第4話『土人族を求めて旅に出た』
なろう系小説を読むのが好きな、平凡な30代の独身男性が、嫌われ者の同僚に会社内で刺殺され、何故か若い頃の姿で異世界転生する、良くある話です。
転生するなら、大好きだったスライム転生物の異世界転生させて欲しかったと嘆きつつも、チート過ぎるスキルを駆使して、自由に楽しく生きていく、最終目標は世界を渡る力を会得する事、行きたかったなろう系世界を見に行く事である。
主人公は丸っこくてポヨンとしたスライムを目指して生きていくのですが、所々残念なオタク知識を申して、周りにドン引きされる所がある、平凡で可哀想なオタク…チートスキルを会得したただの人間である。
ピクシードラゴンと友達になり、名付けスキルを生み出した。更に妖精鬼ゴブリン達とも協力関係を取り付くことまで出来た。後は町を作るだけだ。
その為には技術者が必要、その為にマルは旅に出た。
3日掛かると言われた森の果てを1日で走破し、砂漠地帯も2日ちょっとで通り過ぎる事が出来た。
森に暮らす魔獣や砂漠地帯の魔獣は、何故だか襲いかかって来ず、安心安全で少し退屈な旅だったのだが、途中開けた円形の苔むした岩場地帯に立ち寄った際に巨大な牛の体躯に捻れた角を3本持つ魔獣がマルの姿を見て、恐れ慄き逃げていく様は何か申し訳ない気がした。
円形の岩場地帯には、鑑定で運良く見つけた雑草みたいな見た目の万能薬に必須なマジラク草と上級回復薬に使えるイヤハーブ草、パテン草を取りすぎない程度に採集と言うより吸収しまくった。
ただの雑草かと思ったら、スキルポイントも爆上がりで美味し過ぎる雑草、いや薬草か…。
あの魔獣は案外草食なのかも知れないな、昔遊んだファンタジー系ゲームのベヒモスみたいな見た目で、カッコいいからいつか捕まえたいかも…?。
砂漠地帯に入った2日間は本当に魔獣に会えなかったが、何と言う事でしょうか、砂漠地帯には埋もれた洞窟が沢山あり、その洞窟には大量の宝石や魔石の数々、埋もれてたと言う事は全部頂いても問題無しって事で、全部採掘と言う名の吸収してみた。鑑定しまくったからか鑑定スキルがレベル上がって、細かい効果まで分かる様に…。
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ルビーストーン
真紅の宝石の原石、磨くと燃える様な赤を輝かせる。
宝飾品
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サファイアストーン
蒼炎の輝きを放つ宝石の原石、磨くと海の深さと燃える火を感じられる青に耀く。
宝飾品
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フォレストストーン
深き森の輝きを放つ宝石の原石、磨くと深い緑色は吸い込まれそうなほどに鈍く耀く、好事家に人気
宝飾品
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サンダーアイ
縞模様の虎柄の宝石の原石、削り方と職人の腕次第で魔獣避けの効果が生まれる、雷竜の目玉を模した宝飾品は国同士が争うほどの国宝になる。
宝飾品
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水晶硝子
加熱する事で透明度が増す、加熱により粘度が増し冷え固まると硬化する加工しやすい鉱石。
調度品などに使われる。武器や防具には向かない。
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魔水晶
水晶硝子に魔粒子が結合され、硬化後に属性付与などが行えるレベルにまで硬度が上がる。武器や防具に加工可能。
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魔鋼鉄鋼
魔粒子が含まれた硬い硬度を持つ鉱石、不純物がまだ多い状態であり、加熱する事で、魔公鋼インゴットとなり、魔力を内部に含み、武器や防具には魔法付与を行えるようになる。
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魔物骨石
大型の魔物が地面に沈み、長い年月を経て石となった物、微量な魔力を含み、丈夫な素材になる。刀と呼ばれる武器の鞘や皿や器に加工される事が多い、石と言うより木材に似た鉱石で、木材よりも劣化しにくいが加工によっては割れやすくなる。
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鉱石類や宝石は絶対いつか役に立つ、鉄っぽい鉱石は特にゲーマー脳としては序盤に欲しい素材No.1だから集めまくってしまった。
そうこうしている内に目的の場所らしきへと来てしまった。
