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当話は完全新キャラ主観のものとなります。
その点ご理解の程、よろしくお願いいたします。
――ここは、かつて流星の街と呼ばれていた【コミティア】。
約二年前、十年に一度降り注ぐとされる流星群が街に襲来し、そのまま【コミティア】を更地にしたのは今じゃ有名な話である。
「…………」
周囲を見渡すと未だ復興はままならずといった所。だが、少しずつその様相は元に戻り始めているといった感じであまり荒廃しているようには見受けられなかった。
もしこのまま順調に復興が進めば、十年と経たずに元の姿を取り戻すかもしれない。
「…………」
ともかく、一度更地になった場所とは思えないくらい活気に満ち溢れた街中を歩いていると、ふと目の前から何かが飛んできて、私の顔面を覆った。
何事かと思いつつ、それを手に取るとどうやらそれは新聞であった。きっと風に巻き込まれたのだろう。
「…………」
普通にそのまま捨てていいのだが、とある理由で世界情勢に疎い私からしてみれば、これは丁度良い情報源と成り得る。試しに一読してみようか。
「…………」
偶々飛来した新聞の文章に目を通してみるとそこには、ここ最近起きているであろう出来事の続報が記されていた。
要約するとこんな感じだろうか?
・【コミティア】から一・二時間移動した場所にある有名観光リゾート地【シールス】海域の異常気象は未だ収まる気配を見せない。またその要因解明も進んではおらず、自然的・人為的両方の観点から調査を続ける見込みである。
異常気象。詳しく言うならば台風に似た突風と竜巻が不定期で吹き荒れているらしい。その現象は有名観光リゾート地である【シールス】からしてみれば堪ったもんじゃない。
前触れもなく天候の機嫌が悪くなり潮の流れが不安定になれば、優雅に海水浴なんてしている余裕なんて無い。
新聞の別ページを捲ると、【シールス】の観光収入がその一連の出来事のせいで激減したとの報があった。そりゃそうだろう。
……そんなこんなで原因不明の事態に見舞われる【シールス】。なんとも不憫な話ではあるが、今の【シールス】にはもう一つ重大な問題に直面している。
・また、【シールス】の観光名所の一つである<海神>ポセイン像が手に持っていた”神具”トライデンタル”の消息も判明していない。
レプリカとはいえ<神具>”トライデンタル”は【シールス】の秘宝そのもの。
地元民からは、その消失が<海神>ポセインの怒りを買ったから海が荒れるようになったのでは?、と半ばオカルトじみた見解を寄せられているが、<神具>”トライデンタル”の紛失と海の異常気象のタイミングが合わさりあっていることから、その関係性についても要調査が求められている。
神様の大切な何かを奪った報いとして【シールス】に厄災と言う名の祟りがもたらされた。これだけ聞くとあまりにも現実味が無く、何とも気味が悪い。
しかし、そう考えてしまうのも無理はない。<海神>に”神具”。まるで神話のような御伽話に聞こえるが、その二つの存在は本当にあった実話である。それも、闇が世界を覆った暗黒期よりもずっとずっと前の出来事だとされている。
「…………」
もしかするとこれから【シールス】には、神をも巻き込む大騒動が起ころうとしているのかもしれない。
でも事態はそれだけで済まないと思うのは気のせいだろうか……?
そう考えた時、私は笑みを浮かべる。
「ふふ、なぁ~んてね。それをこの私が言うのはルール違反だわ。これから先、とっても面白いことが待ってるけど、それを体験するのは私じゃない」
……さて、そろそろ寄り道はこの辺でいいだろう。
時間は有限。そうと決まればそろそろ本命の所に向かうとしましょうか。
私は読み終わった新聞を丁寧に折り畳み、ゴミ箱に放り込んだ。その後、私は【コミティア】から少し離れた森林地帯に足を踏み入れるのだった。
●
森の中、初見じゃ絶対に迷うであろう道をずんずんと進むこと約二十分。無事に目的地に到着した。
「…………」
そこには、良い意味で無骨で温かみのある手作り感満載の一軒家が建っていた。
果たして今中に彼女が居るのだろうか? ……いや、居るに決まってる。その気配ははっきりとわかるのだから。
「…………」
私は一切の躊躇いもなく、家の玄関の扉を堂々と開いた。するとその先には、
「スゥ~……」
とても可愛らしい寝息を立てる一人の少女が心地良い寝顔で寝ていた。
その顔がなんとも可愛らしく思わず微笑ましくなったが、今はそんなことをしている暇はない。
私は彼女の肩を揺らしつつ、こう声を掛けた。
「さぁ、起きて、<無魔力の忌み子>。とうとう貴女の物語が始まるよ」
その声に呼応するように少女はゆっくりと目を見開いた。そして、彼女の清々しいまでに澄んだ翠色の瞳がこの私を捉えたのだった。
「あなたは……?」
眠気眼のどうにもはっきりとしない視線を向ける少女に私はこう応えた。
「私は『 』。こうしてまともに名乗ることすら出来ない<ヴォイド・ノーバディー>。つまり<空虚で何者でも無い存在>よ?」




