おねぇちゃん
いつまでも同じ日々が続かないのは当たり前で、そんなことは重々承知のはずだった。
けれども彼女たちと過ごす日々は心地よくて、少しくらいはみんなで楽しめる日々が続くものだと思っていた。
だが、現実ってやつは軽率にこちらの想定を裏切ってくる。
なんの前触れもなく、6人で暮らす日々はあっけなく終わった。
これから始まる日々は、今まで以上に彼女たちの核心へ迫っていくものとなるだろう。
俺たちの関係は大いに変化するかもしれない。
傷つけあうことだってあるかもしれない。
誰も幸せにならない結末になる可能性だって、ゼロとは言い切れない。
けれども今のままではいられないから、俺たちは進むしかないのだ。
──たとえその先にある終わりが、望んでいたものではなかったとしても。
◆
喫茶店の会計を済ませ、帰路に就く。舞華は魔女ハウスから3駅ほど離れたマンションに住んでいるとのことで、俺たちは店を出てすぐに別れることになった。
頭上を見上げると、空はすっかり夕焼け色だ。日没が早まるのを見るに、真冬の足音はすぐそこまで迫ってきているらしい。
「はあ、どうしたもんかな……」
孤独な帰り道。最後に「じゃあ、またね!」と八重歯を出して笑った彼女の顔が、どうにも頭から離れてくれない。まったく困ったものだ。あそこまで包み隠さずに好意を伝えられると、どうしたって意識せざるをえない。あいつ、魔女やめた後の方がよっぽど魔女してないか?
……などと、考え事をしながら歩いていたからだろうか。
「わっぷ!!」
道端ではしゃいでる少年と正面衝突してしまった。
「い、いたた……」
「ご、ごめん! 怪我はないか!?」
尻もちをついている少年に駆け寄り、声を掛ける。
完全にこっちの前方不注意だ。100パー俺が悪い。
「うん、だいじょうぶだよ。ぼくのほうこそごめんなさい」
「そうか、ならよかった……」
ホッと胸を撫でおろす。
顔を上げた少年には特に外傷は見当たらず、ピンピンしていた。
「……ん?」
が、少年の顔立ちにどこか見覚えがある気がしたため、思わず二度見してしまった。
「おにいちゃん、どうしたの? ぼくの顔になにかついてる?」
「あー、いや、なんでも……」
いやいや、気のせいだろう。
そうやって、はぐらかそうとした時だった。
「こら、健ちゃん! 勝手にどっか行かないでって、いつも言ってるでしょ!!」
今度は、背後から耳に覚えのある声が聞こえてきて──
「え? た、大河さん……?」
振り向くと、そこには漆原沙耶の姿があって。
「おねぇちゃん、このひとだぁれ?」
「おねぇちゃんのカレシ?」
なんか、小さい子供を二人連れていた。