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7 こいつ……

 というわけで,帰宅後,僕は園田に電話を掛けることにした。

非常に気が重かったけど,何だったら電話番号を押す指先が震えそうやったけど,好きな人と,ついてに親友のために,やむなく電話を掛けた。


「もしもし」


「なに」


「えっと,元気?」


「何の用」


「今電話大丈夫?」


「用がないんやったら切るけど」


 ちくしょう,クールにもほどがあるがな。これが塩対応っていうやつか。


「この前,神田と佐々木さんと僕らの4人で遊園地まわったやん?」


「それがなに」


「あのときは園田から頼まれて僕が神田に連絡したよな」


「それがどうしたん」


 こいつ,感謝の気持ちがまるでないな。


「それで,また4人でどっか行かへん?」


「え? いややけど」


 クッソ,そやからこいつに電話するの嫌やねん。


「この前はそっちから頼まれて僕が動いたんやし,今度はこっちの頼みも聞いてえな」


「なんでうちがそんなことせんなんの。あれはエリカのためにやったんやし,もう関係ないやん」


「いや,それはわかってるけど」


「ふ~ん,わかってるんや」


 ちょ,何やねんその相槌の打ち方。俺が鈍感やとでも言いたいんか。


「それやったらもう4人で会う必要ないのもわかるやろ?あんたかて,あの二人が仲ようしてるとこ見ても仕方ないやろ?」


「そら仕方ないけど」


「マゾやないんやったら,もうほっときいな。4人で集まっても,またうちとあんたがあぶれるだけやし」


「おまえ,佐々木さんからどう聞いてるん?」


「うん?頑張ってる最中やて聞いてるけど」


「うまくいってるかどうか聞いてる?」


「さあ,最近はあんまり言うてこんし。うちもめんどくさいから聞いてへん。付き合うようになったら言うてくるやろから,まだ告るとこまでは行ってないんかもしれん」


「神田からもそこまでは行ってないように聞いてる」


「どういうこと?」


「もう少し二人の面倒を見たったほうがいいような」


「ん? うまく行ってないの?」


「いや,うまくいってないかどうかは分らんけど,あんまり急ぎすぎてもようないかもしれんし。もう少しグループ交際みたいな形を続けた方があいつらもうまくいくんちゃうかと思て」


「……神田君がなんか言うてはるん?」


「いやあ,なんていうか,神田はモテるから,周りの目も気にせんなんみたいやし,最初はグループ交際の方がやりやすいみたい」


「ふーん,まあ,確かに最近,エリカのこといろいろ言うてる人もいるみたいやし,分からんでもないけど」


「え,佐々木さんなんか言われてんの?」


「今はうちが言わさへんようにしてるけど」


 言わさんようにするって,どうやってるんだ。怖いわ。


「せやろ,園田が目ぇ光らしとった方がええんちゃうか」


「うちは用心棒やあらへんけどな。ん~,まあ,そやなあ,ちょっとめんどくさいけど,その方がええ気もするかなあ。神田君も女の争いに巻き込まれるのは嫌やろし」


 なにそれ聞いてないんですけど。僕もそんな恐ろしそうなものに関わりたくないです。


「だ,大丈夫なん?」


「ん? まあ,どうにかするけど」


 なんか急に頼もしく見えてきたがな。味方に回るとこんなに頼りになるんか。いつも敵側やったから知らんかったわ。


「けど,あんた,ほんまに下心はないんやろな」


「下心てなんやねん。僕やったかて,親友の神田のために一肌脱ごうとしてるだけや」


 いや,本当は佐々木さんのためなんやけど。けど,それは下心とはちゃうやろ?自分にメリットはないんやし。むしろデメリットしかないし。


「ふん,どうだか。まあ,仕方ないし,協力しょうか。エリカの方には私から言うとくし,どっかまた出かける計画立てよか」


「うん,それでもいいけど,別に4人で学校の帰りにどっか寄り道する程度でもええんちゃうかな」


「ふーん,けど,近所やから言うて,寄り道が終わった後,あんたと一緒に帰るのは嫌やで」


 こっちから願い下げじゃああああああ


「おう,それでかまへん」


「ほな,ボウリングとかカラオケとか,何か考えてエリカと相談しとくわ。決まったら連絡するし,また神田君への連絡頼むで」


「了解」


 ふー,何とかなったな。

 

 でも,ちょっと意外だったけど,佐々木さん,俺にいろいろ頼んでることを,園田に言ってなさそうだな。まあ,園田に言ったら『しっかりしいや!』とかどやされそうだろ。それで,佐々木さんも言わなかったのかな。いや,僕相手ならともかく,佐々木さん相手なら,さすがに園田もそんないい方はしないか?


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