久しぶり
待ち望んでいたはずの再会を果たして胸に去来した感情は、なんとも不思議なものだった。
これまでと違って正体が分かっているはずなのに、もう一度顔を見せた東条リサは、相変わらず東条リサとして俺の目に映っているのである。
煌びやかな金色の長髪。
透き通った、小麦色の肌。
こちらの視線を掴んで離さない、凛とした瞳。
どこか安心感を覚える、ぶっきらぼうな表情。
もう少し“あの子”の面影を感じるものだと思っていたのだが、まるでそんなことはない。目の前に居る彼女が“あの子”の成長した姿だと感じることもなく、俺は今でも彼女のことを相棒だと思い続けている。全てが分かった状態で再会してもなお、彼女はあまりにも東条リサだったのである。
「はは、感動の再会だってのに、笑っちまうくらいにいつも通りだな」
「なっ! ア、アタシだって、こんな形で会うのは不本意だったしっ!」
「まあ、でも、思ったよりは悪くない再会だった。お互い変に気を遣って黙り込むよりは、こうして普段通り軽口言い合うくらいの方が良い」
まったくもって、ロマンスのない再会である。初恋相手とようやく会えたというのに、顔を合わせた途端に好き放題言い合っているのだ。こういう場面だと、本当ならもう少し甘い空気が流れたり、感極まって言葉に詰まったりするところなのだろう。しかしどうも俺たちに限っては、一般的かつ感動的な再会は難しいらしい。
だが、そんなムードもへったくれもない再会が、今はどうしようもなく心地良かった。
「まあ、なんだ。お前の正体が分かった状態で会うのは一応初めてだし、とりあえず社交辞令として再会の挨拶くらいはしておくべきだろう」
もう少し満を持して伝えるつもりだったが、こんなに空気が緩んでしまっては仕方ない。俺はさして覚悟を決めるわけでもなく、“あの子”だった彼女に言うべき言葉を伝えることにした。
「久しぶりだな、リサ」
たったその一言を伝えるためだけに、随分と時間を費やしてしまったけれど。
これでようやく、俺は本当の意味で“あの子”と再会を果たしたことになるのだろう。
「ふふっ、何それヘンなの。昨日まで一緒に居たのに久しぶりって、なんかおかしくない?」
「いいだろ、別に。ただ俺が言いたくなったから言っただけだ。お前は気にしなくていい」
「あっそ。じゃあアタシも、一応言うだけ言っとこうかな」
するとリサは、ほんの一瞬だけ柔和な笑みを浮かべ、
「久しぶりだね、大河」
どこか懐かしさを感じる声色で、そう囁いた。