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第4話

この練習はね、決勝で亜理紗たちに勝つための練習。

つっても、決勝に残らないとダメなんだけどね(笑


インハイ上位の子のボールって重いの。

亜理紗のボールもすっごい重い。

普段から亜理紗と打ち合ってれば慣れるかもしれないけど、なんせプロのコーチが専属でついてるから一緒に練習なんてしないの。

だから、あたしらは男子に相手になってもらってレベルアップをするのです!

あたしは後衛だからあまりないけど、前衛のなっちゃんなんか男子のボールが顔に当たると真っ赤になるんだよ。

でも、これさえ克服すれば亜理紗たちのボールなんて怖くない!

祐一たちと仲がよくてよかったよ。

しばらく試合形式で打ち合って、休憩に入ったとき、


「拓真先生!」


亜理紗がコートにやってきた先生に近づいていった。


「どうされたんです?」


亜理紗と先生が楽しそうに話すとこなんて見たくない。

わざと気づかない振りした。


「かぉ!乱打やろ。」


祐一がラケット取ってあたしのことをコートに引き戻した。


「うん」


祐一、いつも以上に凄いボール打ってきた。

手首がしびれる。


「重いっ!」

「文句言うな!俺は男だぞ!」

「何わけわかんないこといってんのよ!」


思わず吹き出しちゃう。


「こんくらい取れよ!男だろ!」

「あたしはおんなだぁ!」

「きこえねぇなぁ!行くぞ!」


めっさフラットでサーブを打ってきた。

変化入れてないから、力の分スピードも重さもかかる。


「ぎゃぁぁぁー!」

「避けるな!」


横で相棒達がゲラゲラ笑ってる。


「次は取る!」

「取ってみろ!」


祐一は高くトスを上げる。


パコーンっ!


おもいっきり振り切ったラケットから放たれたサーブがあたしんとこに向かってくる。


取れる!

つか取る!


「んえぃっ!」


見事HIT!


「やったぁ!」

「すげぇ!花田やったじゃん!」

「かおりすごーい!」

「やればできんじゃん!」


祐一が頭をナデた。


「いぇ〜い!タイミングつかんだもんね♪」


ふっとコートの外見ると、もう先生はいなくなっていた。


よかった。

祐一に今度なんかおごってやんなきゃね!



でも、こんときはこんときなんだ。

一人になればたくさん考えちゃう。

お家に帰って、居間で紅茶飲んでくつろいでいるママに、


「ママ・・・」

「なぁに?」

「ママは好きだった先生に告白した?」

「したわよ。」


あっさり言ってくれる。


「迷惑じゃないかとか考えなかった?彼女いるかもしんないし、誰にでも優しいかもしれないのに。」

「もちろん考えたよ。でもママは相手の迷惑より、言わないで後悔するのが嫌だったの。それはどんな恋でも一緒よ。振られたっていいの。“好き”って言うことはすごいことなのよ!」


ママって凄い!

尊敬しちゃうよ。


「そうだね。で、その先生の返事は?」

「ふふふ。」


ママ、笑うだけで言わない。


「何?」

「フられてたら、かおりは今存在しないわね。」


え?


「えぇぇぇぇぇー?パパ?」


ママはにっこり。


「すごーい!」



パパは昔教師だったんだって。

ママと恋に落ちて、それが学校にバレて教師やめたんだって。

そのせいでママの親にもバレて二人は別れることに。

ちょっと悲しいお話よね。

でも、パパはどーしてもママと付き合いたくて、普通のサラリーマンとして再就職してママに再び会いに行ったんだって。

ママの親も、パパの情熱に負けてお許しがでたんだって!


すごい素敵なお話!

そうだよね、先生にとっては迷惑だったかもしれないけど、“好き”ってキモチはうそじゃないもん。

変な形で言うことになったけど、言ってよかったんだよね!

まぁ、先生とはママたちみたいなドラマチックなことにはならないだろうけど・・・。



土日は部活。

無事に準決勝まで進んだよ!

体育祭で亜理紗たちと決着つける!


「お疲れ!」


祐一がタオルを首にひっかけてやってきた。


「オツ!」

「決まったな。」

「うん。準決勝に勝たなきゃ話しになんないけどね。」

「そうだな。今日、一緒に帰らないか?」

「いいよ。」

「今、港に豪華客船がきてんだって!見にいかね?」

「うん、いいよ。」

「じゃ、後で。」


祐一は後片付けにコートに戻っていった。


女子はね、部員数半端ないから、片付けようもんなら、


「先輩!私がやります!」って(笑


マッハで後輩がやってくるの。

3年になると片付けやらなくても?いいんだ。


「かおり行こ!」


なっちゃんが、もうウィンドブレーカー羽織ってる。


「うん!」

「体育祭に残れてよかったよね。」


なっちゃんが感激してる。

なっちゃんは、クラスに好きな子がいるから準決勝に残れて嬉しいんだって。

応援しにクラス総出だからね。

好きな彼が応援に来てくれるとなれば、準々決勝までは必死だったんだ。


「頑張って決勝もいかなきゃね!」

「うん!かおり頑張ろうね!」


もう、うちらはミーティングないから、着替えたらそのまま帰れるんだ!

