<大魔女>と???
今話は<大魔女>に関する伏線的な意図を込めております。
そういったこともあり、内容は意味不明に捉われてしまうかもしれませんが、その点ご了承くださいませ。よろしくお願いいたします。
――その少女――目と髪の色が綺麗なアメジストをしている何とも可憐な少女――の目の前には悲惨な光景が拡がっていた。
『――――』
その少女はすぐ側で横たわるもう一人の女性――黒という一見単調な色の髪と瞳ながらどこか闇深さを感じさせ、また左目を縦断する大きな傷跡が目立つ何とも幸が薄そうな女性――に対して声を張り上げる。
『――――』
幸いにも女性にはまだ息があった。しかしそれは正しく風前の灯に他ならなかった。
少女とて馬鹿ではない。その女性の助かる可能性はほぼゼロに等しいことくらい理解している。それでも少女は諦め切れなかった。何か手段は無いかと模索するが……
『――――』
「もう十分だ」と言わんばかりに女性が少女の頭を撫でる。
『…………』
女性からされたその行為は少女にとって苦手なモノであった。何かある度に女性からナデナデされるものだから、いつもなら「子ども扱いするな」と手を払い除けるのが常であったが、この時ばかりは甘んじて受け入れることを選んだ。
少女は理解せざるを得なかった。女性からこうされるのはこれで最期であるということを。
『…………』
いつもならむず痒く、そしてこそばゆい愛情表現に嫌気が差している頃合であろう。だが、この時ばかりは少女は涙を流していた。
『――――』
女性は少女のその反応を見て同情したり共感した――訳ではなく、軽快に笑ってみせた。それも少女を嘲笑する意味合いでだ。
『――――』
こんな時に何呑気にゲラゲラ笑っているんだ? 少女は呆気に取られるというよりも、女性の能天気さに怒りを覚えてしまった。
これは何とも変な話である。恐らく今現在に於いて世界中の誰よりも絶望の淵に立たされているであろう女性は、恐らく今現在に於いて世界中の誰よりも楽しそうに笑っていたのだから。
『――――』
だがそれは空元気に他ならず、徐々に女性からは生気が失われていく。
『――――』
もう時間はない。それを指し示すかのように女性は腰に据えた一本の”黒い杖”を少女に手渡すと共に、それに加え二つの願いを少女に託した。
『――――』
一つ目は女性の<二つ名>を引き継ぐこと。
『――――』
二つ目はその時点の少女にとってあまり意味が汲み取れぬモノであったが、女性の頼みとあらばと快諾をした。
遺言をしっかりと言い残せた女性はまたもや満足気に笑い、少女にこんな言葉を投げ掛ける。
『――頼んだよ、我が最愛の弟子よ。どうか我が叶えられなかった夢……この世に蔓延る負の運命の因果を必ずや断ち切って』
そんな言葉を託した女性はその後ゆっくり……ゆっくりと目を閉じ、そして息も無くなった。それ以降、彼女は二度と目を醒ますことは無かった。
『……ッ!』
まるで安らかな眠りに肩を預けるかのような女性の顔を見て、少女は血がにじむくらいに奥歯を噛み締める。
こんな結果になってしまったのは全て自分のせい。
そんな後悔と、それを回避させられなかった自身の無力さに苛まれた少女は未だに震える身体を奮い立たせ、必死に立ち上がる。
『――判ったでの、師匠! お主によって生かされたこの命……これを以て必ずやその意思を成就させてみせるのじゃ……ッ!』
そう確固たる決意を固めた少女は頬をつたる涙を拭い堂々たる一歩を踏み出す。
その一歩は少女にとって新たな人生の始まり――女性から託された<大魔女>として歩む偉大な原点であることを意味していたのであった。
●
(…………)
妾のなんともぼやけた脳裏に浮かび上がったその光景はこの妾にとって決して忘れられぬ出来事であった。
(久し振りにあの者の顔を拝んだでの……。懐かしい……というよりも正直見たくはなかったかもしれぬ……)
あの時から少しは立派になり、多少なりともあの者の期待に応えられると思っておったが、どうやらそれはおこがましかったようじゃ。
(妾はいつまで経ってもダメついダメじゃな……。他人よりもちょっと特別で大きい”魔力”を持っているというだけで驕り高ぶり、結果的に返り討ち……。何ともだらしないのぉ……)
自分自身のことを顧みればみる程、自分に嫌気が差してきた。
やはり妾にはこの名……<大魔女>の二つ名は荷が重かった。そう思った矢先じゃった。
『――――』
突如、妾の視界の中にその師匠の姿が浮かび上がったのじゃ。
「!、お主は――むぐぅッ!?」
そんないきなり現れた師匠の登場に驚くのも束の間、なんと彼女は突然妾の首を絞め始めたのじゃ。
急なことに冷静さが保てず、四苦八苦している内にどんどん空気が薄れていくのがわかった。それでもなお、反抗するように口を開く。
「お主……いや、貴様は誰じゃ!」
『そう苦しそうな顔をしないで。我はただ<大魔女>を解放させてあげたいだけなんだからさ。さぁ、お目覚め――』
師匠に化けた謎の人物は師匠の声と口調で喋り、ニタリと笑う。
「……ッ!」
その後、首を絞めつけられたままの妾は抵抗虚しく、そのまま意識を失うのじゃった。




