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影とロボ男  作者: 日南田 ウヲ
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(8)


 ロボ男の手に乗せられていたのは細くなった影だった。

 その影は太陽の陽を受けているのに段々と細く小さくなっていく。

「影細りだ」

 影が言った。

「もう助からねぇ」 

 ロボ男がピピと音を立てる。

「おい。おまぇ」 

 影が小さな影に言った。

「何か、言い残すことはあるか?」

 その声に僅かに小さな影が反応した。それから小さな手を伸ばしてくる。その手をしっかりと影が握る。

「何だ?何かあるいか?」

 それにか細い声で反応する。

「・・あいつに・・あいつに会ったら言ってくれ・・いや・・あいつ・・違う・・僕の・・愛しい・・」

 そこで小さな影は消えた。

 ロボ男の十字の目がずっとそれを静かに追っていた。

「消えちまった」

 影が言った。

「いつもこうだ。皆、消えちまう瞬間に何かかよく分かんねぇことをいうんだ。愛とか、懐かしいとか、美しいとか。俺にはまったくそのあとに続く言葉が分かんねぇから、何言ってんのかわかんねぇけど」

 影がロボ男を見る。

「おめぇ、記録録画してんじゃねぇのか?」

 ピピと音を立てて頭部を360度回転させた。

「てめぇ!」

 言うや、影が立ち上がりロボ男に蹴りを食らわせた。

「ロボ男?お前には分かんねぇのか。仲間が消えちまう瞬間を録画なんてするなんて何て奴だ!!」

 影が大きく足を空に伸ばして、ロボ男に向かって足を振り下ろそうとする。

「お前には心がねぇのか!!心ってやつがよ!!」

 言ってから影がロボ男に蹴りを食らわそうとした時、そこで何故か影の動きが停止した。

「あれ・・俺さ・・今、何って言ったっけ・・」

 

影が大きく揺れている。


「あれ?何て言ったんだ?何だろう。何も知らない言葉を言った気がした。何だろう、いきなり何かが爆発して、一気に燃え上がって・・何だっていうんだ。なんだっていうんだ。気持ちが昂るような、何か湧き上がるような・・」



ロボ男は、ピピと音を鳴らした。

消え去った小さな影に微量の熱量を感知したからだった。

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