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9.青柳司は回顧する

 


 見られている。と意識したのがいつごろだったのか、青柳司は覚えていない。夏ごろまではそれほどでもなかった気がするから夏休みが終わった後かそのあたりだろう。


 視線は感じる。だが振り向いても誰もいない。


 悪意は感じない。悪意があったところで自分を害することができる存在はいないからどうでもいい。

 ただ、見られている。

 見られていることはわかるのに相手がつかめない。


 ……苛々する。


 生徒会室で他の色付きも同じようなことを言っていた。

 気になるから捕まえてみようかと。

 視線の主が他の奴らに捕まると考えるとなんだか苛々した。

「俺がやるよ」

 にっこり笑って言うと、なぜか赤羽が「気の毒に……」とつぶやいた。


 視線はいつも群衆の中から感じる。

 授業中にも感じるから同じクラスの群衆だろう。


 まあどうせ殺すんだけど、少しだけ話してもいいかなと思った。

 悪意も好意も感じない、ただ見つめる視線。それが珍しかったから。


 話しかけると、彼女は面白いくらいに硬直した。

「せめて狼じゃなくて自分で片付けなさいよ」

 恐怖に震える声で彼女が言った瞬間、面白いと思った。

 途端に今まで意識に入らなかった顔が、表情が見えるようになった。

 恐怖に涙を浮かべながらもまっすぐに俺を見る目に、一瞬前まで殺そうとしていたことを忘れた。

「なにそれ」

 不覚にも笑ってしまった。

 彼女が俺自身を見たうえで怯えていることに高揚を感じていた。


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