どうも、引きこもりです
「高校に通う!?」
レナは、思わず叫んでしまった。
「いや⋯、なんで驚いているんだい?君、17歳だろう。世間一般ではその年齢の人達を高校生と言うんだよ。」
レナの反応に、ロバート会長は、呆れた感じでそう言った。
「いや、そんな事は知っています!そんなことより、会長。会長は私が高校に行けると思うんですか!?」
レナは、絵に書いたような社会不適合者である。生活能力はもちろんのこと、コミュニケーション能力やなども軒並み欠如している。もちろん、友達など一人も居ない。
「いや、思わないね。」
「⋯。」
レナは、ロバート会長の答えに、思わず黙り込んでしまった。
(いくらそう思っていても、こんなどストレートに、しかも本人に言うのはどうなんだろう⋯。)
「まあ、とりあえず君には高校に入学してほしくてね。後で入学する高校の候補をリストにして送るけど⋯、なんか希望の高校とかある?」
「いや、待ってください。私は絶対に高校になんか行きませんよ!というか、なんで高校に行くなんて話になってるんですか!?」
勝手に話を進めようとする会長を静止して、レナは言った。
「あれ?理由、言ってなかったっけ?」
「言っていませんよ!」
(まったく、この人はいつもこうなんだ⋯。話していると疲れる⋯。)
レナは、ため息をつきたい気持ちで、そう思った。
「その理由なんだけどね。この間、魔法連盟の特別訓練性に関する規則が変わってね。未成年の訓練生は学校に通わなければいけないという、規則ができたんだ。」
特別訓練生とは、魔法の才能がある子どもたちを国際魔法連盟が、直接訓練する制度である。レナも、五年前まではそうだった。
「ちょっと待ってください。私はトゥエルブ・セインツだから、もう訓練生ではありませんよ。」
レナは、それはおかしいと思ってそう言った。そもそも、トゥエルブ・セインツに関する規則なんてなかった気がする。
「いや、君まだ特別訓練生のままだよ。」
「それは、おかしいです。トゥエルブ・セインツは他の役職と兼任できないから、特別訓練性は辞めるって、ロバート会長が言っていたじゃないですか。」
そもそも、トゥエルブ・セインツは一応幹部扱いだが、正式には国際魔法連盟の所属ではない。トゥエルブ・セインツという組織が別にあって、それと国際魔法連盟が連携しているという形である。
「いやー、そう思ってたんだけどね。なんか書類にサインをするのを忘れてしまってさ。辞表の書類が、無効になってたんだよね。」
「⋯。」
レナは、めまいがしてきた。
(何なのだろう、この人は。いや、そんな大事な書類をこんな人に任せてしまった私が悪かったのだろうか?)
黙り込んでしまったレナに、ロバート会長が心配そうに話しかけてきた。
「大丈夫かい?気分が悪いのならば、休んでいたほうが⋯、」
「大丈夫です。それより、それ。どうにかならないのですか?」
「それがね、もう無理そうなんだよね。なんか、事務方の人たちが今少なくてさ。あんまり、話聞いてくれないんだよ。」
(どうやら、私の平穏な引きこもりライフは終りを迎えかけているらしい⋯。)
レナは、ロバート会長とこのまま話し続けるのと、高校に行くのを天秤にかけた。しばらく釣り合っていたが、やがて、ロバート会長と話し続ける方に傾いた。
(もう、諦めよう。ロバート会長に物事を頼むほうが間違っている。これなら、高校に行くほうがまだマシだ。)
「わかりました。高校に行きます。なので、候補の高校のリスト、早く送ってください。)
「おお、高校に行ってくれるのかい。じゃあ、すぐ送るよ。またね!」
そう、言うがいなや、ロバート会長は電話を切ってしまった。
(はぁ、高校でうまくやれるかな⋯。)
レナは、これから訪れることを思うと、不安になってきた。
◆
「うぅ、やっぱり無理だぁ⋯。。」
ロバート会長からもらったリストをみて、レナはうめき声を上げた。どの高校の学校紹介を見ても、自分が行ける気がしてこない。
(どの学校紹介を見ても、キラキラしてる⋯。こんなの陰キャの引きこもりには辛すぎるよ⋯。)
どの学校紹介も、見れば見るほどレナの気持ちを落ち込ませる。もういっそのこと高校行ってすぐ不登校になろうかなと、ろくでもないことを考えてしまう。
「もぉ、無理!」
そう言って、ベットに横になる。すると、投げ出されたスマホから、一つの学校の紹介がちらりと見えた。
「私立陽光学院?魔法科に特化しており、魔法学会にも強い⋯。国際魔法連盟提携校?」
(そう言えば、ロバート会長がそんなことをやるようなことを言っていた気がする⋯。)
「魔法に特化してるのか⋯。これなら、いけるかも。」
レナは、そう言って学校見学ができないか検索し始めた。