思わぬ再会
今話については一人称がエメルダに戻ります。話の構成的に視点がコロコロ変わってしまうので、その都度お伝えいたします。よろしくお願いいたします。
ここは【コミティア】にある病室の前にある待合椅子。
私めはそこに座り暫しの物思いに耽っておりました。
「…………」
全ての始まりは、流星の街【コミティア】に金貨百万枚相当の借金が課せられていたことが発覚し、その返済の当てとしてこの私めにとある使命が命じられたことでした。
(その使命とはズバリ、<四大精霊>との契約を結ぶこと。私めはそれに倣い、<水の大精霊>ディーネ・<土の大精霊>ノムゥ・<風の大精霊>ルフと”主従契約関係”を築きました。そして最後の一人――<火の大精霊>フーリとも契りを交わせば私めがすべきことは完遂。……しかし、今回ばかりは今までと同じ様にはいかないでしょう。何せ――)
そんな風に不安を募らせていると、目の前の扉がゆっくり開きます。
そこから出て来たのは私めよりも深くて濃い緑色の髪をした少女――<風の大精霊>ルフ。
彼女はバツが悪そうに顔を俯かせ、面目無さそうに謝罪します。
「……ゴメン、エメエメ。あーしとフルルの”癒しの力”じゃ<大魔女>様を救えそうにないや……」
「――――」
やはり、と心の中で落胆しつつも、全力を尽くしてくれたルフに感謝の言葉を告げます。
「謝らないで、ルフ。<地神>イア様の話では【神都】から腕の立つ<聖母>様という方が派遣されているそうですからまだ諦めちゃダメだよ!」
「それでもあーしが治してあげれた方が都合が良かったよね? 何分、エメエメの次の相手はあのフーリだ。どう考えたってエメエメ一人の力だけでどうにか出来る可能性は無いよ……」
だからこそせめて、今や意識不明の重体に瀕している<大魔女>アメルダ先生を呼び起こせれば最低限現状は最悪にならなかっただろうとぼやくルフ。
そういう事情があったからこそ、ルフは自分の至らなさを悔いていたと言えた。
「そればっかりに参っちゃうな……。フーリが今巻き起こしてる問題はもう世間的に看過できない段階にまで到達しちゃってる。つまりフーリは滅ぼすべき敵認定を受けてても何らおかしくない」
「!? それは困るよ! もし仮にフーリが誰かに滅せられたら私めは役目を果たせませんし、それ以上にフーリが可哀想だよ! フーリにはそうせざるを得ない理由や事象があるんだよね!?」
どうやらフーリは邪悪な力を生まれながらに宿しており、そのせいで身を蝕まれているのだとか。
それはまるで呪い。フーリとは反対に持たざる者である私めですが、運命から嫌われているという点で彼女の苦しみに何となく共感をしていました。
「だからこそ、フーリは絶対に助けてあげないと! この私めの手で!」
「……そりゃそうして欲しいのは山々だし、エメエメにしかフーリのことを任せられないけど、だからといって頑張ってと無責任に送り出す程、あーしは鬼畜じゃない。きっとディーネやノムゥもあーしと同様に気乗りはしないと思う」
「――それはわかってるけど……」
決してフーリが言わんとする事が理解出来ない訳ではありません。逆に嫌というくらい痛感しているからこそ、どうしようもない現実に打ちひしがられていたと評した方が正しいでしょうか?
(フーリをどうにかする為には彼女を打ち負かすだけの絶対的な力が必要になる。だからこそ私めはどうしていいかわからないのです……)
ですがいつまでもクヨクヨ悩んでいる余裕も暇もありません。
このまま私めが何も出来ず手をこまねいてしまえば、いずれフーリは世界に仇名す癌としてこの世から排除される。
(しかし、ならどうすれば!? 唯一の頼みの綱であるアメルダ先生の力は借りられない……ッ! なら……ならもう……)
どうやら最後の最後で私めは失敗を冒してしまったようです。
やはり<無魔力の忌み子>である私めが何か大きなことをしようと意気込んだこと自体間違っていたのです。
それに加え、その無謀な挑戦の最中、大切な先生をも傷付けてしまった。
(それに元はと言えば、【コミティア】の借金――もっと元を辿れば【コミティア】の隕石落下の原因は私めに他なりません。さらに考えれば<四大精霊>を生んだのも私めが”マナ”を乱したからです)
「あれ? じゃあフーリが苦しむ原因を作ったのももしかして……? あは……あははははッ!」
私めは思わず高笑いを上げていた。まるで壊れ果てた狂人のように。
「そうか……そうかッ! 全部……全部……ッ! 私めの存在が悪いんだッ! やっぱり私めは世界を不幸にしかしない哀れな<悪魔の子>! そんな私めに生きてる価値なんてない! いっそのことこの世から消えてしまえば――」
自暴自棄になり一線を超える一言を発したその時、
「こ~ら! 物騒なこと言うモンじゃないわ、エメルダちゃん。希望を捨てるのはまだ早いってば」
こつんと頭を鉄のようなもので叩かれます。
思わずそちらの方を向くと、
「!? あ、貴女様は!?」
そこには立派な獅子の被り物をする一人の女性――世界最強と名高い<陽光の剣士>サンディ様の姿があったのでした。




