金貨百万枚の借金の真相
「まず初めに、借金と言ってもそれは<無魔力の忌み子>ちゃん個人に対してじゃないわ~。どちらかというと、【コミティア】がとある団体からお金を借り入れたことによって発生した街全体の負債と言った方が正しいかしら~?」
「とある団体……ですか……?」
確かに言われてみれば、街を再建するに当たり金銭の問題は切っても切れない要素です。
お金が無ければ街の再構築は愚か、街民の衣食住すらままなりませんから。
しかし、例えそうだったとしても……
「後で返して貰うとは言え、金貨百万枚分なんて大金をよく気前良く出せたわね。その団体とやらは相当大きい組織と見た」
そうです。サンディ様がこのように仰った通り、その額を容易に用意|(駄洒落ではありませんよ?)する必要があります。
金貨一枚はおおよそ、銀貨百枚分。また別の指標を示すなら、金貨一枚はおおよそ、大人一人が約半年費やしてようやく稼げるであろう額とも言えます。
そんな一枚取得するだけでも大変な金貨が百万枚。あまりにも途方もないその大金を持っている方など、滅多に居ないでしょう。アメルダ先生を除けば。
(って、あれ?)
そういえば、『金貨百万枚』という額面に何だか覚えが……いいえ、忘れたくても忘れられません。その金額は――
「金貨百万枚は、先生がオークションハウスで売られていた私めを買った金額で御座います」
「!? まさか、借金の出所はそこか!? もしかして、【コミティア】に金貨百万枚を貸し付けたのは……」
「その通り~! <無魔力の忌み子>ちゃんを売買していたオークションハウスの総支配人よ~」
その言葉を聞いて、サンディ様が目を丸くさせます。
「はぁ!? つまりエメルダちゃんを売って得た金をそのまま流用したってこと? それ完全に横領じゃない! 前々からオークションハウスは違法スレスレの商品を流通させてる怪しい組織だとは思ってたけど、まさかそんな犯罪行為にまで手を染めていたとは……」
「お金の流れだけを見れば横流しと言っても差し支えないけど、あくまで慈善寄付として処理されたみたいね~。やり口は多少アレだったかもしれないけど、なんやかんや【コミティア】の復興に一役買ったのは間違いないでしょ~?」
「その通りで御座います。今思えば、案外すぐに街の復元が進んでいたように感じられます」
「でしょ~? だけども、その一見して良い流れに見えるこのことには大きな問題があるわ~。はてさて、わかるかしら~?」
その問いの答えはなんとなく分かる気がしました。
「……【コミティア】はその借金を必ずや返さないといけない、ということですか?」
「ピンポ~ン! その通りよ~。あなたの言う通り、借金は借金だわ~。街の見た目は小綺麗になったけども、その内側は返せるかもわからない負債で埋め尽くされてるのね~」
「そんな……私めのせいで、【コミティア】に多大な損失が……」
一連の話を聞いたサンディ様が憤りを見せます。
「何から何まで酷い話だ! じゃあその返済の当てを丸ごと全部エメルダちゃんに押し付けようっていう算段?」
「そういうこと~。でも、これは相当穏便な処置じゃない~? だって本来なら首をもぎ取られもおかしくないんだからさ~。だからこそ、<無魔力の忌み子>の命を奪わず、かといって野放しにしたくない口実として、借金という枷を付けることにしたのね~」
<大賢者>様はさも他人事のように肩を竦めます。
「さてさて、その額の負債をどう補填すればいいかしら~? どこかに気前の良いお姉ちゃんがいて、その借金を肩代わりしてくれたら楽なのに~」
「ぼふぅ!? げほぉ!? そ、その話、聞かれてたの!?」
「えぇ、あなたの恥ずかしい言葉は全部丸聞こえだったわ~。と言うか、最初に声かけた時に『その娘さんのお姉さんとして漢気ならぬ女気を見せてあげるのも悪くないわよね~』って言ったじゃない~。……で、どうなの、お姉ちゃん~? 可愛らしい妹を助けてあげないの~?」
「無茶言わないで……。アンタとワタシの貯金を足しても半分にすら届かないわ」
「あら~、じゃあどうしましょう~。何か良い稼ぎがないかしら~? 例えば、<とある四人の問題児>をどうにかする的なね~」
良くわからない方々の名が出た瞬間、サンディ様の眉が吊り上がります。
「……<大賢者>、まさかアンタの目的は最初っからそれだったってこと? アンタもアンタで悪趣味ね?」
「ぶっちゃけた話、それ以外で借金を帳消しにする手段が見当たらないだけよ~。それに、最近調子付いてる上層部をわからせる為にも使えるんじゃない~?」
「そうかもしれないけど、それはあまりにも酷だわ。何せ相手は<アイツ等>よ?」
どうにも浮かない顔をするサンディ様を思わず問い質してしまいました。
「あの、話の流れが全く掴めません。説明して貰っても?」
「あぁ、それはね――」
その後に続けられた言葉は正に、御伽噺が現実になるような突拍子の無いモノだったのです。




