから、選んだサーブは“スライスサーブ”。

速度は落ちるけど、回転がかかってカーブを描いて飛んでいく。

あたしたちもそうだけど、亜理紗のたちもミスが目立ち始めてきた。


“ここが正念場”


あたしはとっておいた体力で得意の“フラットサーブ”に切り替えて力いっぱいラケットを振った。

綺麗にコートに入ったサーブだけど、気持ちよくレシーブも返ってきた。

コーナーギリギリにINしたボールを、ロブで回避。

でもね、そのロブはあんまり飛んでいかなくて、相手前衛のスマッシュを打つチャンスボールになってしまったの。


“どこにくる?”


なっちゃんも後ろに下がった。


パコーンッ!


相手が決めたスマッシュはうちらの間に向かってきた。


「はいっ」


あたしが合図して、思いっきり踏み込んでバックハンドで拾った。


「よしっ!」


全然見えた。

これも祐一たちと特訓したからだね!

サーブも全部見える。

重いけど取れる。

この試合いける!


『3―2』


あと1点・・・


なっちゃんの切れ味すごいカットサーブが入って、相手前衛がクロスに返してきた。

なっちゃんの読みが当たったのか、ローボレーに入って返す。

亜理紗がフォローに走り出してロブで返してきた。

ロブは立て直すためにもあるが相手にはチャンスボール。

あたしはシュートボールを打つと見せかけて短めに軽く返した。

相手の前衛がスライスで短く返してあたしを前へ引きずりだしてきた。

かろうじて拾っって、なっちゃんが後ろに下がった。

亜理紗がチャンスと見て、思いっきりストレートに全国レベルのシュートボールを打ち込んできた。

でも、あたしは読んでいたりして!

もう、あたしは走り出してたんだ。

亜理紗のシュートボールをバックボレーで返して見事にヒット!

ギャラリーも一斉に沸きあがる。

亜理紗も粘って拾ってくる。

そのボールがネットインでコートに入ってきたの。


もう頭真っ白!


「うわぁぁぁぁぁ〜!」


目に入ってるボールしか見えてなかったんだ。

ギリでラケットに当たってあたしそのままコートの外まで顔面からスライディング。

すぐさま振り返って、


「なっちゃん!」

「まかせて!」


でも、ひるんだ前衛がボレーミスでネットにかけてしまって、うちらの優勝が決まったの。


「やったぁー!」

「かおりぃ〜!」


なっちゃんが飛びついてきた。


「やったね!」

「嬉しいよう!」


なっちゃんうれし泣き。


「かぉ!大丈夫か?」


祐一たちが傷だらけのあたしを起こしにきてくれたの。


「うん、大丈夫。」

「おめでとう!やったな。」


祐一が頭をなでる。


「祐一たちのおかげ。ありがとう。」

「かおり、挨拶いこ。」


挨拶しにネット中央に行く。


「花田さん、大丈夫?」

「うん。」


『3―1で花田ペア』


「ありがとうございました。」


亜理紗と握手をすると、


「羨ましかった。」

「え?」

「いつもテニス楽しそうにやってて。男テニとも仲良くて。どんどん力つけてくる花田さんに追いつかれないように私も必死だった。花田さんのテニス凄い好き。」

「ありがとう。あたしも羨ましかったよ。インハイで通用する凄いボール打って、綺麗で、女らしくて。あたしなんか男っぽいから全然もてたことない。」

「私だってもてないわ。」

「うそ〜。またまた。」

「ホントよ。持てはやされるだけ。知らないだけで、花田さんって結構もてるのよ。」

「知らなかった。」

「3年間お疲れ様。」

「亜理紗さんも、お疲れ。」


最後に笑顔で握手ができるなんて思わなかった。

亜理紗もホントは仲良くなりたかったんだって。

遠慮せずに声かけてくれりゃぁよかったのに。

あたしはクラスのみんなのとこに走り寄って、小さいけど優勝トロフィー掲げて


「応援ありがとう!」


そんで、一人一人にハイタッチして。


よく頑張った!


とか、


おめでとう!


って声かけてくれて。

ちょっと泣きそうになっちゃた(笑)


「花っ!」


先生に呼ばれて振り向くと、先生、保健室から救急箱持って走ってきてくれたの。


「お前・・・バカかっ!」


え?

怒られてる・・・?


先生、あたしの腕掴んでベンチに座らせて、傷の手当してくれたの。


「女なんだぞ、少しは考えてボール追いかけろ。こんなに傷だらけになって。」

「だって勝ちたかっただもん。」

「気持ちはわかる。顔に傷つくってまで勝たなくていい。」


本気で怒ってる。


「すみません。」


先生にまかせてたら、あちこち絆創膏だらけ。


「貼りすぎ・・・」

「ようし!さぁ教室帰るぞ!」


先生はみんなを引き連れて、学校に帰って行った。



部室に戻って着替えを済ませて教室に帰る途中。


「優勝できてよかったね!」


なっちゃんが嬉しそうに言った。


「ホント。さっき喋ってたじゃん。」

「うん。おめでとうって声かけてくれたんだ。」


なっちゃん、ほっぺを赤くしてる。

かわいいんだから!


「よかったね!」


なっちゃん、このままうまくいくといいね!



教室に戻ると、待ってましたとばかりにあたしの回りは人だかり。

今まで絡んだことがない男子まで声をかけてくれる。


「花田かっこよかった!」

「ありがと。」


戸惑ってると、まぁこが


「はいはい!順番にね!」


イベント会場の責任者みたいに仕切り始めた。

話してみて意外に面白い人だったとか、クラスの仲間になれた感じ。

ちょっと新鮮。

ゲラゲラ笑ってると、


“ガラガラっ! ドンっ”


ってすごい音で扉が開いて先生が入ってきた。

一瞬で教室がシーンとした。


「すまない。ちょっと力入れすぎた。席につけー!」


全員席につくと、


「体育祭ご苦労様。花も引退試合よく頑張ったな。この後は学園祭もあるが、受験の息抜きだと思ってほしい。進路の面談も順次やっていくからな。おしまい!」


HRが終って、まぁことファーストフード店で寄り道して、駅でバイバイ。

まぁこはこの後塾なんだって。

あたしは電車に乗っていつもどおりに帰る。


最寄駅の改札出たとこで見覚えある人が立っていたの。



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