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17.図書室の住人の独白2

 昼休みも半ばを過ぎようという時間帯に珍しく彼女がやってきました。

 いつものように本棚に向かうわけでもなく、ぼんやりと立ち尽くしています。気になって声をかけてみれば何故か、本来彼女がまとうはずのない使役獣の気配を色濃く撒き散らしています。

 どうやら厄介事が起こったようです。

 図書室ではいつ人が来るかわかりません。私の領域である司書室で話を聞くことにしました。



 ……予想外の事態でした。

 使役獣の貸与と完全誓言という本来一般生徒には関わりのないはずの重要事項が彼女を襲っていました。

 青柳君の気まぐれだと彼女は説明してくれましたが、どちらも気まぐれでできる内容を超えています。


 よくよく観察すると彼女と使役獣との間には、少なからず縁ができていることが確認できました。名前をつけたことと、手をなめられたときに血を与えたことで擬似的に契約が成立したようです。

 主たる契約者は青柳君ですが、彼女にも一定の権利が与えられています。


 他人に使役獣を貸与するケース自体が稀な上に、多重契約状態となると私でも聞いたことがありません。

 ですが、微弱にでも魔力が使役獣に流れ込んでいるために、彼女の体調が思わしくないようです。

 以前彼女には群衆には魔力がないと説明しましたが、実は生物は皆微弱ながら魔力を持っています。体を動かすための必須の要素として体内にあり、魔力が足りなくなれば体のだるさを覚え、頭痛やめまいが起こります。それがさらに進んで魔力欠乏状態になると気絶、昏睡状態もありえます。

 通常、群衆の体を支える程度の魔力であれば日々の食事の中で自然に取れるので、魔力欠乏になることはめったにありません。

 しかし今回の場合、元々少ししかない魔力が使役獣に流れ込んでいるため、彼女自身の体を動かす魔力が足りなくなっているのです。

 これは早急に対処が必要です。


 さらに誓言の問題もあります。

 まさか完全誓言が成立しているとは思いませんでした。誓言は双方の魔力で術式を練り上げるものなので、一般生徒相手ではそもそも術自体が発動しません。

 どうやら青柳君は二人分の魔力を自分が肩代わりすることによって無理やり成立させたようです。

 使役獣のことと合わせておそらく今頃魔力不足で倒れているでしょうが、力技でこれだけのことを形にするとはさすが当代随一と言われるだけのことはあります。


 ……ですが、この誓言はいただけませんね。

 ほころびもありますし、少し手直しをしておくことにしましょう。

 誓言の魔力の一部が彼女に流れ込むようにして魔力欠乏を防ぎつつ、使役獣の気配を隠蔽するための結界も組み込んでおきます。

 それから彼女に危険が及ばないように術式を組み込んで完成です。


 以前彼女と共にこの図書館に来た生徒が彼女をここに連れてきてくれたようですが、彼の判断には好感が持てます。

 長生きして欲しい、先が楽しみな生徒ですね。


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