緩井さん
どうも、HALです。
このたびは、この物語を読んでくださり、本当にありがとうございます。
どうか、この物語を読む時間が、少しでも楽しいものになれば嬉しいです。
それでは......
「うぅ、ついに今日が来てしまった......」
とある土曜日の朝。レナはベッドの上でそう呻いた。この週末は三連休。この三連休で、レナは群馬の草津にあると言われている魔王軍の基地、アジトにいる魔王軍を全員逮捕するという任務を受けている。
プルルルルル
レナが行きたくないとベッドの上で駄々をこねていると、枕元に置いておいたスマホに電話がかかってきた。誰からかかってきたのだろうと電話を取ると、
「レナ様、今日の任務の確認をさせていただきたいのですが、今よろしいでしょうか?」
几帳面そうな女の人の声が、耳に入ってきた。
「うぅ、わかりました......お願いします、緩井さん......」
緩井さんは、国際魔法連盟日本支部の職員の人である。主にレナの任務のサポートに着くことが多いが、本人もAランクの優秀な魔法使いである。ちなみに、名前はゆるそうだが、実際はとても厳しく、レナからはとても恐れられている。
「では、今日の予定を説明させてもらいます。まず、成田空港でアダラートさんと合流します。アダラートさんの来日は大きなニュースになっていますが、テスタ・テスラが日本にいるという情報はトップシークレットです。なので、レナ様には先に車の方で待機していただき、そこにアダラート様が乗るという形での合流となり......」
「ちょ、ちょっと待ってください。まさか、アダラートさんと同じ車に乗らないといけないのですか!?」
レナは緩井さんの言葉を遮り、そう訊いた。
「はい。残念ながら」
「それって、変えることは......」
「もちろんできません。決定事項です」
「終わった......」
レナはベッドの上で崩れ落ちた。レナがそこまで言うのには理由がある。アダラートは人が運転する車に乗るのが嫌いなので、車に乗る時は必ず自分で運転する。しかし、その運転が致命的なまでに荒っぽいのだ。急カーブでも減速しない。当たり前のように法定速度をオーバーする。急ブレーキ上等。そんなんなので、彼の運転する車に乗った者は、揃って二度と乗りたくないと言うのだ。レナも例に漏れず、一度ドイツの研修でかれの車に乗って恐怖を味わっている・
(わたしの命、草津まで持つかな......)
レナは無事に草津にたどり着けるように願った。
「それでは次に行きます。草津に着いたら直行で魔王軍基地まで行きます。場所は草津の温泉街の近くにある山の中腹です。後ほど建物構造図、周辺の地図などをデータとして送るのでご確認ください。その日中に終われば良いのですが、万が一魔王軍が立てこもった場合、その時は長期戦が予想されるので、アダラート様とレナ様には交代で魔王軍と交戦してもらいます。魔王軍の身柄は群馬県警に委任する予定ですので、護送の必要はございません」
ここまでを緩井さんは一気に言った。
「ご質問がございましたら、後ほど私の形態に掛け直してください。それでは、遅刻しませんよう、成田空港でお愛しましょう」
そう言うと、緩井さんは電話を切った。
「うぅ、行くかー......」
レナはそう言うと、着替えるためにクローゼットを開けた。
緩井さん......この名字、実際にあるのかな?




