表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/149

ハニートラップは終わらない

 大学三年、十一月末。

 長いようで短かった魔女たちとのシェアハウスは、終わりを迎えた。

 結末としては、誰一人として未練を残すこともない大団円であった。


 あの日々が終わっても、俺たちの関係は切れることもなく。

 今では全員が前を向いて、それぞれの道を進んでいっている。


 同居生活が終わってからは、そんな彼女たちと時折SNSでやりとりを交わすのが、日常におけるささやかな楽しみとなっている。


《大河っち助けて~! 就活ヤバいよ~!!》


 どうやら最近の舞華は、内定探しの旅に出ているようである。リクルートスーツを着た経験のない御曹司なので正直その大変さはよくわからんが、健闘を祈るばかりだ。


《ねぇ、私も沙耶っちみたいに大河っちのとこで内定出してよ》


《無理言うな。沙耶は家庭の事情が深刻で、なおかつ超高学歴だったからギリ押し通せただけだ。特殊事例だからアテにすんな》


《ぶぅぶぅ、大河っちのケチ。最後の最後まで全方向に厚意バラまいてた軟弱男》


《いきなり刺してくるのやめてくんねぇかな!?》


 なお、舞華は今でも何かと俺に思う所はあるようで……メッセージを交わしていると時々、変な汗が出てくる。



《お久しぶりです、大河さん。先日、行方不明だった父が見つかりました。岩崎グループの方々にはお世話になりっぱなしで、頭が上がりません。本当にありがとうございます》


 沙耶は時々、家庭事情の近況報告をしてくれる。元々警察にお父さんの捜索願は出していたようだが、どうも魔女ハウスが終わった後にシオンが速攻で居場所を特定したらしい。身内ながら、アイツの諜報能力には脱帽である。


《無事に見つかってよかった。また一緒に暮らせそうな感じかな?》


《そうですね。岩崎の人たちにフォローしていただいて、大学の近くで良い物件を借りることができそうなので。そこで、みんなと暮らすつもりです。父との関係が元通りになるのはもう少し時間がかかりそうですけど、そこは私が長女としてなんとか修復できるように頑張ります》


《相変わらず沙耶は家族想いだな。なんか。また沙耶のメシが食べたくなってきたよ》


《ふふ。そうやって無自覚に思わせぶりなこと言ってると、リサちゃんが怒っちゃいますよ?》


《うぐ。き、気をつけます……》


 年下のはずなのに、話せば話すほど彼女が俺なんかよりしっかりしていると思い知らされる。将来同じ会社で働く仲ではあるが、果たして俺は彼女にふさわしい上司になれるのだろうか。



《こんにちはです、岩崎さん! 今度ウチの大学でサークルの卒業公演があるんですけど、もしよければリサやみんなと一緒に見に来てくれませんか?》


 ここ最近で、芦屋さんはメキメキと演技の腕を上げているようだ。なんでもプロの劇団からスカウトが来ているらしく、大学卒業後は本格的に女優を目指す道も視野に入っているらしい。


《連絡ありがとう。予定空けて、見に行けるようにするね》


《わかりました! 良い演技ができるように、いっぱい練習がんばりますね!》


 もし女優デビューできたら、初サインは俺にプレゼントしてくれるらしい。

 もしかしたら、いつか古参ファンとしてドヤ顔できる日がやってくるかもしれない。



《ねぇ大河くん、今から通話できたりする?》


 シオンに関しては、なんというか色々と事情が複雑すぎて状況の言語化が難しい。


 まず第一に、シオンは俺の付き人ではなくなった。性別を偽ることをやめ、あくまで一人の使用人として岩崎家に仕えることとなった。『大切な相手が出来たなら、もう付き人は必要ないだろう』という、親父の判断である。


《ああ、大丈夫だ。今なら時間は空いてる》


 四六時中一緒に居ることもなくなったので、必然的に会話も少なくなった。しかし、よくよく考えるとこれまでの距離が近すぎただけなので、どちらかと言えば時々電話で話す今くらいの距離感の方が適切なんじゃないかと思う。


