一発ギャグ転の裏側でおもてなし
◇第1話、このはしわたるべからずの裏話になります。
裏側まで見に来てくれたキミに礼を言う。
◇
ことの顛末はこうだ。
桔梗屋とその一味が、一級さんを困らせようと企んだ。
町の流通に欠かせない大橋に偽物の立て札を立てて、橋の通行を止めた。
そのことで町に住む人たちにも害が及んだ。
そこへ、桔梗屋に促された『おやじギャグ一級さん』が登場する。
人々の悩みもすべて、おやじギャグで解消し、天下にその名を轟かせる一級。
この様な顛末がすでに日常的な流れになっていて、またしても桔梗屋一味の悪だくみ。
人々の悩みや町の問題の大半は桔梗屋を手先に持つ、悪代官らによる搾取。
いつからか、おやじギャグというキューティなスキルを発動し、弱者を救済する一級さんが町に現れた。
一級の素性は誰の知るところでもなかった。本人ですら思い出せないのだから。
お詫びをひとつ報告します。
窮地に立つシーンの描写は割愛させていただきました。
(ダラダラ文章を回避するために。こちらはダラダラしてますが気にしない気にしない)
そして、わたしはいま。かなり混乱しています。
それでも語れることは、語らなければいけなさそうです。
キミがそんな悲しい目をして訊ねるものだから。
◇
さて、一級さんが「まんじがだめ?」と独りごとを言った時点でこの引っかけに気付かれたでしょうか?
それはなんぼ何でも……。
きっと「さそりがだめ?」がきて、まんじ、さそりでもしかしてプロレス技か? と気付いて頂けましたなら、上々ですが。そうしますと一級さんがわざと訛り口調でつぶやいているのだろうか、とかも。
いいえ、勘の鋭い読者の皆さんならその手前の「はしがだめ?」時点で勘付いておられたのでしょう。橋の話だけにね。そうしますとエピソードタイトルから橋に引っかけてくると予想されていた感じですかね。
コメディですものね。まったくの手練れでございますよ、皆さんは。
えっ!?
作者名で、とっくにお見通しだったのですか。
これは、これは。
どうも、御見それ致しました。
でも伝えたいことが少しでも伝えられていたら、何よりです。
あたたかい目で最後まで、ご視聴下さり、ありがとうございました。
「……?」
文章に目は通せても、音は何も聞こえてこないだろ? でござるか。
確かにそうですね。でも。
「わたしと一緒にここまでお付き合いくださった……キミはすでに」
この渡れるはずのない橋を勇気の一歩で渡ってくださいました。
何かを掴みたい一心でここまで押し入ってくれました。わたしの闇にともに落ちるかもしれないと言うのに。
「龍」
エピソードタイトルをご覧になったのなら、それが【警告】でもあることに気付いていらっしゃるはずでござる。
「ドンっ」
大事なことだから冒頭ので、二回目ですよ。
「このはしわたるべからず」
橋なんて、もう架かっていなかったのですから。
かかっていたのはダジャレだけでござる。
(グスン。脱字なんかありませんよ)
それ以上、奥に踏み込んでいらしたら深い急流の川に落ちるしかないのです。
「バシッ」
だってそうでしょう。
そうでなければ、村人たちは頭を抱えることなく少し泳いで渡れば済むこと。
二度も印象づけたのは保険のつもりだったのです。
事件は解決し、桔梗屋は奉行所へ連行され、村人も今は動けないはず。
誰の助けもここには来ないのです。
キミも薄々は気付いていたよね。橋だけに……ではなく、
落ちだけにキレイに落とせ、とか。
それを密かにお望みになっていたのです。
上へ昇るか、さらに下へ落ちて流されるか。
キミならばまだ選べるから。
えっ!?
わたしはもう選べないのかですって? よくぞ訊ねてくださったことです。
「このはしわたるべからず」
これにより、キミのエスコートに失敗して落ちてしまいました。
落ちると思っていましたよ、だってお約束だもん。
「わたしはのこるべからず」
早く上に戻りたいよ。
おやじギャグは言葉遊びにすぎませんが、誰一人としてそれを極めている訳ではないでしょう。
極めた方が現代にいらっしゃらなければ、比較のしようもないのです。
さあ、ここまで来られたのですから真実のオチをご覧にいれましょう。落ちてからの逆転劇を。
村人を救ったあの決めゼリフ。
そこに隠された真意を。
あの時キミが……、
「よんのじがだめ」と読み解いていたなら、ほら。
「このはしわたるべからず」
「わたしはのこるべからず」
四の字固め はじめっ! → はじめのよんのじがだめ となり、
左から四文字目を落ちた下から読めば……、しんじつのオチも はしに 繋がっていますね。
上からともに落ちて、死は、避けられました。
よんの字ではじめたら、事件は解決した。
しかし物語はオチから作らなければ着地が不安定です。
着地が固まらず、だめだったとしてもどこかで──
「四の字固めっ! はじめっ!!」の伏線を回収しておきたかった。
──始まりと終わりのね。
それがこのページでした。
「四の字固め、おわりっ!」
わたしの発動スキルは自分で解除しなければ、村人が固まったままで身動きが取れないはずなのです。
キミがここまで来てくれたのはホントに、嬉しいです。
もしもキミがわたしの推奨どおり来なかったら、世界のどこにも戻れないわたしのせいで、村人たちに申し訳が立たない事故に見舞われた事でしょう。
この場を借りて、重ねて御礼申し上げます。
これで終わりですが、説明回だけの最終回にお越し下さって、ありがとう。
あ、大事なことを言い忘れるところでした。
わたし、スキルを発動するとその場所の知識が自分の記憶から削られてしまうのです。
この町になぜ居たのか、わかりませんが、周囲の者からはよそ者と呼ばれていましたので。
よそ者なのでしょうね。
ですから、村人たちがが居た……、この周辺なのですが再度インプットすれば大丈夫になるのです。地名が分かりさえすれば、この谷底より持ち前のエスケープスキルで脱出できるのです。
今は、わたしに会いにきたキミだけが頼りなのです。
ここはどこですか。地名に心当たりはないですか。
ところで──。
「キミも……よそ者ですよね?」
◇
上役人で語り奉行の、うらがわ信じてへん右衛門さんの声も一部に入れておきました。彼も草葉の陰で喜ぶでしょう。
一発ギャグ転いっきゅうさん。
「これにて一件、落着っ!」
あり乙