第1話:約束
初めまして!
七海結莉と申します。
小説家になろうにて始めての異世界ファンタジー作品になります。
この作品は、
「もし、あのとき交わした約束を、もう一度やり直せたら」
そんなことを考えながら書かせていただきました。
子どもの頃に幼馴染と、友達と、家族と結んだ約束は、
時間が経つと忘れてしまったり、叶わなかったりすることも多いと思います。
それでも、その当時の自分の気持ちは本物だったと思います。
この物語は、そんな"小さな約束"から始まる異世界転生の
お話です。
週2、3話の時間は夜の10時から12時を目安に投稿させて頂こうと考えています。
これからよろしくお願いします!
著者:七海結莉
場所は日本。
それは今から何年も前の昔の出来事。
とある夏の日、燦々と照らしていた太陽が沈み始め、
夕焼けが公園をアレンジ色に染めていた。
その場所で彼女と俺の最後の別れの時が訪れようとしていた。
きい、きい、と錆びたブランコの音が小さく響き渡る。
隣には、幼馴染の女の子がいる。
両者のお父さん、お母さんが高校時代の同級生で、かつ、
同じ病院で、ほぼまったく同じ時間に生まれたという
どう考えてもあり得ないんじゃないかと目を疑うような
出来事に運命を感じたのか、こうして今日まで家族ぐるみの付き合いを送ってきた。
ーそう、今日まで、
物心ついた時から、ずっと一緒にいた俺の1番の友達。
「ねぇ、本当に引っ越しちゃうの?」
俺が聞くと、彼女はどこか居た堪れないような表情をしながら少し俯いて、こくんっと頷く。
「うん、お父さんのお仕事でね。
すごく遠いところに行くんだって」
「遠いってどのぐらい?」
「なんか、飛行機に乗って行くところぐらい」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥底にある気持ちが
逆流をするかのように込み上げてくる。
子どもの俺でもわかる。
それはきっと、簡単には会えないということを。
何ヶ月、何年、何十年、もしかしたらもう一生、、、、
そんな考えが頭の中で何十周もぐるぐると周り続ける。
「.....そっか」
これ以上、2人の間には言葉が出てこない。
2人とも黙ったまま、ブランコを漕ぎ続ける。
夕方の公園には他の子どもの気配はなく2人だけ。
きい、きい、というブランコを漕ぐ音と、カラスの鳴き声だけが、夕方の公園に響く。
すると、突然。
彼女が何かを思い出したかのように立ち上がり、
そして俺の前に回り込む。
「ねぇねぇ、」
「なに?」
悲しさのあまり下げていた顔を上げると、
彼女の顔が真っ赤に染まっていた。
それははたして、
ーー夕日のせいなのか
ーーそれとも、、、
そんなことを考えていると、彼女が落ち着かない様子で
話し始める。
「大きくなったらさ」
「うん」
「わたしたち、けっこんしよっか」
一瞬だけ頭の中が真っ白になる。
まさか、突然そんなことを言われるなんて、思ってもみなかった。
「え?」
思わず、少し間を開けた後に声が出てしまう。
すると、彼女は焦ったかのように慌てて、訂正する。
「違うの、いや、違わないけど、その.....」
「大人になったら、またどこかで会えるかもしれない
でしょ?」
「その時まで、私たちを繋ぐ"約束"みたいなもの」
そう言いながら、彼女の顔はどんどん真っ赤に染まっていくのがわかる。
その様子を見ながら少しの間考えて、それから笑った。
「いいよ」
「.....え?」
今度は、彼女が驚いた顔をした。
彼女自身がこの約束を持ちかけてきたはずなのに。
まさか、おっけーが出るとは本人は思っていなかったらしい。
「約束しよう」
俺は右手の小指を差し出す。
「大きくなったらまたどこかで会う」
「そして、結婚する」
彼女は一瞬だけ迷ってからも、そっと微笑む。
彼女の目からは滝のような涙が溢れ出していた。
俺もその姿を見てどこかうるっときてしまう部分があり、
彼女に気づかれない程度のもらい泣きをしてしまった。
「うん!」
そして、小指を絡める。
「絶対だよ!」
「うん、絶対!」
夕焼けの中交わした、あの小さな約束。
子どもの時の約束なんて、大人になってしまえば忘れてしまうかもしれない。
でも、あの時の2人は本気だった。
この広い世界の中で、また、どこかで会えると信じて。
ーーガタンッ、ゴトン、ガタンッ、ゴトン。
電車の揺れで俺はゆっくりと目を開ける。
「また、この夢か」
窓の外には夕焼けの街並みが一面に広がっている。
さっき見ていた夢が今見ている景色とリンクする。
どうやら、まだあの景色が頭の中で鮮明に残っているようだった。
あの公園。
あの約束。
「家の中でよく見ていた夢なのに、まさか電車の中で
あの懐かしい夢を見るとは.....」
最後にあいつと話したのは何年前だっただろうか。
最初は、手紙を2週間に1回の頻度でお互いに送り合っていた。
新しいお友達ができたこと。先生に怒られちゃったこと。
テストで100点を取ったことなど。
そんな他愛のない話が俺は好きだった。
でも、中学生になって。
高校生になって。
その頻度は、2週間に一回から。1ヶ月に1回に。
さらに半年に1回に。
気づけば、もうお互いに手紙を送り合うようなことは
しなくなっていた。
勉強や、部活が忙しいなど。
理由は探せばいくらだって出てくる。
それでも、どうしてもふと彼女のことを思い出してしまう。きっと自分の心の中で彼女への想いがまだ消えていないということを。
「元気にしているかな.....」
電車に写ってるいる自分を見ながら、小さな声で呟く。
夕焼けが街並みを赤く染め上げる。
夢の中で見たあの夕日と似た色だった。
「もし、また会えたらさ」
窓の外を見ながら、息を吐く。
子どもの頃の約束なんて、周りの人には絶対に言えないような黒歴史のようなもの。
今考えれば、考えるほど恥ずかしくなる。
それでもーー
もし、もう一度会えたら。
その時はちゃんと話したい。
この思いを。
君に。
そう、思った瞬間だった。
ガンッ!!!
凄まじい衝撃が車内を揺らす。
「.....え?」
考える暇もなく、俺は車内に浮きながら前の方へ投げ出される。
急ブレーキの音。
何が起きたかを理解するにはあまりにも時間がなかった。世界がぐるぐる回転しているかのように、電車が回る。
ガラスの割れる音。
車内に多くいる乗客の悲鳴。叫び声。
鉄の軋む音。
次の瞬間、強い衝撃が俺と床を叩きつける。
視界がグラグラ揺れる。
音と視力がどんどん遠くなる。
ぼやける意識の中、最後にふと思い浮かんだのはーー
夕焼けの公園。
あの日の約束。
「.....あ、これはもうダメだな」
俺もぼんやりと思う。
(もう1回、会いたかったな)
(そして、結婚したかったな)
意識がゆっくりと、ゆっくりと沈んでいく。
気づけばそこは光のない真っ暗な世界だった。
そして。
俺の人生はそこで終わった。
第1話を最後まで読んでいただき誠にありがとうございます!
この物語は、まだまだこれからが本番です。
長編作品として、書籍化も狙っていこうと考えているつもりなので、これからも応援していただければ幸いです。
みなさんの応援が執筆のモチベとなりますので、
コメントなどお待ちしております。
これからもゆっくり書いていきますので、
よければ暖かく見守っていただけると嬉しいです。
著者:七海結莉




