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この中に1人メインヒロインがいる  作者: Taike
第五章 涙の契約
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私とあなた

 月日を追うごとに、私は4人のことを深く知って、だんだんと好きになっていった。

 けれど、どんなに日々を過ごしても、彼のことだけは理解した気分になれなかった。


【ちょ、沙耶? なんか顔近くない……?】


 一見、女の子に慣れてないのがバレバレの、分かりやすい人のように思える。


【沙耶が作る料理は好きだよ】


 でも、時々不意打ちで、私のことを褒めてきたり。


【だから、俺は沙耶の言葉を否定しないよ。たとえ君が、俺をダマしているのだとしても】


 正体なんか関係なく、平気で優しくしたりしてくるから。

 嬉しくなったり、後ろめたくなったりする。

 そういう態度を取られると、私だってどんな感情になればいいのか分からなくなる。


 実際のところ、私のことをどう思ってるんですか?

 もしかして、割と疑ってたりしますか?

 結構がんばって魅力的な女の子を演じてるつもりですけど、ボロが出ちゃってますか?

 その優しさはどこまでが本音なんですか?


 日に日に、言いたくても言えないことが増えていった。

 我ながら、まったくおかしな話だと思う。

 魔女だというのに、ダマす側に心の迷いが出るなんて。


【もし私がピンチになって、どうしようもなくなったら──その時は、私を助けてくれませんか?】


 だから私は血迷って、あんなことを言ってしまったんだ。

 あなたがあまりにも優しすぎるから、なんでも受け入れてもらえるような気がしてしまったんだ。



 正直なところ、ここ最近は特に心の余裕がなかった。日を追うごとに増していく罪悪感に加え、借金の取り立てが直接私のところにやってくるようになったのが原因だ。


「ねぇ沙耶ちゃん、結構前に『返す算段つきそう』って言ってたよね? アレ結局どうなったの?」


「す、すいません……もう少しだけ待ってもらえないでしょうか……?」


 同居人にバレないように、陰で取立人とやりとりを交わす日々。魔女ハウスで生活するようになってから支出は減ったものの、そこで浮いた分のお金はお母さんの入院費に充てられていた。お父さんは未だ行方不明で、お母さんはまだ体調の回復が見込めない。かといって高校生の弟たちに働かせるわけにもいかないし、私が大学をやめたとしてもすぐに働き口が見つかるとは限らない。必然的に、返済が滞ってしまうような状況だった。


 シオンさんから魔女の話をもらった時に『返済のアテができそう』と誤魔化していたけれど、ついに取り立て側が待ちきれなくなってしまっていた。


 最初はお金のために、泣く泣く彼をダマすつもりではあった。

 けれど、いつしかそんな気持ちが薄れてしまって。

 結果的に、私はお金を返す算段を失ってしまった。


 それが現状で。

 いつどこで取立人から連絡がくるのかも、分からない状態になってしまったから。


「恨むんなら、消えちまった親父さんを恨んでね」


「やっぱさあ、もうカラダで返すしかないんじゃないの?」


 ──大河さんがこの状況に出くわすのも、時間の問題だったんだと思う。


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