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「あっちゃ、動きよるわ。こいつ」
黒い顔がゆっくりと伸ばした首や腕を元に戻す。
とても不思議な光景としか言いようがない、この黒い存在は首や腕を自在に伸ばし、恐らく自分より体重の重いものを楽々と持ち上げた。
それを前にしてロボットが頭部を360度回すと四本の手を地面へ伸ばしながら、ボールの上を滑るように動き始めた。
ディスプレイの中で丸に十字を描いた画面が浮かびそれが黒い顔の方を向いた。
#ごきげんよう、そちらはどちら様ですか?
「は?」
黒い顔が動く。
「どちら様だって?」
黒い手が頭を撫でる。それから少し考えるような素振りを見せて、ロボットに言った。
「俺は『影』。そう、『影』さ」
#影ですか?了解しました。私はシマノエクスプレス社製の農業用ロボ、《ロボ男》です。影様、以後よろしくお願いします。
くるくるとディスプレイが回転する。
#影様、ちなみにここはどこでしょうか?