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この中に1人メインヒロインがいる  作者: Taike
第六章 ずっとそばにいた
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魔女の会合

 長いようで短い夜が明けた。学園祭を終えてから迎える、初めての朝である。空は快晴で、気分も昨日よりは幾分か快調だ。


そうして思いの外気持ち良く目覚めた俺は、早速アクションを起こした。


「ねぇ大河っち、なんかこのメンツ珍しくない?」


「大河さん、一体私たちを集めて何をするつもりなんです?」


「……アタシ、眠いんだけど」


 日曜午前十時、魔女ハウス近辺のファミレス。 

 俺は舞華、沙耶、リサの三人を呼びつけ、集会を開いていた。


「えー、集まってもらったのは他でもない。今日は君たち“魔女確定組”から色々と聞きたいことがあるんだよ。あと一人となった魔女を探し当てるために、どうかご協力いただきたい」


 正解が分からないのなら、まずは状況整理と情報収集である。俺は魔女たちからヒントを得るべく、“これまでの生活を四人で振り返ることにした。


 同じ時間を過ごしていたとしても、魔女たちの視点からは俺に見えないものが見えているかもしれない。その“見えていないもの”の中に解答へのカギがあるのではないかと考えた。


「え、えっと、私は別に構いませんけど……」


「えー、そんなのつまんないじゃん。私、そんなことするくらいなら大河っちとデートしたいんだけど」


「……アタシ、寝不足だから帰りたい」


 なお、三人中二人はあまり協力的ではないらしい。舞華は通常運転として、リサの睡眠不足は半分こちらの責任なので多少の申し訳なさを感じる。


 が、しかし。こんな状況は想定内である。何カ月も一緒に暮らしてきたのだ。この程度で折れる俺ではない。


 ──この状況を一変させる魔法の言葉を、俺は知っている。


「ファミレスの代金は全部俺のおごりだ。金額制限なし。なんでも頼んでいいぞ」


「うん、大河っちとデートはいつでもできるもんね! 今日くらいは4人で楽しもー!」


「お腹空いてきたから目冴えた。舞華、メニュー取って」


「さ、さすが大河さん……二人の性格を完全に把握してる……」


 いやはや現金で助かる。まあ協力してもらう立場だし、ここの代金くらいなら安い出費だ。


「さて。早速だが、注文を決めながら聞いてくれ。今からいくつか質問をするので、率直な答えを聞かせて欲しい。言いたくないことを無理に聞くつもりはない。変に身構える必要はないからな」


 前置きに三人がコクリと頷くのを確認。

 間髪を入れず、俺は尋問へ移る。


「質問その1。三人はどういう経緯で魔女になったんだ?」


「私は街を歩いてたら、急に執事さんから声かけられた。その場で“魔女ハウス”の内容を聞いて、面白そうだったから魔女になったよ。それで大河っちと運命的な出会いを果たして、ただいま絶賛ラブモード中。ねぇねぇ、そろそろ私と付き合わない?」


「あ、えと、その……それに関しては全部終わったら必ず誠心誠意お返事をさせていただきますので、今はどうかご容赦を……」


 告白の返事をできていないことを改めて後ろめたく思いつつ、舞華の証言について思考を回す。


 爺が声を掛けたのは、おそらく岩崎家の命令だろう。

 芸能事務所のスカウトと同じような感覚で、街中の美女を手あたり次第勧誘した、といったところだろうか。

 なるほど、特に違和感はないな。


「アタシは……なんとなく、流れで」


 うん、知ってる。


「え、えっと、私は母の見舞いに病院を訪れた時、シオンさんから勧誘を受けました。最初は結構戸惑ってたんですけど、泣く泣くお金目的で魔女に……その、今でも申し訳なく思ってます……」


「いやいや、沙耶の件はちゃんと解決できたから……って、ん? ちょっと待って? 沙耶ってシオンに誘われたの?」


 完全に初耳である。たしかにアイツは魔女ハウスが始まるきっかけを作った黒幕ではあるが、それはシオンが泥酔状態の俺をあの家に放り込んだからに過ぎない。アイツがやったことは、それ以上でもそれ以下でもない。


 これまで、ずっとそう思ってきた。


 なのに、アイツが魔女の勧誘をしていた?

 俺に隠し事なんてしたことがないアイツが、黙って裏で動いていた?


『岩崎家からボクに出た指示は、二つ。大河くんを泥酔させること。そして、大河くんを魔女ハウスに連れていくこと。これは岩崎家の使用人として、お家から出た命令だ。だから、ボクに断る権利は無かったわけさ』


 シオンを問いただした時、アイツは確かにそう言っていたはずだ。

 だが、沙耶の言葉が真実なのだとしたら、あの時シオンは嘘をついていたことになる。


 ──アイツはなぜ、魔女を勧誘していた事実を隠す必要があったんだ?


「はい、私を誘ってきたのは間違いなくシオンさんです。聡明な大河さんのことですから、私がここで嘘をつく理由がないのは理解してもらえますよね?」


「あ、ああ、それはもちろん。ただ少し、腑に落ちないところがあってさ。アイツ、俺を酔わせて魔女ハウスに連れ込んだだけだ、って言ってたんだよ。なのにどうして、沙耶とのことを隠してたんだろうなって……」


「あれ? もしかして大河さん、シオンさん本人から聞いてなかったんですか?」


「え? 聞いてなかったって、なにを……?」


 そして、次の瞬間──


「シオンさん、“魔女ハウスはボク発案の計画だ”って言ってましたよ?」


 ──思わぬ形で、俺はひとつめの真相を知るのだった。


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