11.それから
ずっとずっと痛くて痛くて仕方がなかった。
少しの間だけ痛みが薄れて、だけどまたすぐに激しい痛みが襲ってくる。
もうやめてと叫んでもずっとずっと終わらない。
ふっと痛みがなくなって、静かになった。
誰かがあたしの髪をなでている。
その優しい手つきにぼんやりと目を開けた。
「あたしまだ生きてるの?」
天使みたいにきれいな男の子が泣きそうな顔であたしを見つめている。
「いつまで……いつまで続ければいいんだろ……」
ぼんやりとつぶやくと、男の子の目からきれいな涙が落ちる。
「いいよ。もう忘れなよ」
優しく口づけられてふわふわと幸せな気分になる。
なんだかあたたかいものが流れ込んできて、ふわふわと思考も記憶も白く白く塗りつぶされていく。
薄れていく思考のなかで、誰かの声が聞こえた。
《うーん。やっぱり正解知ってるからだめだったのかな。
せっかく選んできたのになあ。
まあ今回はバグが楽しかったからいいけど》
アハハハハ!という笑い声が聞こえた気がしたけど、それももうわからなくなった。
*
目が覚めたとき、あたしは何も覚えていなかった。
「……あなたは誰?」
眠っているあたしの手をずっと握っていた男の子にたずねる。
「ボク?ボクはね、山吹って言うんだよ」
山吹と名乗った男の子は、どうしてか泣きそうな顔で笑った。
番外編、黄樹と妻紅完結です。
ゲーム風に言うのなら、黄樹エンド、スチル名『再出発』といったところでしょうか。
もちろんもともとのゲームにこんなエンドはありません。
だいたいの流れは頭の中にあったのですが、書き始めたら二人とも思いのほか歪んでいたので、これは最後まで読んでもらえるのだろうかと不安になりました。
ここまで読んでくださった皆様本当にありがとうございます。
少しわかりにくかったと思うので補足を。
黄樹のフルネームは黄樹山吹といいます。
今まで誰にも呼ばせなかった名前をただひとり妻紅に預けました。
記憶を失った妻紅には伝わらない、黄樹なりの告白です。
これから二人がどうなるのかは作者にもわかりません。
色々重かった黄樹と妻紅編。いかがだったでしょうか。評価、ご感想いただけると嬉しいです。




