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ep.8

「知らないな。

俺が知る限り、いないと思う」

『そっか…』

「いたらどうする?」

『どうもしないよ。

私にはどうこうする資格ないもん』

「………」


彗くんはそれ以上何も言わなかった。


何も言えなかったのだろう。


『………私、帰るね』


もうこれ以上蒼ちゃんの話をしたくなかった。


彼には会わないって決めたんだ。


このまま話していると決心が揺らぐ。


会いたくなってしまう。


「家まで送るよ」

『え…

でもお店…』

「俺以外にもいるから平気。これでもオーナーなんでね」

『でもいいよ、悪いし』

「俺が美愛を一人で帰すと思う?」

『………』

「諦めな」

『…ありがと』

「車のキーとってくる」


相手が私じゃなかったらイチコロで落ちそうな彗くんの言葉。


本人はまるで自覚ないからやっかい。


誰に対しても底なしの優しさを垂れ流す彼は天然の人たらしだ。


私は本日二回目のため息をついた。


「お待たせ。

行こう」

『うん』


彗くんはすぐに戻ってきた。


車のキーを手中でもて遊びながら。


私達は肩を並べ、店を出る。


『彗くんってさぁ…』

「ん?」

『頑固だよね』

「は?」


店を出て駐車場までの道中、私は唐突に言った。


彗くんが間抜けな顔でこっちを見る。


彼のこんな表情を目にするのは久しぶり。


『私にお金絶対払わしてくれないし、今だって家まで送るって聞かないじゃん』

「そりゃ、相手が美愛だからね。

他の子相手ならしないよ」

『幼馴染の特権?』

「……感謝しな」

『彼女さんに怒られそう』

「…いないよ」

『え?』

「彼女」

『そうなんだ?

じゃあ刺されなくて済む』

「あのなぁ…」


彗くんは呆れた様に言った。


ずっと昔、まだ彼が大学生だった頃。


当時彗くんの彼女だった人に私達の関係を疑わられて、刺されそうになったことがある。


幸い、私は護身術を身につけていたので大事には至らなかった。


かすり傷程度で済んだ。


それ以来だろうか。


彼はあまり女性を連れ歩かなくなった気がする。


天然人たらしが女性と一線を引くようになった。


『……あれからずっといない?』

「ん?」

『彼女』

「いや、そういうわけじゃないけど。

今はいい」

『そっか…』

「美愛は?」

『私?』

「蒼以外は考えられない?」

『………。

私は…』


私は立ち止まって俯いた。


彗くんは酷い。


執拗に蒼ちゃんの話をしてくる。


忘れたいのにこれじゃ忘れてられない。


「ごめん。今言うべきじゃなかったね」

『………彗くんの意地悪。ばか』

「ごめんて」


彗くんは困った様に笑った。


私はその笑顔を見上げる。


ズルいなぁ。


そんな風言われたら許しちゃうじゃない。


「家どこ?」

『世田谷。ナビ入れるね』

「サンキュ」


駐車場に辿り着き、彗くんの車に乗った。


スバルのレヴォーグ。


広々とした車内は居心地いい。


私はナビに慣れた手つきで自分の住所を入力する。


この時間なら道も空いてるから二十分くらいで着くだろう。


ちょっとしたドライブだ。


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