部室になってるプレハブの外に出ると、祐一がラケットバッグ背負って待っていた。


「あれ?早いね。片付けてなかった?」

「片付けてたよ。お前らの着替えがトロいんだよ。」

「まぁ、失礼ね。ねぇ?かおり。」

「ホント。もっと言い方あんでしょうが!」

「女ってなんでこんなに着替えが遅いんだ?」


祐一が首をかしげる。


「女の子なのよ、身だしなみくらいちゃんとしないと。」


あたしが言うと、


「なっちんはわかるけど、なんでかぉが熱く語るんだよ。」

「なんだって?あたしは女だぁ!」


祐一ったらマジで言ってるからね。


「いやぁ、知らなかった。」

「もう、帰る。なっちゃん行こ。」


プィっ。

祐一と行く方向と反対に方向転換。


「おぃっ!どっち行くんだよ。冗談だって。」

「知らない。」

「ゴメンって・・・」


あたしの手をつかんだの。


ドキドキドキドキ・・・


友達とはいえ、男の子に手つかまれたのなんて生まれて初めて。

顔が熱くなるのがわかる。


「ななななな・・」

「怒んなよ、船見に行こうぜ?」

「何?祐一と港の船見に行くの?」


なっちゃんが目を輝かせた。


「どしたの?」

「豪華客船!ロマンチックよねぇ!行っておいで!祐一ガンバ!あたし先帰るから、じゃぁねぇ〜!」


あたしと祐一おいて先に行っちゃった。


「なっちゃん、一緒に行けばいいのに・・・」

「なっちんにもいろいろ用ってのがあんだろ、俺達も行こ!」

「うん。」


あたしたちは電車に乗って、一つ隣の駅で降りたの。

港の公園があるんだ。

木にイルミネーションが取り付けられてて、夜になるとすんごい綺麗なの!

日が落ちるの早いから、電車降りた頃はもう暗くて木々のイルミネーションがキラキラ。


「キレー!」


あたしがはしゃぐと、


「さっきは悪かったな。女扱いしなくて。」

「何?急に。」

「今、かぉはやっぱし女だってわかった。」

「今って・・・元から女!もぉ〜、クラスの男子といい。そんなに女の子っぽくない?」

「テニスやってるときのかぉはなぁ。性格もさっぱりしてるしな。でも、」

「でも?」

「今、イルミネーション見てはしゃぐかぉは女の子だったよ。」

「ホント?」

「うん。」


少し歩くと、大きな船が現れた。

その船もライトアップされて綺麗!

あたしたちは空いてるベンチに座って船を眺めた。


「こんな素敵な船で旅してみたい。」

「なぁ!俺も。」


しばらく沈黙。


「落ち着いたか?」

「何が?」

「先生のこと。」


もしかして、元気づけるために連れてきてくれた?


「うん。ママにいろいろ聞いてもらったらスッキリした。振られたって、“好き”って言うのはすごいことなんだよ!ってママが。」

「うん、俺もそう思う。」

「言わないで後悔するより、よっぽどいいって。」

「そうか。ママさん良い事言ったな。」

「でしょ。」

「じゃぁ、俺も言うかな。」

「祐一、好きな人いたんだ!水臭いなぁ、教えてよ。」

「俺だって好きな奴くらいいるよ。」

「ごめん。頑張ってね!」

「おぅ、かぉに応援されちゃ頑張らなきゃな。今言うわ。」

「今から?祐一、行動力ありすぎ!」


あたし関心しちゃった。


「うん。」


祐一は何故かあたしの方向いて、


「俺はかぉが好きだよ。」


え?

今・・・あたしの名前言った?

しばらくあたしたち静止画だったはず。


「かぉ?」

「あ?あぁ、えーっと。」

「お、おぅ。」

「あたし?」

「そうだね、かぉだよ。」


うそぉ〜!

そして生まれて初めて告白されたんですけど!


「女子っとしてみてなかったんでしょ?」

「冗談に決まってんだろ!そうでもしないとかぉと絡めないだろ?」


そうだったんだ・・・。


「返事はいいよ。」


祐一、以外に冷静なの。


「え?」

「だって、かぉは先生が好きなんだし。」

「振られるってわかって?」

「うん。かぉのママさんの言葉に感動して。」


祐一が親指立ててニッと笑った。

“好き”って言葉を言う勇気。

ちゃんと勇気をもらったよ!


「祐一の気持ちは嬉しいよ。ありがと。」


これホント。これはあたしの素直な気持ち。

恋の対象にはならなかったけど、あたしにとって心強い友達だもん。

“好き”って言われて嬉しくないわけない!


「かぉも頑張れよ。」


祐一があたしの頭をグシャグシャグシャってした。


「やめてよぉ!先生もやるんだよ。」

「そりゃ、先生もかぉに気があるんじゃないか?俺はそうだよ。」

「先生はみんなにしてるんじゃない?」

「だったら子供扱いしてるかだな。」


そんなのちょっと嫌。

子供扱いなんて。

眉間にしわ寄せて黙り込むあたしに、


「大丈夫だよ。嫌いな奴にはしないよ。」


祐一はまた頭をナデナデ。

そうかな?

嫌われてはいないって思っていいのかな。


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