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22.青柳司は認識する
敬語をやめてほしいと言って数日。
彼女の口数が極端に少ない。
口を開いても、ぎこちなく話してすぐにとまってしまう。
教室で他の群衆相手にしゃべっているときは楽しそうだから、自分相手にもそんな風になればいいと思ったのに。
今日は目すら合わない。
……苛々する。
「そんなに嫌なら嫌って言えばいいのに」
苛立ちのままに口にすれば、
「拒否権なんてあるの?」
警戒心しかない視線に、やっと気づく。
「……そっか。俺が言うと命令になるのか」
力が違いすぎる相手からの要求は、強制にしかならない。
そんな単純なことにさえ、言われなければ気づけなかった。
「ごめん。敬語やめてほしいって言ったの取り消す。敬語でもため口でも、君のいいようにして」
――完全誓言をしてすらまだこんなに遠い。
「俺は君に命令はしないから。嫌なことは嫌って言って」
「……はあ。わかりました」
彼女が首をかしげながら敬語で答える。
忘れてはいけない。これが今の距離だ。