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12.ゲームの時間は終わったけれど

 


 まだ五月なのに暑すぎる。


 今の制服は膝丈のスカートに長そでのシャツと濃い灰色のベストなんだけど、物がいいのかどれもやたらとしっかりしている。

 ……もうぺらっぺらのやつでいいから。ベストもいらないから。

 そうはいっても校則で着崩し厳禁、腕まくりもだめなんだからどうしようもない。

「暑い……」

 机の上に軟体動物のように伸びていると、不意に隣の席の青柳が立ち上がった。反射的にびくっとする。


 ……はい。ここ大事です。進級して席替えの結果、青柳が隣の席になりました。うわーい。嬉しくない。

 そのまま引き戸を開けて教室の外に出ていく青柳。


「一応授業中なんだけど……」

「そんなんあいつに言うだけ無駄だろ」

 青柳と逆側の席からいつもの男子の声が答えてくれる。

 まあたしかに。それに自習だしなあ。私も机の上に伸びてる手前、強くは言えない。

 一応出された課題はやったけど、暑くて頭が働かない。

 机の天板も体温でぬるい。

 実は最近夜も暑くてあんまり寝れてない。……しんどい。

 ぐったりしていると、不意に天井からブン…と何かの起動音がして、ホコリくさい空気が吐き出され始めた。しばらくすると天井からの風が冷たくなってくる。

「クーラーだ……」

「早いな」

 むわっとしていた空気が冷やされていく。あー息までしやすい。

 気持ちいいし昨日も寝れてないし。自習中だし、課題も終わってるしちょっとくらいいいよね……。



 ふと目を覚ますと、いつの間にか古文の授業が始まっていた。

 うわっ、思いのほか熟睡しすぎてた。というか誰か起こしてくれてもいいのに……。

 ついつい案外面倒見のいい隣の男子を恨めしく見ると、口パクで『このバカ!』と言われた。いやまあ、寝ちゃったのはたしかに私が悪いんだけど……ん?『そっち見ろ?』

 言われたとおり見てみると、隣にはいつのまにか戻ってきている青柳。

 うわー青柳の横の席で寝こけてるとか自分が信じられない。



「お前ほんっとさあ、普段警戒心強いくせに時々無防備になんのやめろよ」

 授業が終わった後にあきれたようにため息混じりで言われてしまった。

 ……うう。反論もできない。


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