第5話
せっかく祐一やママに元気付けてもらったのにちょっと悲しいことがあったんだ。
それはね、HR終わったあと、自販機ジュース買いに行くのに廊下出たんだ。
廊下には、先生とクラスの女子がしゃべってて。
何を話してるかはわからないけど、先生の手がその子の頭に。
やっぱし、みんなにしてるんだ。
“子供扱い”
先生がこっち向いた。
あたし、目が合う前に走って自販機に向かった。
苦しい・・・
苦しい・・・
こんなの嫌。
辛くてしんどい。
こんなんなら“恋”なんてしないほうがいい。
もう、魂が抜けちゃったように授業もなんも手につかない。
そんなある日の休み時間。
少し外の空気吸おう。
廊下にでて窓を開けた。
もう、なんもやる気が起きない。
今朝ね。
キーンコーンカーンコーン・・・
キーンコーンカーンコーン・・
「セーフ!」
ギリギリで教室に入ったの。
「アウト」
先生がいつものように言う。
「・・・」
「なんだ?いつもの突っ込みがないな。テンポ狂うだろ。」
「すみません。」
「今のは冗談だ、今日はセーフ。」
「どうも。」
そう、チャイムと同時だったんだ。
それすら反応できなかった。
先生はいつもどおりにHRして、生徒と仲良く話している。
あたしはフツーになんてできないよ。
まぁこがあたしの無気力メーターに異変が出てることにいち早く気づいた。
HRの後、
「かぉ、一体何があったの?こないだから変だよ。」
「まぁこぉー」
あたし、今までのこと話したんだ。
「なんで今まで黙ってたのよ!」
「いろんなことがありすぎて・・・」
「そっかぁ!かぉがついに恋したのか!応援するよ!」
まぁこが嬉しそうに言った。
「でも、迷惑だったぽいし。」
「返事聞いてないんでしょ?」
「まぁ・・・」
「だったらまだ諦めちゃダメ。」
「うん・・・」
自信ないよ・・・
廊下で外を見ながらボォーっとしてると、
「花。」
出席表のボードで頭を叩かれた。
「授業に身が入ってないぞ。」
「すみません。」
「どうした?」
わかってるくせに・・・
「別に。」
「そっか・・・ならいいけどな。」
あたしの頭ナデナデした。
嫌・・・
「やめてください。」
あたし先生の手を振り払ってた。
「花・・・」
「思わせぶりなことするの・・・やめてください。」
逃げるようにあたしトイレに行った。
もう、あたし頑張れないよ。
そのまま授業をさぼった。
屋上に行って、空を見上げてた。
いい天気。
でも、あたしの胸ん中はドシャブリだよ・・・。
「かぉ?」
祐一がこっちに歩いてきた。
「祐一。何してんの?」
「お前こそ。サボり?」
「うん」
「なんかあった?」
祐一が隣に座った。
「なんでもお見通しなんだね。祐一には。」
「付き合い長いからね。それに、かぉのことずっと見てたからわかるよ、悲しいことがあった、嬉しいことがあった、あいつバカだとか。」
「バカは余計。」
「ははっ。元気だせよ、授業サボるなんてかぉらしくないよ。」
「うん、次はでるよ。」
「おぅ。じゃぁ俺もでよっかな。」
「ありがとね、いつも。」
「お安い御用。」
祐一はニィッと笑って言った。
好きになった人が祐一だったらよかったのに・・・
そんなこと思ったりもした。
きっと楽だったんだろうな。
恋は”楽“してするもんじゃないってママがこないだ言ってた。
“楽しく”するんだって。
その中には、辛かったり、苦しかったりってあるけど、最後には“楽しかった”って思えるんだって。
先生に恋したこと、最後には“楽しかった”って思えるよね?
教室に戻ると、まぁこが泣きそうな顔で駆け寄ってきた。
「かぉ!どうしちゃったのかと思ったよ。大丈夫?」
「ごめん・・・心配かけちゃったんだね。」
「あたしより、朝霧先生のほうが心配して学校中探したみたいよ。」
「うそ・・・」
「ホントだよ。もしかしたらまだ探してるかも。」
「そっか・・・」
みんなに悪いことしちゃった。
「花戻ってるか?」
先生が教室に現れた。
「かぉ戻ってきました!」
まぁこが言うと、
「そか!よかった。」
先生はそれだけ言って、教室を出て行った。
「かぉ・・・」
まぁこが心配そうにあたしを見る。
「もう、大丈夫だよ!ゴメンね。」
「ううん、かぉが大丈夫ならいんだよ。」
「ありがと」
今、体育の時間。
体育館でバリボやってるんだ!
「いくよ〜!」
「かおりいくよ!それ!」
「おっりゃ〜」
バシッ
「さすがかぉ!うちのアタッカーはかぉで決まりだね!」
「打つだけならいくらでもまかせなさい!」
いやぁ!良い汗かいた。
運動最高!
嫌なことも忘れていられる。
教室帰る途中、廊下で亜理紗と先生が話していた。
亜理紗、楽しそう。
まぁこたちと話しながら見てみぬ振りして通過。
気にしない気にしない。
教室に入ると、途端にみんなで先生と亜理紗の話しになった。
「相手が亜理紗じゃねぇ。」
「ホントに付き合ってるのかねぇ!」
「絵になってるもんね。」
そんな会話の中、一人の子が、
「でも、あたしは先生とかおりの漫才が好き。」
「え?あたし?」
「うん。セーフ・アウトのやり取りがすき。」
「あたしもー!いいコンビだよね!」
「うんうん。」
「ど、ども」
いつの間に好評に?
まぁいいか。
ちょっと気分いいかも♪
いよいよ明日は体育祭!
メインは引退試合。
絶対決勝残る!
コンコン・・
「ハイ?」
「入るわよ。」
ママが部屋に洗濯物を持ってきてくれた。
「ありがと!」
「明日、引退試合でしょ?ユニホーム洗っておいたわ。」
「ありがと。」
「あと、グリップテープ買っておいたよ。ラッキーカラーのピンク。」
「ママサンキュー♪」
ママが買ってくるグリップテープは、必ず勝つ!ってジンクスがあるの。
明日勝てる気がしてきた!
「恋も頑張ってくれるといいんだけどね!」
「え?」
「最近、好きな人の話しいてくれないじゃない?」
「あー。いろいろあってね。」
「その方が恋は楽しいのよ。もしかしたらいい方向に進んでるのかもしれないわね。」
ママ、意味不明なこと言って部屋を出て行っちゃった。
「何言ってんの?」
明日、早めに行ってグリップテープを貼ろう。




