16 実験結果
10分がたった。
「シルフィー嬢、ランディーたちを探しに行くがよい。」
「はい。」
シルフィーが扉に向けて歩き出した・・・俺にはそう見えている。
しかし
「そんな!? 一瞬で姿が消えた?」
ライアンが驚きの表情で固まっている。
王様も絶句している。
コウナッチャウヨネ
ゲームをプレイする際には「移動時間」という概念がない。
だから、アイコンを押したら、その場所にすぐ移動できる。
まさに瞬間移動だ。
しかし、現実世界では瞬間移動はできない。移動スピードも人間に可能な範囲に限られる。
でも、「ヒロインが必要な場所に現れない」も進行的にありえない。
となると
「歩いて移動しているが、周りからは瞬間移動しているように認識される。」
ということが起きることになる。
そうしないと、「現実的には移動時間がかかるが、ゲーム的には瞬時に移動しなければならない」という矛盾を成立させることができない。
これは、仕掛けを知らなければ、まるで魔法の様に見えるだろう。
しかし、この世界に魔法はない。
皆が混乱するのは当たり前だ。
(そろそろ戻ってくる頃かな?)
そう思っていると、静かにドアが開き、3人が部屋に戻ってきた。
ランディーとエミリアは青い顔をしている。
「父上、どういうことですか・・・」
「何がだ?」
「私たちは、厨房の収納部屋に隠れていたのですが・・・
2時ちょうどに見つかってしまいました。
彼女は2時になったら探し始めるはずだったのではないですか?」
ランディーの隣でエミリアも頷いている。
「その通りだ。シルフィー嬢は2時になってから探しに行ったぞ。
ライアン、見ておったな。」
「・・・確かに、その通りです。」
「バカな・・・。瞬時に、しかも迷いもせず移動したとでもいうのか?
そんなことがある訳が・・・」
「では、もう一回試してみればよい。
今度はランディーとライアンが隠れるのだ。エミリア嬢はこちらの様子をしっかり見ておくのだ。
時間は先程の倍、20分与えよう。
さて、隠れるがよい。」
そして、20分後、先ほどと同じことが起こり・・・その後部屋に再び集まったときには、皆の顔は土気色になっていた。
【完結】兄妹そろって断罪中のヒロインの中に入ってしまったのだが
【完結】ざまあ、してみたかった
【完結】ざまあ、してみたかったな2
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