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ロボ男の手に乗せられていたのは細くなった影だった。
その影は太陽の陽を受けているのに段々と細く小さくなっていく。
「影細りだ」
影が言った。
「もう助からねぇ」
ロボ男がピピと音を立てる。
「おい。おまぇ」
影が小さな影に言った。
「何か、言い残すことはあるか?」
その声に僅かに小さな影が反応した。それから小さな手を伸ばしてくる。その手をしっかりと影が握る。
「何だ?何かあるいか?」
それにか細い声で反応する。
「・・あいつに・・あいつに会ったら言ってくれ・・いや・・あいつ・・違う・・僕の・・愛しい・・」
そこで小さな影は消えた。
ロボ男の十字の目がずっとそれを静かに追っていた。
「消えちまった」
影が言った。
「いつもこうだ。皆、消えちまう瞬間に何かかよく分かんねぇことをいうんだ。愛とか、懐かしいとか、美しいとか。俺にはまったくそのあとに続く言葉が分かんねぇから、何言ってんのかわかんねぇけど」
影がロボ男を見る。
「おめぇ、記録録画してんじゃねぇのか?」
ピピと音を立てて頭部を360度回転させた。
「てめぇ!」
言うや、影が立ち上がりロボ男に蹴りを食らわせた。
「ロボ男?お前には分かんねぇのか。仲間が消えちまう瞬間を録画なんてするなんて何て奴だ!!」
影が大きく足を空に伸ばして、ロボ男に向かって足を振り下ろそうとする。
「お前には心がねぇのか!!心ってやつがよ!!」
言ってから影がロボ男に蹴りを食らわそうとした時、そこで何故か影の動きが停止した。
「あれ・・俺さ・・今、何って言ったっけ・・」
影が大きく揺れている。
「あれ?何て言ったんだ?何だろう。何も知らない言葉を言った気がした。何だろう、いきなり何かが爆発して、一気に燃え上がって・・何だっていうんだ。なんだっていうんだ。気持ちが昂るような、何か湧き上がるような・・」
ロボ男は、ピピと音を鳴らした。
消え去った小さな影に微量の熱量を感知したからだった。