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この中に1人メインヒロインがいる  作者: Taike
第五章 涙の契約
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再集結

 学祭というクローズドな言葉の響きとは裏腹に、大学の催しというヤツは存外規模がデカかったりする。名のある大学は有名人を呼び寄せるし、金のある大学はマンパワーとマネーパワーで周辺地域をゴリゴリに巻き込む。普通の大学であろうと、高校の文化祭レベルは優に超えた一大イベントとなるのが一般的だ。


 学祭。それはまさしく、モラトリアムな若者たちの熱気で満ち満ちた青春劇場であり、要するに陰気な俺にとってはこれまで縁遠かったイベントである。


 ──しかし、人生とはやはり不可思議なものだ。


「おい大河! 次はアタシに焼きそば奢れ!!」


「ねぇ大河くん、天文サークルがプラネタリウムやってるらしいよ? 今度はそっち行かない?」


「大河っち大河っち! あそこの喫茶店、カップル割あるんだって! 二人で入ろ?」


 現在、大学三年目にして初めて学祭巡りをしている俺である。

 しかも自分が通ってない大学で。

 しかも大勢の女の子と。


「あの、俺っち聖徳太子じゃないからね? 一気に要求伝えまくるのやめてね?」


 こんなことになってしまった経緯は複雑なようで、実は単純である。芦屋さんの演技特訓に一週間付き合った後、「これはお礼です!」と学祭の招待券を手渡されたのだ。


 彼女が通う最上大学の学祭は招待券がなくとも一般入場できるが、招待券を持っているとあらゆる面で割引が効くらしい。その話をリサに盗み聞きされ、魔女ハウス中に言いふらされ、結果的に彼女たちと最上大学のキャンパスを訪れることになったわけである。


 なぜか舞華も居るが、彼女はシオンから「大河くんが学祭に行くらしい」という情報を聞きつけてやって来たらしい。シオンのヤツがどうやって俺と学祭のことを知ったのかは不明であり、そもそもどうやって舞華の連絡先を知ったのかも不明である。ヤツは岩崎家の付き人なんかやめて、スパイか探偵にでもなった方がよっぽど稼げるのではなかろうか。


 と、まあ、そんなわけで。時間ギリギリまでサークルで練習している芦屋さんを除き、俺、リサ、舞華、千春さん、沙耶の五人一行は学祭を回ることになったのだが──


「どうした、沙耶? 顔色が良くないように見えるけど」


 はしゃぎまくるリサたちに対し、一人浮かない表情の沙耶が俺は少し気になっていた。


「え? あ、そ、その……少し人混みに酔っちゃったみたいで……」


「あー、まあ確かに人口密度すげぇからな……」


 祭りというだけあって、街中に位置するキャンパスは学生・一般客を問わず大勢の人間でごった返している。講義棟も含めて今日は出店の密集地帯と化しているため、人が居ない場所は無いと言っても良い。


「大丈夫か? 少し休むか?」


「い、いえ! 私は大丈夫ですから!!」


「そ、そうか。無理はするなよ?」


 まあ俺も人混みは得意じゃないので、沙耶の気持ちは分かる。いわばここは青春の熱気で満たされたサウナのようなものだ。胸焼けして参ってしまうのも仕方がないかもしれない。


 だが──本当にそれだけか?


 そう思ってしまう自分が居たのも、また事実で。


【私を助けてくれませんか?】


 あの日の沙耶の言葉が、どうにも頭に引っかかって離れてくれない。


「つーか、なんで舞華いんの? アンタもう魔女ハウス関係ないっしょ?」


「えー、リサっち冷たーい! 別に一緒に居てもいいじゃん! 大河っちのこと好きなんだもん!!」


「なっ! ア、アンタ、よく堂々とそんなことを……!」


「もうっ、二人とも公衆の面前で大声出すのやめてよ……恥ずかしいじゃない……」


 再会を果たした元魔女と現魔女ハウスの住人たち。

 瞳の奥に陰を宿す沙耶。

 真意を秘めたまま、本番に臨む芦屋さん──


 ただの学祭では終わらない。

 そんな気がしてならないのは、ただの思い過ごしだろうか。


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