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「おい、ロボ男」
砂嵐の中、影が言った。
「記録してくれ。俺が消える瞬間を」
ロボ男の頭部が動く。
「もういいさ。別に怒りやしねぇよ。どうかしちまったのか・・俺さ。今ここに至ってなんかさ、何かを残したくなったんだ」
ロボ男の十字の目が影見つめる。
ピピ、音が鳴った。
影の向こうに『夜』見えた。
「残念だ」
段々と『夜』が迫り、『夜風』が沢山影に纏わりつく。
「ロボ男」
ピピ、反応する。
「絶対俺の代わりに『ブジ』に行き『あいつ』に会ってくれよ」
ピピ、頭部を回転させる。
『夜』が完全に巨大なカーテンになり迫ってきた。その時、ロボ男の感知システムが反応した。
それは有機生命体の反応だった。ロボ男が驚いて頭部を360度回転させる。
それはある方向で止った。その反応は影に対して感知されたのだ。
影が震えるようにして話し出す。
「あれ・・なんだこの温かさ・・これって俺が忘れていたもの・・ああ・・これはそう‥俺が人間だった時の温かさだ・・思い出した。俺は大和雄介、四十二歳、妻は裕子、娘の名は真理・・そう俺は上海にエンジニアとして働いていてある日突然、地球上をあの忌まわしい光体が覆ったんだ!!核・・あの悪魔の輝き・・それで俺は一瞬で消え去りこの魂だけが、影として焼け付いて・・今まで影として生きて来たんだ・・」
思わずロボ男が身体を砂から起こした。
「そう俺は家族、愛しい娘、美しい妻に・・懐かしい人々に会いたくて帰りたくて歩いてきたんだ」
影を捉える感知反応の熱量が上がる。
「そう、俺は会いたかったんだ!!・・あいつら・・もう消え去っちまった・・あのばかばかしくも愛しい人間達に・・」
そこまで言うと『夜』が影を覆った。
『夜』のカーテンに影の身体が触れ、ゆっくりと同化していく。
影がロボ男を振り返った。
「ありがとな・・」
呑み込まれていく寸前、影の手が突然ロボ男の面前に伸びて来た。それをロボ男がしっかりと握る。
それから何度も何度も強く振った。
握りしめた手は『夜』がロボ男を覆うと、ロボ男をひとり夜の世界に残して音もなく消えた。




