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この中に1人メインヒロインがいる  作者: Taike
第六章 ずっとそばにいた
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最後のデート

 沙耶の証言により魔女ハウス計画の真の黒幕を知った俺は、一時的にファミレスの席を離れることにした。事実関係を確認するべく、爺に連絡をとるためである。


『おやおや、お久しぶりですねぇ御曹司。いかがいたしましたかな?』


「魔女ハウスについて聞きたいことがある。単刀直入に言うが、この計画を企てたのはシオンなんだな? 魔女側から言質を取れたから、岩崎家側の認識も一応確認しておきたい」


『ほうほう、なるほど。そういうことで。えぇ、御曹司のおっしゃる通りでございますよ。魔女ハウス計画の発案者は秋山シオンです。私はあくまで、岩崎家の一員として計画を遂行しているに過ぎません』


「い、意外とすんなり喋ったな……」


『まあ別に、首謀者の正体に関しては口止めされておりませんので。伝える必要がなかったから、お伝えしていなかっただけでございます。質問を受けて回答する分には全く問題ございません』


「そ、そうか」


 首謀者に関しては口止めされていない……裏を返せば、それ以外で何か口止めされていることはあるのだろう。それが何なのかは、全く想像もつかないが。


「しっかし、なんでシオンがこんなことを……?」


『ご存じの通り、表向きは“いつまでも過去を引きずって女慣れしない御曹司にハニートラップ耐性をつけるため”という目的でしょう。しかしながら、それはあくまで計画を岩崎家に認めさせるための口実。真の目的は私にも分かりません』


「おいおい、一応シオンって爺の孫だろ? 何考えてるか少しは分かったりしないもんなのか?」


『ほっほっほ。あの子には昔から随分と嫌われていますので、なかなか見当がつきません。ですが……ひとつだけ、分かることはございます』


 すると爺は、どこか悲しみを孕んだ声色で、


『御曹司を幸せにしたい──あの子はずっと、昔からそう思い続けているはずですよ』


 想定外の所感を告げた。



 席に戻った後は大半の時間を雑談で費やし、魔女の緊急会合はお開きとなった。


 なんやかんやで会話は盛り上がり、それなりに心地の良い午前を過ごせたように思う。魔女たちは魔女たちで友情を育んでいるようで、楽しそうな彼女らが微笑ましかった。たとえ同居生活が終わったとしても、この三人は良好な関係でいられるだろう。これまでの日々は決して、魔女にとっても無駄ではなかったのだ。


「いちまん、にせんえん……!?」


 なお、お会計は全くもって微笑ましいものではなかった。


「じゃあね、大河っち! 今日はごちそうさま! 次こそ絶対デートしようねっ!」


 その後、テニサーの練習に向かう舞華を見送り、魔女ハウス組は帰路に就くこととなった。


「なんか後半、ただ三人がスイーツ食うの眺めてるだけになってたな……」


「うぅ、ごめんなさい大河さん……ファミレス来るの久しぶりで、嬉しくて、その……いっぱい食べちゃいました……」


「いやぁ、食った食った。帰ったら漫画読もー」


 片や、申し訳なさそうに縮こまる沙耶。

 片や、人の金で散々食った後に人の部屋で入り浸る気マンマンのリサ。

 とても同じ生物とは思えない。


 まあ、今更そんなことを気にする俺でもないが。


「で、大河は帰ったらどうすんの?」


「あー、俺か? まあ……帰ったら、考えるよ」


 とは言いつつも、この時、既に俺は今後の方針を決めていた。


 音崎千春を知る──もはや俺がやり残していることは、それだけだ。


 魔女三人からこれ以上の情報を得る望みは薄い。だったらあとは、未だに本心が見えない彼女に直接近づくしかないだろう。


 調べられることを調べ尽くし、出来る限り言葉を交わす。全くもって曖昧な計画だが、結局はそうするしかないのだ。


【ねぇ、大河くんにとっての一番星って、誰なのかな?】


 ──誰よりも早く、答えを求めている彼女。


【でも……ずっと今のままだったら、そのうち大河くんが壊れちゃうよ。だから私は、できれば早いうちに選んでほしいと思ってる。それが大河くんにとって、一番だと思うから】


 答えを急かすのは、俺のためだと言ってくれる彼女──


【ねぇ、大河くん? どうすれば、私のこと好きになってくれる?】


 ──その本意を、知るために。



 俺は今夜、君と最後のデートをする。




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