ホームルーム爆破
前に投稿したエピソードに、一部抜け落ちていた内容があったので足しました。すみませんでした。
「大丈夫?」
「...はっ!あっありがとうございます!」
レナは、大丈夫?という声で我を取り戻した。見上げると、前に迷子になっていたレナを助けてくれた女の子だった。
「あっあの、えっと...」
オドオドしているレナを見て、その女の子は言った。
「いいよ、一旦席に座ろうか。」
「あっありがとうございます...」
レナは、相変わらずオドオドしながらも席に座った。
「えっと、お名前......、すみません、覚えてなくて...」
「大丈夫、大丈夫。一回聞いただけじゃ覚えられないよね。私も数学の問題、何回も解き方聞いてんのに理解できないしさ」
そう言うと、その女の子は二カッと笑った。
「私の名前は、上村沙也加。沙也加でいいよ」
「わっ私は白木レナ...です。よろしくお願いします...」
相変わらずオドオドとしながら、レナはそう言った。
「レナって言うんだ。いい名前じゃん」
「あっありがとうございます...嬉しいです...」
そう答えながら、レナは改めて沙也加のことを見た。スラリとした長身で、スタイルも良い。ボーイッシュな感じで、爽やかを絵に描いたような人だ。レナとは正反対といったところである。
(うわぁ、かっこいいな...)
「ほらほら、早く席に座れー。ホームルーム始めるぞー」
レナが沙也加に見とれてると、いつの間にか教室に戻ってきていた先生がそう言った。
「あっ、やば。また後でね!」
そう言うと、沙也加は自分の席へと走っていった。
◆
「......それで今日も校庭の復旧作業があるので、外部活はありません。作業は先週も言った通り今週いっぱいの予定です。次に今日の時間割の補足ですが…」
ホームルーム。日直の人が今日の予定と要項を説明している。
(校庭の復旧作業...。うぅ、申し訳ない...)
校庭の復旧作業の話を聞き、レナは改めて申し訳ない気持ちになった。
「...今日の予定はこれで以上です。次に、先生。なにかお知らせ等があったらお願いします。」
「はーい。では僕からは一つだけ。転校生に関してです。」
先生はそう言いながら、教卓に立った。
「見ての通り、今日から転校生が来ています。白木レナさんです。まぁ、無理ない程度でいいので色々とこの学校のことを案内したり、説明したりしてあげてください。」
そう言うと、先生は教壇から降り、「これで終わりです」と締めた。
「ねぇねぇ、君どこから来たの?」
「魔法科取ってるよね!?」
「得意な魔法とかあんの?」
ホームルームが終わった瞬間、レナはクラスメイトたちに質問攻めにされた。
「えっえっと、魔法科は取っていて...えっと、得意な魔法は...」
レナが戸惑いながらもたどたどしく答えていると、
「なんだよ、その髪の色。透かしてんのか?だっせーな。」
「目立ちたいんじゃねえの?自己顕示欲強すぎて引くわー」
どこからか悪口が聞こえてきた。みんなが一斉に声のした方向を向くと、そこには意地の悪そうな顔をした男子生徒二人が居た。見るからに不良といった感じの見た目で、周りからも距離を置かれている。
「ちょっと、あんた達。何言ってんのよ!」
「そうだぜ。初対面の人に言うことじゃないし、そもそも言って良いことじゃない」
周りから非難が飛んだが、二人は相変わらずニヤニヤしており、反省の色は全く見れない。
「あっあの...その......」
レナが戸惑ってオドオドしていると、
「お前、気に入んねえな。何だ?そんな態度して。舐めてんのか?」
不良二人組のうちの一人が、そう言ってレナに掴みかかってきた。
「ちょっ、お前!それは流石に一線を越えてるぞ!」
そう言って男子生徒の一人が不良の腕を掴んだ。
「あぁ?おめえもうざってえな。死ね!」
ドーンッ!
音がしたと思えば、その男子生徒はふっとばされて床に倒れていた。もう一人の不良が魔法の杖を構えている。
「キャー!」
周りからは悲鳴が上がり、教室は一気にパニックになった。
「おい、お前もなんか言えよ。このクソ陰キャ」
そう言うと、不良はレナの頭に杖を突きつけた。
「やめっ、やめてください...!」
「あぁ?はっきり言えよ!腹立つな!」
不良はレナに突きつけている杖をレナの頭に押し付けた。
(助けて、助けて!怖いよ...)
レナは怯えて声も出なかった。
(もう我慢なんねえ!死ね!)
そう言うと、不良は杖の先に魔力をため始めた。
「きゃっ」
レナから小さな悲鳴が漏れた瞬間――
ズドーン!
さっきよりも更に大きな爆音がし、あたりは砂埃によって何も見えなくなった。
「きゃっ、何が起きたの!?」
「大丈夫か!?」
砂埃が晴れてくると、そこには倒れて気を失っている不良二人がいた。
「何が起きた!?」
みんなが不思議に思い、レナを見た。レナは、両手を前に突き出した形で固まってしまっていた。
「これ...、もしかして白木さんがやったの?」
驚いた様子の沙也加がレナにそう尋ねた。
「あっあっそのっ...ごめんなさい!」
レナは慌ててそういった。
(やっ、やっちゃった...!どうしよう...、怒られる...!)
レナは自分のやってしまったことに焦りの気持ちを抱いた。しかし、
「すげーじゃん!」
「あの二人、すっごい不良でさ。何回も問題起こしてるんだけど、偉いとこの息子だかなんだかで先生達もあんまり怒れてなかったんだって」
「あいつら、いつも魔法の威力を自慢してたからな。もう二度とそんなこと言えねえぜ」
周りから聞こえてきた声は、レナを称賛する声だった。
「あっあの...教室をこんなふうにしちゃったのに、良いんですか...?」
レナは恐る恐るそう聞いた。だが、
「なんで?あの二人を怒ることはあっても白木さんを怒るわけ無いじゃん」
「むしろ、あの二人を懲らしめてくれて感謝したいくらいだよ」
みんなはそんなことは全く気にもとめていない様子だった。
(みんなが喜んでくれたなら...良かったのかな?)
レナはもう、何も考えないことにした。




