ウラガワ
今回は舞華視点でお送りします。
◇
「さーて、岩崎っちはこれからどうするのかなー?」
特に意味の無い勉強会を終えて自室に戻ってきた私は、そんなことを呟きながらベッドに寝転がりつつ、今後の展開を思い浮かべてニヤニヤしてみる。
岩崎大河。日本でもトップレベルの大企業の御曹司で、なおかつ東都大学に通えちゃうくらいのエリートくん。しかも身長はそこそこ高いし、顔もそんなに悪くないから、きっと彼は今までの人生で苦労なんてほとんどしてこなかったのだろう。
──ふふ、だからこそ私は君の顔が歪む様を見てみたくなるんだけどね?
いやー、私と岩崎っちの学部が違うっていうのは最初から分かってたけど、東大生がSiriを頼りまくってるのって中々シュールで面白かったなぁ。
岩崎っち、きっと悔しかっただろうなぁ。だって東大生なのに、私ごときに勉強を教えることができなかったんだもん。
いやー、あの時焦ってる岩崎っちの表情とか本っ当に最高だった! カメラで撮れなかったのが悔やまれるなぁー!!
「男なんて、みーんな私の掌の上で転がってれば良いのよ。ふふ、岩崎っちには今後も無様な表情をドンドン私に見せてもらうからね?」
いやー、それにしてもこの家って最高ね! 生活費も出るし、合法的に彼をおちょくることもできるし!
といっても、まあ、私は別に岩崎っちを無理にオトそうとはしてないんだけど。軽くサービス精神で、顔を近づけたり、わざと胸チラさせたりはしてるけど、それ以外は特に誘惑するつもりもないし。まあ惚れさせることが出来たらラッキー、みたいな?
私はただ自分の掌の上で男を転がせればそれで良いし? ましてや恋愛する気なんて、そんなにないわけだし?
うーん、そうね。岩崎っちが私の人生観を変えてくれるようなことをしてくれれば、私の恋愛相手として考えてあげないでもないかもしれないね。まあ、そんなの絶対無理だと思うけど。
だって、今更私の"男嫌い"が治るとも思えないし。
パパは自分の都合でママと私を捨てた。そして私も何回か彼氏を作ったことはあるけれど、全員が浮気をしてしまうようなダメ男だった。
まあ最初は男運が無いだけで、私もまだまだ魅力が足りないのかなって思ってたこともある。私にも至らない部分があるから浮気をされちゃうのかな、って。少なくとも高校の時まではそう思ってた。
でも──
「いや、お前は十分可愛いよ。でも、ほら、アレだ。なんか飽きたんだよ」
高校卒業間際に、三人目の彼からそう言われて別れを切り出された時。私の中の『何か』が音を立てて崩れ落ちたような気がして。
それ以来、気づけば私は男という"自己中心的で身勝手な生物"を蔑視するようになって──その結果、歪んでしまった私は男に精神的な苦痛を与えることに快感を覚えるようになっていった。
例えば、私を見て鼻の下を伸ばしてる男の子に対してワザと勘違いさせるような言動をとって、いざ相手が告白してきたらこっぴどくフッてみたり、みたいな。まあ、とにかく私は男を困らせたり、苦しめたりするのが大好きになってしまったのだ。
どうせ、岩崎っちもパパや今までの彼たちと同じだしね。いや、大金持ちの息子だし、もしかしたらパパ以上に自己中心な性格かも。
まあ、とにかくそんな恵まれた環境に居るエリートくんが、私の人生観を変えるなんて出来るわけがない。岩崎っちは私の掌の上で転がされるオモチャになることはあっても、それ以上の存在になるなんことは、きっとありえない。
だっていくら一緒に住んでても、その相手が頭の良い御曹司クンだったとしても。私の歪んだ人生観を変えられることなんて、起こるはずがないんだもの。
※起きます。