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高校に行こう!

「ここが、陽光学院か⋯。」


 レナは、校門の前に立って。そう言った。


 私立陽光学院は、高校では珍しく、魔法科に特化した学校である。東京の新宿に本校舎を構え、全国に6つの分校がある。レナが学校見学にきたのは新宿にある本校舎である。


 ピンポーン


「ご要件は何でしょうか」


 インターホンから、女の人が尋ねてきた。


「あの…、私、編入生で⋯。学校見学にきたんですけれど⋯。」


「かしこまりました。では、校舎に入って右のすぐにある、職員室に行ってください。」


 そう言うと、女の人は通話を切った。


「職員室⋯、よし、行こう。」


 レナは校庭を横切り、校舎に向かって歩き出した。






 ◆






「なんで…。なんでこうなるの!?」


 校舎に入って約二十分後。レナは迷子になっていた。


「おかしい、受付の人は入ってすぐって言ったのに。ぜんぜん、たどり着かない!」


 ここまで言って、レナは思い出した。自分がもはや天才と呼べるほどの方向音痴だったことを。


(外出しなさすぎて、忘れてた⋯。私、社会不適合者だった⋯。)


 そうレナは絶望した。しかし、そんな事を言っていても仕方がない。学校見学の時間は、午後二時から三時の一時間。時間はすでに、午後二時二十分。大幅なタイムロスである。


(どうしよう、このままじゃ迷惑かかっちゃう。早く、職員室に行かなくちゃ⋯。でも、どうやって⋯。)


 レナがどうしようと困っていると、


「どうしたの?君、この学校の生徒じゃないね。編入生?」


 そう声をかけてくる人が居た。レナが慌てて振り返ると、そこにはショートの髪型をした、ボーイッシュな女の子が立っていた。


「は、はい…。職員室に行きたくて⋯。行き方を教えてもらえませんか?」


 レナがそう聞くと、その女の子はいきなり笑い出した。


「ちょっ、ちょっとなんで笑ってるんですか!」


 レナは少しムッとした。


「いや⋯、だって⋯、ここ、第二校舎だよ。職員室は、昇降口の眼の前にあるのに⋯。どうやってここまで迷い込むのさ。」


 そう言われて、レナは顔を真赤にした。まさか、そんな入ってすぐの場所にあったなんて。どうしたらそれに気づかないのだろう。レナは泣き出したい気持ちになった。


「まあ、いいさ。面白かったし。私はあなたのこと気に入ったよ。」


 そう言って、その女の子はニカッと笑ってみせた。


「ついてきなよ、案内してあげる。」


 女の子はレナの手を取って歩き出した。






 ◆






「せんせー、編入生の女の子、連れてきたよー」


 そう言いながら、その女の子は職員室のドアを開けた。


「ああ、良かった。見つかったんだね。上村もありがとな。」


 そう言うと、先生と呼ばれた男の人はやっていた書類作業から顔を上げた。


「じゃあ、上村はもう部活に戻っていいよ。来週から大会だろ。できるだけ練習しておいたほうが良いぞ。」


「ありがと、せんせー。じゃあ、部活戻るね。」


 そう言うと、女の子⋯、上村は職員室から出ていった。彼女が出てくのを見届けたあと、先生はレナの方へと顔を向けた。


「えっと、まずは自己紹介からするね。僕の名前は佐野恵太。よろしくね。」


 佐野先生はレナに笑いかけた。眼鏡の似合う好青年だ。


「よ、よろしくお願いします⋯。」


「おっけー、じゃあサクサク行こうか。まず最初に学校内を周っちゃおうか。その後、試験とか書類とか色々やろう。」


 佐野先生は、椅子から立ち上がると、そう言った。






 ◆






「ふう、こんなもんかな。」


「いろんな施設があって、面白かったです。」


 学校内を一通り見て回ったレナたちは、再び職員室に帰ってきた。


「どうだった?この学校の魔法設備、すごいでしょ。」


「はい。特に魔法の試射場。すごい設備でした。高校に魔法の試射場があることさえ珍しいのに、あれだけの規模と設備なんて⋯。」


 魔法は、とても強力なものである。その威力は、レナのようなレベルのものが行えば、家くらい簡単に吹き飛んでしまう。それに耐えうる試射場など、一般の高校にはとてもないものである。


「そうでしょ。うちの学校の目玉の一つだからね。国際魔法連盟の基準でも最高水準の硬度だし。普通の人が全力で魔法を打っても、傷一つつかないすぐれものだよ。」


 レナの反応を見て、佐野先生は少し嬉しそうに答えた。


「僕は魔法科の担当だからね。たぶん、君の授業も受け持つと思うよ。」


 そう言うと、佐野先生は机の引き出しから数枚の書類を取り出した。


「これらが入学に必要な書類ね。それと、編入試験はオンラインでやって合格だったから良し⋯。あ、そうだ。簡単な魔力測定だけさせて。うちは魔法科に力を入れている魔法学校だから一応そういうのも把握しといたほうが良いからね。」


 そう言って、先生は魔力測定機を取り出した。水晶玉のような見た目で、下にはメーターがついている。


「まず最初にコレに触れて。で、水晶の色が変わったら今度は全力で魔力を流して。」


 先生は、魔力測定機をレナに渡した。


「こ、こうですか?」


 レナが水晶に触れると、水晶の色が白から青に変わった。


「おっけー、無事に測定できてるね。じゃあ、次に魔力を流してみて。」


(魔力か⋯、あまり強く流しすぎないようにしないと⋯。)


 そう思い、レナは少し弱めに魔力を流した。


「よし、測定できたね。んで、結果は⋯、ん?」


 レナの測定結果を見た先生は、結果が間違っているのではないかと疑った。なぜならば、魔力量も出力も魔力測定機のメーターを振り切っていたからであり。


「ちょっ、ちょっともう一回やってもらえるかな⋯?」


 そう言って、レナに魔力測定機を渡す。しかし、もう一度やっても結果は変わらない。


(マジか…。確か魔力量の出力の平均って500とかだったよな⋯。なのに2000あるメーターを余裕で振り切っている⋯。それに一番おかしいのは魔力量だ。トゥエルブ・セインツでさえ20000とかなのに、


 この子は40000あるメーターを振り切っている⋯。)


「すみません⋯、うまく測れませんでしたか?」


 固まってしまった先生を見て、レナは心配そうに尋ねた。


「いや、大丈夫だよ。じゃあ、この書類に色々記入して郵便で送って。最初の登校日は、後でメールで教えるから。」


「わかりました。ありがとうございます。」


(この数値は少し下げておこう⋯。これが公になったら大騒ぎになるぞ⋯。)


 そう思い、先生はレナの測定結果を少なくして記入した。



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