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13 ボウリング

 順番はじゃんけんで決めた。その結果,園田,神田,佐々木さん,僕の順になった。

 休日のためボウリング場はそこそこ混んでいたが,そうはいっても田舎なので1時間と待たずにレーンが開いた。

 運動をするということで,女子もパンツスタイル。前回は二人ともスカートだった。いろんな私服がみられて新鮮である。もちろん,佐々木さんのことね。


 最初のうちは4人とも調子が悪く,成績は低迷気味。神田は,ボウリングはあんまりやったことがないとかで,スピードのある球を真ん中に投げるのだが,端のピンが残ってしまってなかなかストライクが出ない。

 それでも,スペアは出しているあたり,運動神経のたまものだろう。

 僕は,普段と変わらないが,スロースターターなので,最初のうちはなかなか調子が出ない。

 女子二人は,どん,ごろごろ状態ではあったが,それなりに真ん中近くにボールを当てていた。


 それでも,1ゲーム目の後半になると神田も調子を上げてきて,ついにストライクが出た。


「よっしゃあ」


とガッツポーズで帰ってくる神田。ここで,イケメンは当然のようにハイタッチをご所望。

 まずは僕とハイタッチ。


「イエーイ」


「イエーイ」


 普段なら絶対言わないが,ボウリング場でなら何とか返せる不思議。


 続いて,流れるように女子の方へ進み,まずは近くに座っていた佐々木さんとイエーイ,ハイタッチ。佐々木さんも頬を赤らめてハイタッチを返している。

 続いて佐々木さんの隣に座っていた園田にもハイタッチ。園田はこういうのを嫌がるかと思ったが,素直にイエーイしてハイタッチしていた。そうか,園田が嫌がるのは僕だけか。

 それにしてもさすがはイケメンである。なるほど,こうすれば自然に女子とスキンシップが取れるわけか。イケメンおそるべし。

 僕もストライクを出したら佐々木さんとハイタッチができるだろう。がんばるぞ!


 次は佐々木さんの番。佐々木さんはボールを両手で持ってトテトテと歩いて行き,どん,ころころとボールを投げた。

 神田のスピードボールに対して,佐々木さんの玉は投げるというより転がすに近かったが,転がった球は1番ピンに当たり,ドミノ倒しのように他のピンが次々と倒れた。

 何と,神田に続いて佐々木さんもストライクである。


「やったー!」


 飛び上がって喜ぶ佐々木さん。うん,笑顔がまぶしい。


 佐々木さんはちらちらっと神田の方を見ると,意を決したかのように両手を上げてハイタッチのポーズ。


「イエーイ」


「イエーイ」


 まずは園田とハイタッチ。続いてその隣に座っていた神田のところに向かう佐々木さん。


「イエーイ」


「イエーイ」


 神田も盛り上げるように,立ち上がってハイタッチを返す。佐々木さんがますますニコニコ。

 頬が上気していて色っぽい。

 いいなあ。

 さて,次は僕の番だ。僕もおもむろに立ち上がる。

 神田にハイタッチした時のまま,両手を上げた姿勢の佐々木さんと目が合う。


「あ」


 声は出ていなかったかもしれないが,佐々木さんが一瞬固まったのが分かった。

 僕とハイタッチすることは考えてなかったようだ。

 というか,今は神田とハイタッチした余韻を噛みしめていたところで,僕のことは頭になかったのだろう。


「さて,次は僕の番やな」


 僕はそう呟きながら,佐々木さんの横を通り過ぎ,そのままレーンに向かう。

 佐々木さんがちょっと気まずそうな顔をして両手を下す。


 ゴロゴロゴロゴロ―,コトン,ゴロゴロゴロ―


 ボウリングは投げる時に力が入りすぎるとうまく行きません。ガーターです。

 クッ,好きな女の子の前でなんともかっこ悪い。これがイケメンとフツメンの差か。


 僕は2回連続でガーターを出してしまうと,頭を掻きながらみんなのところに戻る。

 園田が


「なにやってんの」


と言って煽ってくる。

 くそ,煽るんじゃねえ。

 僕はみんなと目を合わせないようにして席に座る。


 次は園田で,ストライクは出なかったが,スペアを出しやがった。チクショウ。

 園田は,席に戻ってきても自分からはハイタッチを求めず。佐々木さんが園田にハイタッチを求めて両手を差し出したが


「ストライクちゃうしええって,恥ずかしい」


と言って応じず。なんですかそれ,恥ずかしがり屋さんですか。神経は図太いはずですが。まあ,確かに園田は陽キャって柄ではないしな。


 神田は,そのあと何度もストライクを出して4人の中ではぶっちぎりの高得点をたたき出した。でも,最初以外はハイタッチは求めなかった。空気読んだんかいな? そこまで変な空気にもなってなかったと思うんやけど。

 後の3人の得点については,ぼちぼちということで。


 ちょっと気まずい場面もありましたが,僕もすぐに忘れたふりをして自然に振舞ったし,佐々木さんもずっと笑顔でいてくれたから,気にしすぎない方がいいかな。


 別に,大したことじゃないし。


 好きな女の子から身体的接触を拒絶されたとか,大げさに考える必要はない。

 園田とやったってハイタッチはしてないし,それ以外の女子とも一度もハイタッチなんかしたことない。


 そやから,特別なことやあらへん。


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