岩山によって窪んだ地形の更に奥底に鎮座する巨大な円盤型の平べったい大岩がドワーフの住む大洞窟の天井に当たるとの話だった。何千年かけて、この形ができたのだろうか…、テーブルの様な岩肌の上面は砂塵によって綺麗に削られ、マーブル模様が美しい自然美を感じる。
ここに目的の土人族が、ドワーフに会えるのか…。
彼らは他種族との交流はするが、土人族の市民しか話を聞いて貰えないだろうと言う話だったから
コッソリ潜入するとしよう。
妖精鬼の長老の話では、土人族は地下に住まう種族であり、地下に入る入り口を探す必要があるとの話だったが、レベルアップした鑑定スキルなら、入り口の場所も即座に発見出来た。
早速、眠りこけた兵士を発見、これは簡単に潜入できそうだ…。
『インビジブル発動』
土人族の兵士が居眠りをしている横を通り過ぎて小さな洞窟の入り口らしき場所を通り抜けると、天井は高く鍾乳洞の様なつららが吊り下がっている。まさしく巨大な遺跡が地下奥深くに広がっていた。
どこから進もうか悩んでいた所に、ふと視界に土人族らしき石像がポツンと椅子に座らされている小さな小屋が気になったので近づいてみた。
『凄い、ドワーフの石像か〜、触っても良いよね』
土人族の石像の太ももに乗った瞬間、グググッと言う振動を感じ何事かと上を見上げると、石像の目と見つめ合う、その瞬間、マルは叫び声をあげて飛び上がった拍子に石像の顔面に衝突する。
『病気スキル』発動します。
頭の中で無機質な声がした事すらマルには届いていなかったのだが…。
マルの悲鳴は洞窟内に響き渡ってしまった。
『うぎゃああぁっ』
居眠りしていた土人族の兵士が近付いてくる、インビジブルの効果が切れて、マルは見つかってしまう。
『このスライムめ、侵入者だな!』
マルは薄れゆく意識の中でも、石像の開いた目から視線を外す事なく、気絶してしまった。
マルの意識が覚めた時には、マルは絶体絶命の死を迎えかけていた、煮えたぎるマグマの上でユラユラと揺らめく鳥籠の中にいるマルは寝ぼけ眼で周りを確認する。
円形の広場の中央にはマグマ溜まりと鳥籠が設置されて、そのマグマ溜まりを囲む様に、スタジアム席の様に机と椅子が並べられ、役人らしき土人族が席に座って紙に書き物をしたり、走り回っている。その中でも上段の突き出た大きな台座に玉座が置かれている場所があり、そこに偉そうなドワーフが座って、こちらを睨みつけていた。
偉そうなドワーフは先程みた石像を若くした様な姿で似ているなぁと思っていると、分厚い本を持つ小さな眼鏡をかけた土人族が話しかけてくる。
『侵入者であるスライムよ、この地に何をしに来た。王の殺害を目的としたエルフ族の密偵か?』
偉そうな土人族がつまらなさげな顔で、さっさと殺してしまえと呟く
鳥籠がガチャガチャと音を立てながらマグマに近づき始める。
『待て』
偉そうな土人族が怪訝な顔をして声がした方へ顔を向ける、その瞬間、顔が青ざめていく。
『ドラディガ様…いや、まさか…ど』
『ドラムスよ、そのスライムと話をさせてくれぬか』
『父上、今や私が国王なのです。私の命令を覆す権利など…ひぃっ』
偉そうな土人族の国王ドラムスは未だ衰えぬ先帝ドラディガの視線に言葉を飲み込む。
弱り切って後100年以内には死ぬはずの先帝の眼差しは若かりし頃の畏怖を纏いながら王の威圧感を感じさせる程だった。
ドラムスは苦々しい顔をすることしか出来ず、先帝ドラディガの行動に文句を言えなくなってしまった。
『スライムよ、お主は、私に何をされたのか?知りたいのじゃ』
頭の中で無機質な声が響く、『病気スキル』にて、竜命毒を無効化に成功しました!。
何勝手な事をってか、このドワーフは、まさか…あの石像、石像じゃなくて、生きてるドワーフだったのか!
マルは口話スキルで言葉を発する。
『自分、スキル、勝手した、毒排除、治せた。ごめんなさい』
何故か、人見知り発動して、片言スライムになってしまう
先帝ドラディガは、マルを鳥籠から出す様に土人族兵士に命じる、現国王ドラムスは、顔を真っ赤にして喚き散らす。
『父上、いや先帝ドラディガよ、何を勝手な事をするのだ、しているのです。』
『ドラムスよ、お前が私にした事を許そう、私はこの地より去る。それで良いな』
マルはいまいち会話についていけない、親子喧嘩の内容など他人にはよくわからない物だからかと思いながら、鳥籠がマグマ溜まりから離され、無事に地に足をつけれる事になった、スライムに足は無いけど
先帝ドラディガの言葉は全てを知っている、知った上で私が毒を盛ったことを知った上で自らの死を待ち望んで、あの様な門の近くの小屋にて長き時を過ごしていたのか、毒殺しようとしたのがバレていたなんて、もし国民にバラされたら俺は終わる。そんな事は起きてはならない、いや、まさか、先帝ドラディガのフリをした魔獣の可能性も…いやそうだそうに違いない、毒殺の件をどこから知り得たかは知らぬが、ここで殺さねば俺の王政は終わってしまう…くくっ、そんな事は許されぬ!
