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この中に1人メインヒロインがいる  作者: Taike
第五章 涙の契約
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おねぇちゃん

 いつまでも同じ日々が続かないのは当たり前で、そんなことは重々承知のはずだった。

 けれども彼女たちと過ごす日々は心地よくて、少しくらいはみんなで楽しめる日々が続くものだと思っていた。


 だが、現実ってやつは軽率にこちらの想定を裏切ってくる。


 なんの前触れもなく、6人で暮らす日々はあっけなく終わった。

 これから始まる日々は、今まで以上に彼女たちの核心へ迫っていくものとなるだろう。


 俺たちの関係は大いに変化するかもしれない。

 傷つけあうことだってあるかもしれない。

 誰も幸せにならない結末になる可能性だって、ゼロとは言い切れない。


 けれども今のままではいられないから、俺たちは進むしかないのだ。


 ──たとえその先にある終わりが、望んでいたものではなかったとしても。


 喫茶店の会計を済ませ、帰路に就く。舞華は魔女ハウスから3駅ほど離れたマンションに住んでいるとのことで、俺たちは店を出てすぐに別れることになった。


 頭上を見上げると、空はすっかり夕焼け色だ。日没が早まるのを見るに、真冬の足音はすぐそこまで迫ってきているらしい。


「はあ、どうしたもんかな……」


 孤独な帰り道。最後に「じゃあ、またね!」と八重歯を出して笑った彼女の顔が、どうにも頭から離れてくれない。まったく困ったものだ。あそこまで包み隠さずに好意を伝えられると、どうしたって意識せざるをえない。あいつ、魔女やめた後の方がよっぽど魔女してないか?


 ……などと、考え事をしながら歩いていたからだろうか。


「わっぷ!!」


 道端ではしゃいでる少年と正面衝突してしまった。


「い、いたた……」


「ご、ごめん! 怪我はないか!?」


 尻もちをついている少年に駆け寄り、声を掛ける。

 完全にこっちの前方不注意だ。100パー俺が悪い。


「うん、だいじょうぶだよ。ぼくのほうこそごめんなさい」


「そうか、ならよかった……」


 ホッと胸を撫でおろす。

 顔を上げた少年には特に外傷は見当たらず、ピンピンしていた。


「……ん?」


 が、少年の顔立ちにどこか見覚えがある気がしたため、思わず二度見してしまった。


「おにいちゃん、どうしたの? ぼくの顔になにかついてる?」


「あー、いや、なんでも……」


 いやいや、気のせいだろう。


 そうやって、はぐらかそうとした時だった。


「こら、健ちゃん! 勝手にどっか行かないでって、いつも言ってるでしょ!!」


 今度は、背後から耳に覚えのある声が聞こえてきて──


「え? た、大河さん……?」


 振り向くと、そこには漆原沙耶の姿があって。


「おねぇちゃん、このひとだぁれ?」


「おねぇちゃんのカレシ?」


 なんか、小さい子供を二人連れていた。

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