9 ダブルデート
早速,翌日の放課後,僕たち4人は一緒に下校し,帰りに近所のショッピングモールに立ち寄った。
まあ,高校生のたまり場としては鉄板だよね。特に田舎は。
いろんなお店を4人でぶらぶら冷やかし,お腹がすいてきたところでフードコートに立ち寄る。
僕と神田はハンバーガーと飲み物,佐々木さんと園田はクレープと飲み物を買って4人掛けの席に着く。
今回は,佐々木さんも無理をせず,片側に佐々木さんと園田,もう一方に僕と神田が座った。
人から見たらダブルデートに見えるのかな?
ショッピングモールだからそこまで大げさではないか?
もちろん,僕はこういうの初めてですから,挙動がぎこちないのは許してください。
神田があからさまに佐々木さんを無視して園田とばかり話そうとしないか心配だったが,さすがはイケメン,如才なく女の子二人に話題を振っている。
何なら俺にも。
4人の会話は神田を中心として進んでいく。大したもんだ。俺には到底無理。
佐々木さんは,今日は幾分控えめ。神田と1対1に持ち込もうとせず,園田さんも交えて会話を弾ませようとしている。
さすがに,この場で僕に話しかけてはこないな。まあいいけど。
ここで話しかけられても,電話の時みたいにうまく話せそうにないし。電話だと顔が見えないから話に集中できるけど,目の前に彼女の顔が会ったら見とれてしまって会話を続けられない。
今も意識して佐々木さんの方を見ないようにしている,他のテーブルの人たちとか。
「どこ見てるんよ」
と園田に睨まれた。別に好きでよそ見してるわけじゃねえよ!
僕は数合わせなんだから,3人で楽しく話してろよ。聞くだけはちゃんと聞いてるから。
「園田さんと佐々木さんは,よくここには来るの?」
「うちは,たまにエリカに付き合ってくるだけ。エリカは他の子らともよう来てるんやろ?」
「うん,プリクラとか,ファンシーショップとか,あとはぶらぶら見て回るだけだけど」
「園田さんはどんな店行くん?」
「うちは本屋かな。あと,無印とか」
「へえ,読書家なんや」
「それほどでもないけど」
「どんな本読むんや?」
「えーっと,まあいろいろ」
そう言って,園田はちらっとこっちを見る。あれは余計なことは言うなという威嚇の視線だな。ということは,子供のころと一緒で,少女漫画ばっかり読んでるんかな。別に恥ずかしがることないやろうに。
「タカもよう本屋行くよな」
「うん,僕は園田とちごて,漫画ばっかりやけどな」
ゴン! テーブルの下で足を蹴られた。俺の正面には園田が座ってるから,犯人は間違いなくこいつ。でも,神田の方を見て知らん顔をしてやがる。
「私も漫画はよく読むよ。美月から少女漫画借りて」
園田がくいっと首を曲げて佐々木さんの方を見る。今度は佐々木さんが睨まれている。
「へーそうなんや。俺もタカから漫画借りて読んでる」
僕は別にマンガ好きがばれても構わない。佐々木さんはその辺気にする人には見えないし。
そもそも僕のこと気にしてないだろうし。
「今度,4人で漫画の回し読みでもするか」
「いや,さすがに女子と男子じゃ読む漫画が違うんちゃう?男子の漫画はえぐいの多いし」
「うわあ,女子の前でエロ漫画の話するんや」
園田がぬれぎぬを着せてくる。お前,分かって言ってるだろ!
「エロいのじゃなくてえぐいのって言ったの!暴力シーンとかが女子にはきついかなって思ったの!」
まあ,お前は暴力すきそうだけどな,人の足蹴るし!
「それだったら,今度,アニメの映画でも見に行こうか。今,はやってるのあるし」
「あ,あれ私もまだ見てないし,みんなで一緒に見に行きたいな」
「うちもええよ。ほな次の日曜日にみんなで行こか」
ちっ,園田め,僕の意見を聞かずに決めやがった。
「タカもええか」
「おう」
やっぱ,持つべきものは親友ですわ。