エピローグ:次なる戦場へ
夕暮れの城門。
スカーレットとマーガレットは、街を去ろうとしていた。
見送りには、新領主ジュリアスが立っていた。
「スカーレット様、マーガレット様。本当にありがとうございました。 お二人は、この街の恩人です」
「礼には及ばないわ。私たちはただ、通りすがりの『掃除屋』よ」
スカーレットは微笑み、背を向けた。
これ以上、表舞台に関わるつもりはない。
「……ねえ、ジュリアス君」
マーガレットが、名残惜しそうにジュリアスの頬をつついた。
「君、将来有望ね。あと5年経ったら迎えに来てあげようか?」
「え、ええっ!?」
真っ赤になるジュリアス。
マーガレットの肉体の中で、男性が大の苦手な「陳美麗」の意識が泡を吹いて卒倒しかけているのが、スカーレットには手にとるようにわかった。そのため、肉体の主導権は完全にマーガレットが握ったままで、暴走は止まらない。
「こら、やめなさい」
スカーレットがマーガレットの首根っこを掴んで引きずる。
「あーん、お姉様ぁ! せっかくの青田買いがぁ!」
「行くわよ。……『悪意の真実』はまだ消えていない」
そう。
ヴァレリウスを操り、進化した「悪意」。
そして、ヴァレリウスを洗脳していた「謎の人物」。
敵の正体は、より深く、強大になっている。
「次はどこへ行くの?」
マーガレットが、懲りずにスカーレットの腕に抱きつきながら尋ねる。
あの「第三の魂」は、今は静かに眠っているようだ。
スカーレットは、劉の羅針盤が示す方角——東の空を見上げた。
「東よ。……劉が『懐かしい匂いがする』と言っている」
『ああ。風の匂いが変わった。次は……厄介な術者がいそうだぞ』
紅の龍と、規格外の狼。
二人の転生者の旅は、まだ終わらない。
世界の歪みを正すまで、その歩みは止まらないのだ。
(第2部 完)




