20 親友と
佐々木さんとの電話が終わった後,すぐに神田に電話を掛けた。佐々木さんとの電話の最中に,神田からの着信があったので。
「えらい長電話やったなあ」
「おう,すまんすまん。例の件か?」
「うん,今日はすまんかったな。迷惑かけて」
「いや,こっちはええけど。あれからどうしたん?」
湖岸での出来事の後,僕と神田,園田の3人は気まずい空気のまま駅まで戻り,そこで方角の違う神田とは別れた。園田がいたので,神田とは詳しい話ができなかった。
「まあ,家に帰ってずっとベッドで悶えとった。『ぐあー,やってもうたー』ってな」
「はは,神田でもそういうことするんや」
「まあ,振られるのも覚悟の上での玉砕やったんやけどな。覚悟しとっても振られるとやっぱわーってなるな。園田さんはどうやった?」
「いや,あいつはいつもどおり淡々としとったけどな,内心は分らんけど。僕と園田は一緒の方向やったけど,神田と別れた後はしゃべってないし,帰りの電車も離れて座ってたから」
「何でそうなんねん。普通にしゃべったらいいのに」
「いや,これが僕と園田の普通やし」
「なんやようわからん関係やな」
「まあ,僕のことはええやん。それより,なんであそこで告白したん?」
「巻き込んで悪かったけど,1対1で会って欲しいて頼む勇気がなかったんや。その段階で断られてしまいそうな気がしてな。そやし,4人で出かけたついでに告白してしもたんや。せめて,告白だけはちゃんとしたかったから」
「最初から,あんまり感触はようなかったんか」
「まあなあ。そら,もしかしたらとは思てたで? OKの可能性がゼロとまでは思ってなかったけど。ただ,それまでからあんまりいい感触はなかったしなあ」
「園田はそういうとこ分かりにくいやろ」
「そやなあ。話しかけてもそっけないとこあるし。ほかの子みたいに,積極的に話しかけてきてくれへんし。まあ,そういうとこもよかったんやけど」
「へー,そうなんやー」
女の子から積極的に話しかけられた経験がないのでわかりません!
「まわりにいいひんタイプやからなあ,そこが魅力でもあるんやけど,やっぱり難しいなあ。園田さんは,俺よりもタカの方に関心があるみたいやし」
「えっ。それはないやろ」
「いやあ,二人で話してても,タカの話になるとようしゃべるし。それに,タカの方よう見てるし」
「やめて,寒気がする」
「けど,ほんまやで?それもあって,これはあかんかもなあって思てたんや」
「いや,まじで,園田が僕のことを好きってことは絶対ないから」
「そうかなあ。佐々木さんもそんなこと言うてたし」
「え,佐々木さんがなんて?」
「園田さんは普段男の話をほとんどせえへんらしいんやけど,タカナリ君の話だけはようするってゆうてたで」
「佐々木さんも誤解してるな」
「4人で会うようになったきっかけも園田さんがタカに電話かけてきたことがきっかけやった訳やし」
「でも,それは他に理由が―」
「ん? 理由て?」
「いや,何でもないけど」
やば,佐々木さんのことは言えへんがな。
「それで,これからどうする?」
「ん? 園田さんのことか?」
「うん,それとか,僕ら4人で遊びに行くこととか」
「それはこれまでどおりでいいんちゃう?別に4人の友達関係は関係ないんやし」
「でも,神田は気まずないんか」
「まあ,気まずいことは気まずいけど。けどな,こんなこと言うたら笑われるかもしれんけど,まだこれで終わったつもりはないねん」
「ふん?」
「まあ,これで園田さんの方から避けられるようなら諦めるけど,友達関係を続けてくれるようやったら,まだ可能性はあると思うねん」
「ほう,その心は?」
「いきなり告白したし,今は向こうにその気がないのは分ってる。けどな,告白したことでこれからは俺のこと意識して見てくれるかもしれんやん? この男は自分のことを好きなんやと思たら,俺のこと意識して見てくれるかもしれんやん? そしたら,これからの俺の頑張り次第によっては,園田を振り向かせるチャンスはあると思うねん」
「ほう,ポジティブやな」
「実際,女子にはそういうことがよくあるらしいで。中には『1回振られたくらいですぐ諦めてしまうような男子はお断り』なんていう子もいるらしいからな」
「げ,なにそれ。ちょっとついてけん。そんなこと言うくらいなら,最初から断るなよ」
「まあ,男からしたらそう思うけど,女子はそんなもんらしいで。実際,モテる男いうのはそうやって頑張るらしい。もちろん,ストーカーって言われんように,うまいこと頑張らんなんけどな」
「なんか,男の方が損な気がする」
「まあ,そうとも限らん。振られてももう1回チャンスをもらえると分かってたら,告白する勇気も沸くやろ」
「僕には無理やなあ。1回目でショックで寝込んで諦めてしまうやろ。そんなにポジティブに離れんな」
「タカやったかて,1回振られたら,もう1回チャンスが欲しいて思うって」
「それは陽キャの思考やな。陰キャには真似できん」
「タカも自分で言うほど陰キャやないやろ」
「そうかなあ」
「タカは佐々木さんに告らへんのか?」
「やめて,なんでそうなんねん」
「いや,タカと佐々木さんが付き合ってくれたら,俺と園田さんとの関係もうまいこと行くかもしれんやん」
「自分のことは自分で頑張れや」
「はいはい,分かってます」
「ほな,これからも4人で会うっていうことでええな」
「おう」
「ほな,僕から連絡しとこか」
「うん,頼むは。さすがに振られたばっかですぐに園田さんに電話するのはしんどいし」
「了解」




