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第3話 開拓村ラッカへ

獣道を歩き続けて一時間ほど。

目的地に到着すると、ルディは一人で森の中へ駆けだしていった。


周囲にアグリオスがいないか調べにいったのだろう。


「そろそろ武器でも出しておくか」


俺はズボンのポケットに手を入れ、スマホ型の神具を取り出す。

これはバッカス様が創って


天界の倉庫に入っている武器や兵器、神々が適当に放り込んだ品々を、スマホの画面に表示され、選択したものを取り出せる優れモノである。


その他にも天界の神々と連絡を取ることできるし、誰かに盗まれたとしても、瞬時に俺の手元に戻ってくる防犯機能付き。


気軽に指でスクロールして、愛用しているショットガンと弾薬をタップする。


空中に現れたショットガンを手に取り、散弾とスラッグ弾を腰のポーチに入れた。


このポーチは冒険者ギルドで販売されて市販品だが、マジックバックの機能が付与されている。

容量もそれほど入らないし、時間停止の機能もないが、小物を入れるにはこれで十分だ。


ショットガンに弾を込めていると、隣でベルフィが腕を前に伸ばしてステッキを向ける。


「森から魔獣の気配を感じる。そろそろ来るよ」


「お肉! お肉!」


アレッサは嬉々として、右手に持つ神具の巨大メイスを振り回して身構えた。


体にフィットした鎧。

背中に負っている神具の大戦斧。

そして左手には神具のバックラー。


アレッサの武器は、バッカス様が暇つぶしに作った武具である。

天界の倉庫にあったので、俺が彼女に貸し与えたのだ。


この重装備で軽やかに魔獣と交戦する彼女は、肉体強化に特化した戦士である。

その剣技は並の冒険者など足元にも及ばない。


森の奥からバキバキと樹々が折れる音が聞こえ、それが徐々にこちらに近づいてくる。


ガサガサと目の前の茂みから音が聞こえ、ルディが体ごと飛び出してきて、俊敏に体を横へ飛ばした。


「ベルフィ、任せた」


『アイスランス』


ベルフィの周囲に無数の氷の鋭利な槍が出現し、ルディが現れた場所へと飛翔する。

すると茂みから襲撃してきたアグリオスの片目にヒットし、その巨体が前脚が急に崩れ、地面に倒れた。


その後ろから三体のアグリオスが駆けだしてくる。

するとアレッサが獰猛な笑みを浮かべ、一体に突進していった。


「私と遊ぼうよ! 叩き潰してあげるから!」


アグリオスの角をバックラーで強引に受け止め、力勝負に持ち込んだ彼女は巨大メイスを振り上げる。


「いい体当たりだわ! でも力不足ね!」


アレッサのたった一度の攻撃により、頭部を割られたアグリオスは地面に埋もれるように動かなくなった。


残る二体のアグリオスが俺とベルフィに急接近してくる。


「グゥグァァアアアー!」


一体のアグリオスが突然に雄叫びをあげ、ガクッと体を揺らし速度を落した。


その脇腹に、一本の短剣が刺さっている。

ルディが猛毒を塗った短剣を放ってくれたようだ。


一気に迫ってきたアグリオスを、ベルフィがアイスランスで簡単に討伐し、横に移動しながら俺に微笑みかける。


「後はよろしく」


「了解、サッサと済ませるさ」


毒を貰ったアグリオスに銃口を向け、フォアエンドをスライドさせ、引き金を引く。

すると次の瞬間、ドンと大きな音が鳴り、腕に衝撃が伝わってきた。


「グゥグァァアアアー! グゥグァァアアアー!」


見事にアグリオスの顔面にヒットしたが、やはり頭部は固く、散弾では倒すことができない。

そのことは想定内、素早く二発目を射撃。


バン!


今度はスラッグ弾で、頭部が盛大に爆ぜた。

しかし、アグリオスの勢いは急に止まらず、俺に向かって倒れ込んできた。


慌てて横に転がって身を躱し、地面に片手を着く。


「危なかったね。もう少しで下敷きだったよ」


「ギリギリで、俺に獲物を譲るなよ」


「ノアだけ楽をしようとするのはダメだよね」


ベルディの魔法の実力なら、簡単に二体を倒せるはずなのに。

わざとやったな。


思わぬタイミングで悪戯を仕掛けてくるから質が悪い。


地面から立ち上がり、片手で体の埃を払って、ポケットからスマホを取り出す。

そしてスマホの画面を絶命しているアグリオスへ向けた。


次の瞬間、魔獣の姿は消える。


このスマホを通じて、どんな物体でも天界の倉庫に保管することができるのだ。


もちろん天界には時間の概念はないから、腐ったり、劣化することもない。

収納されたものは、スマホの表示リストに追加され、いつでも取り出し可能。


残りの三体のアグリオスを回収し終えると、アレッサとルディが集まってきた。


「たくさん、肉が穫れたわね! でも、まだ運動し足りないわ! どんどん狩っていくわよ!」


「そうだね。まだ森の奥にアグリオスの気配があったから、すぐに連れてくるね」


ニッコリと楽しそうに笑んで身を翻し、ルディは両手を広げて森の中へ消えていく。


二人は猪のように感じているみたいだが、アグリオスは大森林の魔獣の中でも中級クラスの強さだ。


カナンの冒険者の多くは、パーティ全体で一体を倒すのに苦労するんだぞ。


女子達の元気の良さに呆れていると、ベルディが穏やかに微笑む。


「ラッカに着くのは夕方でもいいし、ルデイ達が満足するまで暴れてもらおうよ」


「ああ、そうだな」


それから俺達は、アグリオスを十八体も討伐し、大森林を反時計回りに、ラッカへ向かった。

行く途中で、トレント五体と遭遇し、その後にヘルハウンドの群れと交戦した。


トレントは樹木に擬態した植物系の魔物で、その屍は魔力を帯びた高級木材となる。


ヘルハウンドは『ニューミナス大森林』のどこにでも生息している犬系の魔獣だ。

群れで行動することが多く、獲物を定めると執拗に追いかけてくる。


どちらの魔獣もアグリオスより弱く、俺達『不死の翼』の敵ではない。


森の中に突如現れる、高さ十五メートルを超える石造りの外壁、ようやくラッカの大門を潜る頃には、太陽は森へ沈みかけていた。


村の大通りを歩いて、冒険者ギルドの建物の中へ入る。


魔獣を討伐する度にカナンまで戻るのは効率が悪い。

そこで三年前に仮設された開拓村がラッカである。


広間に入ると、周囲から一瞬だけ強烈な殺気の視線を浴びせられた。

俺達四人だとわかると気配は消えたが、いつもイヤな気分になる。


ここに集まっている連中の多くは、屈強な魔獣を求めてラッカに長期滞在している者達だ。


命懸けで一攫千金を夢見て、幻の古代遺跡を狙う奴もいる。


それだけに自分の腕に自信があり、プライドも高く性格の癖も強い。

冒険者の実力を試すためとはいえ、この歓迎は止めてもらいたい。


受付カウンターに向かって歩いていると、目の前に筋肉隆々の大剣使いが現れ、ニヤリと頬を歪ませる。


「カナンに行ってたんだってな。その間に俺達が『不死の翼』の狩る分を奪ってやったぜ」


……クタクタに疲れて、やっと戻って来たのに、厄介な連中と鉢合わせしたな。


関わると面倒だから、ここは無視しよう。

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