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この中に1人メインヒロインがいる  作者: Taike
第一章 俺と"あの子"と4人の魔女
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魔女にも女心アリ?

 勉強会翌日。いつもは大抵1人で居るか、リサが漫画を読んでいるかの2パターンだったはずの岩崎ルームでは、とある変化が起きていた。


「ねぇ、リサっちー。なんかいっぱい漫画あるみけどさ、リサっちのオススメとかないー? できれば恋愛系が読みたいんだけど」


 ──なんか1人増えた。


「え、ちょっと待って。なんで舞華が当たり前のように俺の本棚物色してんの?」


「え? だってリサっちが大河っちの部屋で漫画読んでるんだったら、私も別にここに居てもよくない?」


「あ、ちなみにアタシは舞華に大河の部屋のピッキングの仕方を教えただけであって、部屋に来いとは言ってないからね?」


 なにしてくれてんだコノヤロウ。


「まあ、ツッコミたいところは色々あるんだけどさ、もう正体が分かってるリサが俺の部屋に居座るのと、まだ正体が分かってない舞華が部屋に居座るのとじゃ、話が変わってくるんだよね。主に俺のメンタル的に」


 舞華はまだ魔女なのか"あの子"なのか分かっていない。そんな子がしょっちゅう部屋に来るってのは色んな意味で困る。せめて自分の部屋くらいは落ち着ける空間であってほしい。


「ぶぅー! 大河っちのケチー! 別にいいじゃーん!!」


「かわいくほっぺ膨らましてもダメなモンはダメだ」


 つーか、なんでいきなり名前の呼び方変えてんだよ。ちょっとドキッとするからそういうのやめてほしい。


「えー、どうしてもダメー?」


「ああ、ダメだ。まあ……舞華が自分から正体教えてくれるっていうんなら話は別だけどな?」


 リサじゃあるまいし、舞華が自分から正体を言うこともないだろう。俺の心の平穏を保つためだ。申し訳ないが、君には出て行ってもらうとしよう。悪く思うなよ。


「じゃあさ、大河っちは私のことどう思ってるの?」


「へ?」


「ねぇねぇ、私は魔女だと思う? それとも"あの子"だと思う? どっちだと思う?」


「いや、仮に俺がその質問に答えたとして、どうなるっていうんだ?」


「ふふふ、それは大河っちの想像に任せるよ」


「……なるほどな」


 さて、どうしたものか。単純に"からかわれている"と考えて質問を無視するのは簡単だが、この問いかけに答えないというのも、それはそれでもったいない気がする。


 おそらく舞華が素直に自分の正体を明かすということはないだろうが、魔女候補が『私の正体どーっちだ?』と聞いてくることは滅多にないだろう。まだ舞華の正体に近づく根拠は持ち合わせていないが、考えなしに舞華を無視するってのは、やっぱナシだ。


 だとすれば、ここで俺がとるべき行動は──


「俺は舞華を魔女なんじゃねぇかなって思ってるよ」


 確率的に1番正解に近い回答を提示し、舞華の反応を伺うことだ。


「……」


 俺の回答を聞いた舞華は、表情をピクリとも変えず、何を言うでもなく押し黙っている。一応彼女の表情から心理を読み取ろうと試みてはいるが、残念ながら焦りや動揺などは一切感じられない。


 数秒の沈黙がやけに長く感じる。耳に入ってくるのはリサが漫画のページをめくる音と、自分の心臓が脈を打つ音だけだ。


「えっと……そろそろ何か言ってくんない? 結局俺の答えは合ってたの?」


 なんとも言えない微妙な雰囲気に耐えきれず、俺は舞華に問いかける。


「さぁ、どうだろうねっ?」


 しかし彼女は俺の問いかけに明確な答えを出さないまま、いつものようにニコニコと笑いながら見つめ返してきただけだった。


「よし! じゃあ眉間に皺を寄せてるウンウン唸ってる大河っちを見られて満足したし、そろそろ私は部屋に戻るね! バイバイ! 大河っち! リサっち!」


 舞華は「また来るからね!」と言い残すと、部屋から出て行ってしまった。


「結局舞華は何がしたくて俺の部屋に来たんだ……」


 前より舞華と親密になれたんじゃないかという感覚はある。でも、未だに舞華が何を考えているのかってことは結局よく分からないままなわけで。


「女心って分からねぇな……」


「フン、モテ男は大変だね」


「あ? 急にどうしたんだよリサ。つか、モテ男じゃねぇし。普段は俺の独り言に反応とかしないだろ。いつもは大抵黙って漫画を読み漁っているだけなのに、今日はどうしちまったんだ?」


「いや、最初は随分舞華のことを疑ってたのに、すっかり仲良くなっちゃったなーって思っただけだよ。まあ? 今後もこの調子で頑張ればいいんじゃないの?」


「いや、まあ頑張るつもりではいるが……お前、なんか今日機嫌悪くない?」


「別に、そんなことないし」


 そう口で言ってはいるものの、どこかイライラしている様子のリサ。いつもは落ち着きのある彼女が苛立つのは珍しいことなのだが、はて、なにか良からぬことでもあったのだろうか。


「はっはーん、さてはお前、俺と舞華が仲良くなったことにジェラシー感じちゃってたりすんのか? まあ、心配すんなって! 俺の相棒はお前だけ──」


「うっさい! だまれし!!」


「ふぼぁっ!?」


 なんかクッションが飛んできた。


「アタシ、もう部屋に戻るから」


 『フン』と不機嫌そうに鼻を鳴らすと、リサはさきほど俺に投げつけたクッションを床から拾い上げるやいなや、足早にスタスタと部屋から出て行ってしまった。


「え? もしかして図星だった? 地雷踏んじゃった?」


 うーん、でもリサが俺にヤキモチなんて妬くものなのだろうか。相棒相棒とは言ってるものの、別にアイツとは深い関係にあるわけでもないし、そもそもアイツは魔女なわけだし。


「はぁ……」


 やはり女心というものは理解できないな。

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