ドラムスは、喚きながら土人族兵士に命令を宣う。
『誇り高き父の名を語る魔獣だな、兵士達よ、この魔獣とスライムを殺してしまえ、土竜騎士長アティマン』
誰1人、斧やハンマーを抜く事なく、片膝を床に付け、平伏の態度を示す。
先帝ドラディガこそ、土人族の王であるとこの場にいるドラムス以外が認めてしまったのである。
先帝ドラディガは、ドラムスに言葉を告げる。
『我はこの地を去る、身体がとても軽い、若かりし頃の様に旅をしたいと思っておる。
今更王の座など戻りたいとも思っておらぬ、安心せいドラムス』
土竜騎士長アティマンと呼ばれた土人族が地に顔を伏せながら発言する。
『恐れ多いながら、発言をお許し下さい。我らドラディガ様の元でお支えしたく』
『支えることは許さぬ』
マルは今だ!とタイミング悪い時に言葉を発してしまう。
『自分の名前、マル、森、妖精鬼、ピクシードラゴン、町作ってる。土人族、仲間、したい。』
マルに向けられる土人族兵士達の視線はとても厳しい目で、土竜騎士団の幹部がマルに対して否定的な言葉を投げかけるも、先帝ドラディガの視線に口を紡いでしまった。
『このスライムは陛下に何を申し…くっ』
威圧感を纏って土人族兵士の言葉を遮った先帝ドラディガの目がマルに向けられる際には、新たな希望を与えられた子供の様に輝いている。
『スライムのマル、いや…命の大恩人に、私は支えたいと思う。この老骨老いぼれを仲間にして下さらぬか、マル殿』
マルは心の底からガッツポーズをして喜んでいた、土人族の、先代国王になる人なら、良い技術者とか知り合いにいるかも知れない、それに、ここから脱出も楽に出来そうだと一安心していた。
『勿論、よろしく、お願い、します。』
『町作る、技術者、足りない、妖精鬼、ピクシードラゴン、スライム、家、着る物、衣食住、知りたい』
先帝ドラディガは、ニヤリと笑みを浮かべて、任せておけとコッソリとマルに耳打ちをしてきた、おじいさんの顔がドアップってちょっとなぁと思ったけど、技術者も仲間に出来そうで良かった。後…スライムの耳ってどの辺りなのかな?
こうして、先帝ドラディガを仲間にしたマルは、石像が置かれていた、まぁドラディガだった訳だけど、の近くの小屋に戻って来ていた。
おさげ髪を整えたふくよかな恰幅の良いドワーフ居酒屋の女主人っぽい見た目のドワーフと、これまた鍛冶屋の頑固一徹な左眼に眼帯をつけボサボサな後ろ髪をポニーテールにしたドワーフが先帝ドラディガの姿を見つけ膝をつく。
『アバロン、ベルグ、わざわざ小屋から出て来てくれるのは良いのだが、私はもう王ではない膝をつくのは止めよ』
おさげ髪の女主人風土人族は、あっけらかんとついた膝を立てて、膝についた砂埃を払う、眼帯つけた土人族は、怒った様に怒鳴り散らかす。
『ふぅ、良いのかい、いやぁ、あたしゃ堅苦しいのは嫌でさ、ベルグあんたも立ちなよ』
『アバロン、お前は、いつもいつも!先帝様への敬意を払えと言っているのに!!!』
マルは片言スライムモードで挨拶をする。
『名前、マル、初めまして』
女主人風の土人族、アバロンは無礼な態度を一変して、マルに向き合う、その目は先程の態度からは信じられない程に真っ直ぐで、静かな緊張感が走る。
『先帝ドラディガ様をお救い下さり、ありがとうございます。あたしの名前はアバロン、王室付き薬師長として思う所はあるんだけどね…。ベルグあんたもほら』
『言われなくたって、分かっている。元ではあるが土竜騎士団隊長ベルグだ。このアバロンにせっつかれ鍛治職をやっている。生きる希望を失っていた先帝様をお救い下さり感謝いたします。』
『マル殿、この2人は我が忠臣であった、信頼しても良い配下である。良い技術者でもあるし、連れて行きたいのだが、どうであろうか?』
薬学に精通するドワーフさんと、鍛治が出来る戦士ドワーフなんて、そうそう見つからないと思ったから、答えは
『良いよ、町、一緒に、作る。歓迎』
マルは、土人族の3人と共に町を作るための森に向かって歩みを進めるのであった。
恐ろしい事態に巻き込まれる事も知らずに…。
希ノ無です。
中々書きたい事を上手く表現出来なくて、悶々としつつ、結末まで書き終えられるように頑張りたいなと思ってます!