テスタ・テスラ
アウロラの名前を、アスタ・テスラに変えました。
世界最高の十二人の魔法使い。トゥエルブ・セインツが一人、アスタ・テスラ、通称星の魔法使いは、魔王軍からアメリカを救った英雄である。その英雄譚は世界中に知られており、そのものの名前を知らないものはこの世界には居ないほどである。
しかし、そのの素顔は公表されておらず、性別、年齢、国籍なども不明である。世間では、口にひげを携えた、賢者のような男、妖艶な絶世の美女などと噂されているが、誰も真実を知らない。英雄はどのような姿なのか。世界中の人々がそれを知ろうとしたが、いまだ、それを知るものは居ない。
◆
プルルルル…プルルルル⋯プルルルル⋯
「うん…、何だ…?。」
ある平日の昼、白木レナは一本の電話で目が覚めた。時刻は、すでに午後1時25分。部屋には朝日ではなく、真昼の太陽の光が、射し込んでいる。
(せっかく人が気持ちよく寝ているのに⋯、誰からだろう?)
平日の昼間に寝ている人間が言えたことではないのだが⋯、そんなことを思いながら、レナは電話を取った。
「もしもし、白木レナです。」
「ヤッホー、レナくーん。元気してる?」
ブツッ、ツー、ツー、ツー⋯
電話越しに聞こえてきた声に、レナは思わず電話を切ってしまった。
(寝起きに一番聞きたくない声を聞いてしまった⋯。早く二度寝して、忘れよう⋯。)
そう思って、レナが再度布団をかぶろうとすると、
プルルルル…プルルルル⋯プルルルル⋯
また、電話がかかってきた。着信の欄を見ると、同じ人物である。レナは無視を決め込んで、寝ることにした。
ピコンッ
すると、諦めたのか、今度はメールで送られてきた。一応内容ぐらい確認しておくかと思い、メールを開くと、
「早く、電話に出なさい。起きているのはわかっています。もし、一分以内に、そっちから電話をかけなかったら、今月の給料出しませんからね」
その内容に、レナは慌てて電話をかける。すると、相手は直ぐに電話に出た。
「ロバート会長、今月の給料カットは本当にやめてください!今月、ゲームに課金しすぎて、カツカツなんです!お給料もらえなかったら、私、餓死しちゃいます!」
レナが、慌ててそうと、
「よかったよー、君が電話に出てくれて。本当は僕もそんなことしたくないからね」
ロバート会長と呼ばれた人物は、そう答えた。
ロバート・ウィリアム会長は、国際魔法連盟の会長である。国際魔法連盟とは、世界中の魔法使いを管理する組織であり、魔法免許の発行、ランク分け、魔王軍への対策など、魔法に関する様々なことに関わっている。そんな、国際魔法連盟を束ねる会長に、わずか四十歳で就任したロバート会長は、偉人と言っても差し支えないほどの人物である。まあ、少しあれな人なのだが⋯
「いやー、まあ気持ちはわかるからね。僕も、この間ソシャゲに課金しすぎて、妻に小遣いなしにされたからね。いやー、参っちゃうよね。」
「ちなみに、どのくらい課金したんですか?」
「そうだな、一週間で2000万ぐらいかな?ぜんぜん、狙っているキャラ全然がでなくてね。ついつい、回お金を使いすぎてしまったよ。」
「⋯。」
その言葉に、レナは頭を抱える。どうすれば、そこまでお金を使えるのだろう。レナとロバート会長の付き合いは長いが、その浪費癖が治ることはない。
「会長、少しはその浪費癖を直してください。いい加減にしないと、奥さんに離婚されてしまいますよ。というか、魔法連盟の会長がそれって、どうなんですか?」
レナがそう言うと、会長は笑って言った。
「それはお互い様だろう?君もトゥエルブ・セインツの一人、テスタ・テスラなのに、引きこもっているじゃないか。」
そう、レナの正体は、トゥエルブ・セインツが一人。星の魔法使い、テスタ・テスラ。世界最高の十二人の魔法使いの一人である。レナが、トゥエルブ・セインツになったのは、今から五年前。レナが、十二歳の時。もともと、ロバート会長にその才能を見出され、国際魔法連盟のもとで特別な訓練を受けていたのだが、魔王軍の襲撃によって戦場に駆り出された。そこであまりの量の魔王軍にビビり、思わず全力で大規模殲滅魔法を打ってしまったのが行けなかった。あれやあれやと英雄に担ぎ出され、気がついたらトゥエルブ・セインツの一人にされていた。
しかし、レナはそんなことは全く望んでいない。むしろ、目立つのが大の苦手なレナは、こうやって引きこもっているくらいである。
「あの時の恨みは忘れてませんよ⋯、会長。アメリカに無理やり連れて行った上に、突然戦場に放り込んだんですから⋯。もし、私にもう少し勇気があれば、国際魔法連盟の本部を魔法で爆破していましたね。」
「君が、引きこもりで良かったよ⋯。」
「なんか癪に障りますが、良いでしょう。」
レナはそう答えた。
「ところで、肝心の用事なんだけどね、」
そう言うと、ロバート会長は、少し間を開けた。
「なんですか?その用事って?できれば、あまりめんどくさくないのが良いのですが。」
(いま、フォー◯ナイトでイベント中なんだよな…。あんまり時間が掛かるのは嫌だな⋯。)
レナが、そう考えていると。
「いやぁ、大したことじゃないんだけどね。君にはちょっと、高校に通ってもらいたいんだよ。」
「!?」
ロバート会長が、爆弾発言を放り込んできた。
どうでしたでしょうか。もしも、気に入ってもらえたのならば幸いです。次のエピソードもぜひ、読んでください。