Scene 5:学習する武神
すみません。今回は少し短いです。
バルカスの剣が空を切る。
必殺のタイミング、必殺の角度。だが、スカーレットはまるで散歩でもするように、半歩の動きでそれを無効化し続けている。
「くっ、そ、そんな馬鹿な……! 私の計算では、今の斬撃は……!」
「回避率ゼロ、か?」
スカーレットは剣を軽く弾き、バルカスの体勢を崩させながら、懐かしそうに目を細めた。
「懐かしいな。前世で私が初めて『コンピュータ』というものに触れた時……その演算処理の考え方に触れた時は、感動すら覚えたものだ」
カキンッ!
バルカスの追撃を裏拳で打ち落とす。
「『0』と『1』の集合体が生み出す論理。美しいと思ったよ。
だが同時に気づいた。これを完全に使いこなすには、出力先である『人間』を知らねばならないとな」
「なに……?」
「お前が自慢げに語った現代運動力学も、情報工学も、俺にとっては全て武術を磨くための『餌』に過ぎん。
……まさか、私がその程度も履修していないとでも思ったか?」
スカーレットの蹴りが、バルカスの腹部に突き刺さる。
ドガァッ!
バルカスは数メートル吹き飛び、無様に床を転がった。
知識量でも、経験値でも、学習意欲でも。
全てにおいて「上」を行かれていたという絶望。
「はぁ……はぁ……ッ!」
バルカスは血を吐きながら立ち上がる。
プライドはずたずただ。だが、彼にはまだ「禁断の領域」が残されている。