『もしもし、大河くん? いやぁ、急にごめんね。ちょっと君に、伝えたいことがあってさ』


「全然かまわん。別に今更遠慮するような仲でもないしな。電話くらいなら、いつだって出るさ」


 リサの時もそうだったが、あって当たり前のものが急になくなると、どうにも心が落ち着かなくなる。俺としてもシオンの声を聞くとなんとなく安心できるので、電話がくることに関しては全く抵抗がない。


『その、なんていうかさ。君の付き人をやめて女の子に戻って、君が居ない生活にも最近やっと慣れてきてさ。なんとなく自分の気持ちに整理がついてきたから、それを話しておきたいと思うんだ』


「なるほど。詳しく聞くとしよう」


『そんなに大した話じゃないんだけど、ね。ボク、やっと自分が大河くんに向けてた気持ちに名前をつけられた気がするんだよ。ボクは君が大好きだったけど、アレは恋なんかじゃない──“共依存”だったんじゃないかな、って。今になると、そう思うんだ』


「……なんとなく、気持ちは分かるかもしれない」


『でしょ? だって、少し前までのボクたちの関係を考えてみてよ。四六時中、一緒に居たんだよ? 君はボクが居たから生きてこれたし、ボクは君が居なきゃ生きてこれなかった。互いが互いを頼り過ぎてた部分って、正直あると思うんだよね』


「確かに、そうだな。紛れもなく、それは共依存だ」


『だよねぇ。だから今になって考えると、大河くんが最後にボクを選ばなかったのは正解だと思う。仮にあのまま一緒になってたら、きっとボクたちは底なしの共依存沼にドップリとハマってた。それは愛ではあるけれど、恋なんかじゃなくて、もっとおぞましいものだよね』


「ああ、違いない。ある意味魔女ハウスは、俺たちの関係を見直す良い機会だったのかもな」


 複雑過ぎるシオンとの関係は、一旦『共依存』ということで双方納得の結論が出た。


 この先で彼女との関係がどうなるのかというのは、まだ未知数ではある。しかし、少なくとも共依存は解消されていくことだろう。


 俺がシオン以外に頼れる相手を見つけ、シオン側も俺から距離をとる余裕ができた。近すぎた関係は徐々に離れていき、いずれはあるべきカタチに落ち着くだろう。



《今日、アンタの家泊まるから》


 リサはなんというか……以前にも増して、俺への遠慮がなくなった。


《いや、まあ、それは嬉しいんだけどさ。お前、どんどんウチに泊まる頻度上がってないか? もういっそのこと同居した方が良くないか?》


《それはダメ》


《いや、なんでよ》


《それは……アタシが、ダメになっちゃうから》


《へ?》


《だから! 同居なんてしたら、アタシが四六時中大河のことばっか考えるようになって、何も手がつかなくなりそうでしょ!?》


《いや、キレながらデレるのやめろよ。かわいいじゃねぇか》


《うっさい、だまれし!!》


 と、このように。リサとは甘い関係になったような、付き合う前とそんなに関係が変わっていないような……とにもかくにも、俺たちらしい関係性を維持している。


《文面ではそんなんだけど、会った時は更にデレるもんな。そういうところも愛してるぞ》


《アンタほんと、すぐ調子乗るわよね!?》


 そんな何気ないやりとりを交わすたびに、彼女のことを好きだと思う。


 割とバカップル思考に毒されているかもしれないが、まあ。

 今は一旦、この愛おしい時間を噛みしめて、幸せな日々を過ごしている。


  

 シェアウスが終わってからも、全くと言って良いほどに俺たちの関係が途切れることはなかった。直接連絡を取り合うこともあれば、SNSのタイムラインを眺めていると時々、五人で女子会をしている様子が動画やら写真やらでアップされていたりもする。あの生活が始まった時のことを考えると、想像もしていなかった未来が現実となっている。


