北里の白日夢①
前書き
2030近未来の話⑪で明かされた北里の初恋。彼女の自殺を知り、自分の無力さを責め二度と恋はしないと心に決めていた。
北里には気になる女性がいた。彼女は北里のお客で、10年来の個人タクシーのお得意様だった。引退してからも、時々彼女が受付をするサーキットで「走り」を楽しんだ。そんな折に友人でかつてのタクシー仲間に誘われサーキットに行くが、大地震が襲う。居合わせた総理を官邸に送り、自宅に戻った。
夕暮れ、北里は家に帰り、疲れもあったのか着替えもせず、その儘横たわると、直ぐに眠りに着いた。
「北里クン!」
死んだ筈の初恋の彼女が、あの日の高校生の儘の姿で立っていた。
「一緒に帰ろうか。」
北里青年は何の疑問も無く辺りを見廻すと、大きな川の遊歩道に立っていた。
「いいよ、」
北里はあの小学校の日の出来事を繰り返してることで、「随分リアルだな、」と思った。
「あゝ、高校の帰りか。ここは学校の傍を流れる川の堤防、、か。」
北里は夢と分かっていたが、彼女が大人びている事に、初めて気がついた。
「小坂井?だよね。」
「初恋の彼女」の名前を確かめるように口に出した。
「当たり前でしょ!」
彼女が此処にいる。しかも髪型が変っているが、輝く様な目や艷やかな口元は間違いなく彼女だ。
後書き
夢か現実か初恋の女性が現れ、北里に新しい人生を促す。
北里の「新たな恋心」の行方は?
草稿中につき、乞うご期待。