必勝法
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およそ二時間に及ぶドライブを終え、俺は芦屋さんと共に目的地へと辿り着いた。リサが消えて一時はどうなるかと思っていたが、なんとか再会を果たすことはできそうだ。
「つーか──ここ、夏休みの時に来た海の家じゃねぇか」
「で、ですね……」
白木さんからはコテージだと知らされていたのだが、いざやって来てみれば、そこは見覚えのある海の家であった。初冬の日没寸前ということもあり、浜風が非常に冷たい。
「お、岩崎くんじゃん。隣に居るのは芦屋ちゃんか。二人とも久しぶりだね。ささ、立ち話もなんだし中に入ってよ」
そして、『ごめんください』と呼びかけるでもなく白木さんが颯爽と登場。入口からヒョコリと顔を出した彼女に案内されるがまま、俺たちは屋内へと足を踏み入れるのであった。
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元・海の家のカウンター席に三人で腰掛けると、白木さんは淡々と現状説明を始めた。
「ここ、夏は海の家として営業してるんだけどさ? 二階建てで結構しっかりした建物だから、夏以外は海辺のコテージとして観光客の人とかに貸し出してるんだよね」
「あー、なるほど。そういや、二階にベッドとかあったね」
夏休みに海で溺れたリサを救出した翌日。俺は盛大に風邪を引き、半日ほど寝込むことになった。その時は特に何も考えず二階のベッドを使わせてもらっていたが、なるほど。あの部屋は元々、観光客の宿泊スペースとして使われていたわけか。
「察するに、リサは今二階に居るってことか」
「ま、そゆこと。早朝にリサからいきなり連絡きて、泊まらせてって言われてね? 今日はお客さん来る予定もなかったから普通にカギ渡したんだけど、そしたら二階の部屋に引きこもっちゃった」
「そういうことだったのか。ありがとう、なんとなく事情はわかったよ」
リサは俺たちが起きるよりも前に魔女ハウスから姿を消し、コテージへとやってきたのだろう。動機までは分からないが。
「ところで岩崎くん? リサに会いに来たのはいいけど、今の感じだと君と話してくれる雰囲気なさそうだよ? そこんとこ大丈夫?」
「あ、そこは全く心配いらないよ。俺だって、無策でここまで来たわけじゃないし」
「へ? そ、そうなんだ。割と自信マンマンなんだね?」
「はは、まあね。……アイツとは、色々あったからさ」
これまでのシェアハウス生活で、確実なものなんてほとんどなかった。今でこそ全員の正体が分かったものの、確信をもって彼女たちの正体を言い当てたことは一度もない。
だが、これからリサに話を聞いてもらう自信だけは持っている。聞いてもらった後でどうなるかは分からないが、話をすることくらいは確実にできると思っている。
──今回だけは、その確信に値する必勝法がある。