16.現状把握に努めましょう
保健室から飛び出してとりあえず教室に向かっていると、なんだか廊下に人が多い。
時計を見ると、もう昼休みに入っていた。寝ている間に三時間目が終わってしまったらしい。
……あとでノートも借りないとなあ。
教室に入るなり困ったときの隣の男子に聞いてみる。
「群衆が誓言受けることってある?」
「ねえよ!」
食い気味に言われた。
「……やっぱり?」
本でも見たことないもんなあ。
「とりあえず図書室行け図書室!」
たしかに特殊な調べものなら図書室のほうがよさそうだ。
「おーい女子!ついてってやって」
「はいはーい」
「いやべつに一人で行けるけど」
「青白い顔してまた倒れたらどうすんだよ」
何人かの女の子たちが食べかけの昼食を置いてこっちに来てくれる。
「おら、とっとと行くぞ」
隣の男子を先頭に、女の子たちに囲まれて図書室まで行く。
「あ、あのこれ。食べられなかったらごめんなさい」
女の子たちの一人がなぜか謝りながら袋に入ったサンドイッチとスポーツドリンクを差し出してくれる。
「ありがとう。でもこれあなたのじゃないの?」
「い、いいんです。気にしないでください……」
「午後の授業はごまかしといてやるからゆっくりしとけ」
私が図書室に入るのを見届けると、みんなはさっさと帰っていく。
……早くしないとお昼食べる時間がなくなっちゃうもんなあ。やっぱり悪いことしたかも。
いつもよりぼんやりする頭で考えながら、図書室に入ったところでぼけっと立っていると、
「どうしましたか?」
おじいちゃん先生が出てきてくれた。
私の様子を静かに見つめると、何かに納得したように小さくうなずく。
「何かあったようですね。図書室は飲食厳禁なので司書室にどうぞ。食べながらお話を聞きましょうか」