 となれば、何か節目の時期が来ると『飲もう』だの『集まろう』だのという話題が俺たちの間で上がるのは必然である。


 まあ、そういうわけで──


「大河っち、リサっち、シオンっち、凪沙っち、みんな卒業おめでとう! かんぱーい!!」


 ──とりわけ、“卒業”というビッグイベントともなれば、こうして俺たちが集まるのも不思議なことではなかった。


「しかし、この庭に来るのも随分と久しぶりだな。一年半ぶりくらいになるか?」


 時は過ぎ、大学四年、三月末。

 それぞれが通う大学の卒業式が終了した直後。

 集合場所は、旧魔女ハウスの中庭。

 いつの日か全員で天体観測やら鬼ごっこやらをした懐かしい芝生の上に、俺たちはバーベキューセットとテーブルを並べ、簡易的な宴会場をセッティングしていた。


 いわゆる、『卒業おめでとうパーティ』というやつである。


「大河っちとシオンっちは家柄最強だから言わずもがなだけど、凪沙っちは女優志望でリサっちは看護師かぁ。みんな、ちゃんとした進路選んでてスゴいなぁ」


 就活のストレスからだろうか。

 一学年下の舞華はグビグビとアルコールを摂取しつつ、一人ボヤいている。

 リクルートスーツで酒を流し込む姿は、もはや哀愁すら漂っていた。


「もうっ、舞華ちゃんったらペース早すぎない? 潰れないように気をつけなよ?」


 一方、同じく一学年下の沙耶は小綺麗なドレスを身に纏い、非常に落ち着いた佇まいである。舞華とステータスは大差ないはずなのに、なぜこうも正反対なのだろうか。


「沙耶っちは私と同じ苦しみを味わってないから、お酒に頼らずに済むんだよ。どう? 今からでも大河っちのとこ内定辞退して、私と一緒に就活地獄を体験してみない?」


「お前は鬼か」


「でもさ、大河。よくよく考えると沙耶って東大だし、別に今から就活しても余裕じゃない?」


「おい、やめてさしあげろ。そりゃオーバーキルだ」


 そして、俺の彼女はあまりにも無慈悲に舞華へ現実をつきつけていた。


 あと、振袖めっちゃ似合っててかわいい。


「やっぱ大学生の就活って、学歴重視ですもんね……私も演技が無かったらと思うと、想像するだけで恐ろしいです……」


 同じく振袖の芦屋さんは、なんとか優しく舞華に寄り添おうとしている。

 が、彼女は彼女で芝居で進路を決めたヤバい人なので、あまり慰めになっていないような気もする。


「そんなに就活がイヤだったら、いっそのこと配信者にでもなってみたら良いんじゃない? ボク、ワンチャンあると思うよ。舞華ってオタク受けしやすいビジュだし」


 以前より随分と髪を伸ばしたシオンは、暗に『就活を諦めろ』と舞華を諭している。

 代案を出しているように見えて、ある意味一番慈悲がないのはコイツかもしれない。


「試しに顔出しでゲーム配信やってみたら、ボクでも同接1000人くらいは稼げたもん。舞華だってイケるイケる」


「それ多分シオンっちがクォーターで顔面最強だからだよね!? 私そこまで集められる気しないんだけど!?」


「シオン、お前……付き人やめた後、俺が知らないところでそんなことやってたのか……」


 ドレス似合ってるなとかロングヘアーになったなとか、そんな印象が吹っ飛ぶくらいの、なんなら今日イチの衝撃である。


 ていうか、同接1000って何? 普通に人気配信者じゃね? 


「もうっ! みんな凄すぎてイヤな気分になった! ビールもう一杯!!」


「おい、舞華。お前ほんとに大丈夫か?」


「あーん? 何理性的なこと言ってんの、大河っちー? 全然飲んでなくなーい?」


「なるほど既に手遅れか」


 どうやら舞華は完全に酔いが回っているようである。あの夏休み最後の飲み会くらい、ベロベロになっている。


「よし、もうこうなったら皆巻き込んでやる。はい、山手線ゲェーーム!!」


「お前マジで情緒どうなってんだ!?」


 ダメだ。完全に舞華がブッ壊れている。このままゲーム飲みが始まると、二年前の飲み会の二の舞になりかねない。


 学生気分は、もう卒業したんだ。あの時と違い、俺たちはすぐに社会人になる。そんなバカげた飲み方をするのは、絶対に阻止しなきゃいけない。


「いいね。今日で最後だし、アタシもゲーム参加する」


 ヘイ、マイハニー? もしや二年前の大惨事をお忘れで?


