ラジオの前で〜やさぐれ作家の復活〜
思うように筆が進まない時、こうやって励まされた方もいるのではないかなぁ?と書いてみました。
俺の1日はログイン&ログアウトで始まり、ログイン&ログアウトで終わる。
「今日も0か…。」
アクセス解析ページにズラリと並んだ“0“。
「まぁ、でも仕方ないよな。」
スマホから目を離して呟く。
あるラジオの企画に参加したくて小説サイトに登録してから約半年。
チョコチョコと短編を投稿した後、俺は細々と連載小説を書き始めたのだが、このところ更新が滞っているのだ。
アイディアが浮かばない、日常生活が忙しい。
様々な言い訳…もとい、理由を考えては腑に落ちない気持ちを抱える。
とりあえず書いては消して、消しては書いて。
そして今日も、1行も進まないまま上書き保存が押される。
ふぅっと息を吐き、ベッドに倒れ込んで天井を見上げる。
「もう、やめちゃうかな。」
呟きながらぼんやりと動かした視線が時計をとらえる。
「あっぶね。」
慌ててラジオのスイッチを入れる。
携帯でも聴けるらしいのだが、この方が雰囲気が出ていい。
「今夜もステイチューン♪なんてな。」
アーカイブで聴いて気に入ったフレーズだ。
いつものオープニングを聴きながら、俺はまたベッドに寝転んだ。
2人の声が心地よく響く。
今夜も穏やかに眠れそうだ。
この番組は1日の終わりにちょうどいい。
もちろんしっかり聴きたいと思いつつ、パーソナリティの2人の声に癒されてついつい寝落ちしてしまうことが多い俺。
普通なら落ち込むところだが、放送翌日に更新されるアーカイブの存在が俺をますます甘やかしてくれる。
そして今日も、リスナーからのふつおたの後、次のコーナー名を聴きながら俺は静かに眠りに落ちようとしていた。
(あー、今日は『タイトルは面白そう』かー。そういえば…)
テンポよく、色んなタイトルやあらすじが紹介されていく。
(さすが、みんな凄いな。マジで面白そう。)
俺はほとんど意識を失いかけながら、他のリスナーの発想や文章力に圧倒されていた。
(やっぱり、やめちまう…かな…。)
いよいよ眠りに落ちようとした俺の意識が、次の瞬間一気に引き戻される。
「俺の、ラジオネーム…!!」
跳ね起きてラジオに顔を向ける。
ラジオネームに続いて読み上げられる覚えのあるタイトルと、響く2人の笑い声。
“好き“というボタンが押され、何が起こったかわからないうちに、作品のあらすじが読まれていく。
俺の文章がラジオで読まれている。
俺が書いた文章を、プロの声優が読んでくれている。
時間にしてわずか3分弱。
その短い時間で俺の眠気はすっかり吹っ飛んだ。
『ノリがいい』
『ネーミングセンスが凄い』
『読んでみたい』
まだ放送中なのに2人の言葉がグルグルと頭の中を回り、思わず笑みがこぼれる。
俺はスマホを手に取り、初めて“小説“を書いた時のことを思い出していた。
あれは確か小学生の頃。
“物語を作ろう“という授業の時だ。
何故か筆が進む俺の作品を読んで、友達が喜んでくれた。
面白いと言ってくれた。
自分が書きたいものを書いて、読んだ誰かが喜んでくれる。
それでよかったんだ。
みんなにウケなくていい。
誰かが楽しく読んでくれてればいい。
もちろんポイントやランキングがある以上、気にならないっちゃあウソになるが…。
すっかり眠気の飛んだ俺はログインボタンを押した。
完成度や評価より、まずは俺が書きたいように書いてみよう。
それが出来るのが、このサイトの魅力だ。
今後もきっと、うまく書けない日はやってくるだろう。
また、やめようと思う時もくるかもしれない。
でも書き続ければ、どこかで誰かが読んでくれるかもしれない。
嫌になったら今日のことを思い出そう。
誰かに読んでもらう喜びを思い出させてくれた番組。
『これからも、小説家になろうラジオを聴こう!』
最初は1話だけのつもりでしたが、他の話も浮かんだのでシリーズにしてみました。
また何かアイデアが浮かんだら書くかもしれません。