「私もやりたいです!」


 ねぇ、ロリっ子?


「ボクも参加で」


 おい、副業ユーチューバー?


「そうですね。最後ですし、みんなで盛り上がりましょう!!」


 ああ、一番マトモな沙耶までも……!!


 なぜだ。なぜこのメンツはそんなにゲーム飲みが好きなんだ。いや、まあ楽しさは分からないでもないけど、ここまで一枚岩にならんだろ普通。


「まあ、全会一致なら仕方ない。じゃあ、やるか……」


 正直乗り気ではないが、卒業パーティーをシラけさせるほど俺も野暮ではない。ゲームに負けなければ飲酒は回避できるし、全力で勝ちに行けば夏休みの二の舞にはならんだろう。


 そして、二時間後。


「うぇっへへーい!! 岩崎、いっきまぁーす!!!」


 ──そこには、華麗に二の舞を演じる岩崎の姿があった。


「にゃははは!! なんか懐かしいぞ、大河っちー!!!」


「相変わらず飲みっぷりが男らしいです!!」


 俺は忘れていた。そういえばこの五人、ありえないレベルでゲームに強いし酒にも強いのだと。おかげでゲームの負けが込み、そこまで酒にも強くない俺は既に泥酔寸前。想定外も良いところである。


 ──が、一方で。やはり彼女たちが酔っていないかと聞かれれば、別にそういうわけでもない。


「ふっふふー! リサちゃんは可愛いねぇ~! よしよしよし!!」


「なっ! や、やめろって姉貴!!」


 ちょくちょくリサに抱き着いて頭を撫でる沙耶と、謎に沙耶を実の姉だと勘違いしているリサ。


 うむ、実に二の舞である。


「メガネが本体、ち・は・る!! あ、ソーレ! メガネが本体、ち・は・る!!」


「もうボク千春じゃないし、そもそもメガネもしてないよね!?」


 千春さんの幻覚を見て歌う舞華と、今日に関しては一人称に違和感のないシオン。


 部分的に、二の舞である。


「セクシー・ビーム! セクシー・ビーム!! セクシ・ビーム!!!」


 案の定、ペッタンコな胸の前で腕を組み、セクシービームを放つ芦屋さん。

 愛らしい二の舞である。


「まあ、まだ今日はギリギリなんとかなりそうだな……」


 三月の屋外ということもあり、普通に寒いので夏休みの時ほど酔いは回っていない。まあまあキツいが、なんとか二日酔いは回避できそうだ。


 ──などと、油断していた時であった。


「ねぇねぇ、大河さーん。リサちゃんとは、まだ付き合ってるんですかぁ?」


 いきなり右腕に豊満な感触が襲い掛かり、耳元で思いがけない言葉を囁かれて。

 チラリと横に視線を移すと、そこには泥酔状態の沙耶がいた。


「ちょ、沙耶さん? 飲み過ぎじゃない……?」


「だーかーらぁ。リサちゃんとはまだ付き合ってるのかって、聞いてるんですぅ」


「いや、そりゃ別れるつもりなんてないけれども……」


「へぇ、そうなんですかぁ。ふーん……待っててもダメなら、奪いに行くくらいしなくちゃいけないかも?」


 そして、沙耶がボソリと呟いた瞬間。

 あまりにも唐突に、彼女らの戦いの火蓋は切って落とされた。


「ちょ、沙耶!? アンタ、人の男に手ぇ出そうとしてんじゃないわよ!?」


 エントリーナンバー1番。絶対的マイメインヒロイン、東条リサ。

 その男らしい立ち回りに惚れる、痺れる、憧れる。


「あー! 沙耶ったらズルいです! 私だって女優として有名になったら、また岩崎さんにアプローチかけようと思ってたのにっ!!」


 エントリーナンバー2番。永遠の合法ロリ、芦屋凪沙。

 なんか今、シレっと恐ろしいことを言っていたような気がする。


「ふっふっふ! 凪沙っちったら、まだまだだね! 私は現在進行形で、今も大河っちロックオン中なんだから!!」


 エントリーナンバー3番。腹黒卒業系女子、峯岸舞華。

 なんか常に俺のこと狙ってるらしい。スナイパーなのかな。


「あれあれ? 皆もしかして、ボクに勝てると思ってる? 共依存を卒業したボクは、もう向かうところ敵なしだよ? ふふ、待っててね、大河くん。今度はちゃんと、君に恋をするからさ」


 エントリーナンバー4番。全ての元凶であり魔女ハウス計画の主犯、音崎千春改め秋山シオン。

 おい、お前。俺と適度に距離置くんじゃなかったのか。軽率に告白してんじゃねぇぞ。


「なーんだ。みんな、考えてることは同じだったんですね? 私だってまだ、大河さんのこと諦めてませんから」


 エントリーナンバー5番。ロケットおっぱい&圧倒的主婦力、漆原沙耶。

 普段は一番マトモなのに、酒が入ると一番ヤバくなるのは君なんですね。


「アンタら、揃いも揃って良い度胸してるわね!? 大河の彼女はア・タ・シ、なんですけどー!」


「ふーんだ! 別に大河っちを寝取っても犯罪じゃないから良いもーんだ!!」


「それは倫理的にアウトですよね!? ちゃんとリサと別れるのを待ってからじゃないとダメです!!」


「そうそう、凪沙の言う通りさ。一般的に、ファーストパートナーとの婚姻率は15%だからね。つまり、85%の確率で大河くんはボクのものになる」


「ふふ。もういっそのこと一夫多妻国家に移住して、皆で大河さんをシェアしちゃいます?私、みんなとなら全然それでも大丈夫です!!」


 なんだろう。ものすごくデジャブだし、ものすごく嫌な予感がする。というか、さっきから五人が獲物を狙う肉食動物みたいな目で俺の方を見ている。


「大河は絶対譲らない……」


「大河っち……」


「岩崎さん……」


「大河くん……」


「大河さん……」


 いかなる生物でも、生存本能というものは存在する。強者が生きるために捕食を行うのなら、危機に陥った弱者側にも、生きるために本能的に働く行動、ないし衝動があるのである。


 というわけで──


「お、俺、ちょっと買い出し行ってくるから!!」


 ──狩られる側の俺は己の生存本能に従い、全力ダッシュで逃走を開始した。


「あ、大河っち逃げた! こら、待てー!!」


「私も負けてられないです! 舞華より先に岩崎さんを捕まえます!!」


「逃げても無駄だよ、大河くん! 君は100%の確率でボクのものだ!!」


「もうっ! どうせ、みんなで五等分するんだから誰が捕まえても一緒だよー!!」


「ったく! アンタらホントさっきから、よくアタシの前で好き放題言えるわよね!?」


 こうして彼女たちから追われていると、いつか鬼ごっこをした日のことを思い出す。

 

 あの時に比べると、色んなものが変わってしまったのかもしれない。

 彼女たちとの関係も随分と変わってしまったし、魔女ハウス生活はとっくに終わってしまった。


「「「「「待てー!!!!!」」」」」


 ただ、脱兎のごとく息を切らして走る今、この瞬間。


 ──俺は確信をもって、変わらないものもあるのだと、ここに宣言しよう。


「だぁ、もうっ! 結局、最後はこうなるのかよぉぉぉ!!!」


 夜空に叫ぶ今日が終わっても、ハニートラップは終わらない。

 彼女たちとの日常だけは、変わらず明日も続いていくのだと。


          <完>


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