2018年11月3日土曜日 文化祭1日目(5)
教室前の掲示板の前に立つミフユ。そこに張り出されていたポスターを指差して言った。
「明日、ここで料理自慢を競うコンテストがある。広乃ちゃん、ここでどうかな?」
ミフユが勝負の場として提案したのは2年B組が企画した料理コンテストだった。この企画は申請書が文化祭実行委員会に回ってきた時一悶着あった。
企画申請書を見た実行委員会の二年生の三つ編みが映える副委員長がメガネを押し上げると唸った。
「委員長、ねえ、高山くん、2Bのこの件は当然知ってるよね?自分のクラスなんだし」
忙しい日が続きちょっと顔色が悪いけどその事すら楽しんでいそうな高山リンは軽く頷いた。
「自分のクラスだから電源とかそういう話はしたけど後は見てただけ。情実になっちゃうじゃん」
副委員長はため息をついた。
「そういう所だけ真面目なんだから。これって面白そうだけど調理実習室ってお料理研が普段から使ってるよね。無理じゃないの?」
ミフユは話を聞いていてふと思いついた事を言おうとしたらミフユが生徒自治会長になった時の選挙参謀にして生徒自治副会長、そして後任の生徒自治会長となってくれた加美洋子さんに先を越された。
「お料理研は学食使えるんだから控え室とか考えてるだけなら遠慮してもらってあそこを回せば丸く収まる。……って考えてみたらB組ってお料理研の副会長も高山くんと一緒だからそこまで計算しての申請でしょ?」
副委員長はなにせ話が早い人。でないとアイデアマンの高山くんのアシスト役が務まらない。文化祭実行委員会は高山くんがあってのものだけど、副委員長があっての文化祭実行委員会でもあるのだ。
「なるほど。さすがは生徒自治会長。高山くん、承認するけどいいよね?」
「もちろん」
委員長が応諾するのを確認した副委員長はえいっと「承認」の印鑑を押した。
ミフユは文化祭実行委員会に前会長という立場で助言する役割があったのだけど、前会長が助言するまでもなく加美さん達がきちんと対処していた。
料理コンテストのルールは単純だ。用意された食材と調理器具を用いてパンまたはご飯に合う料理を二品以上を時間内に作る事。審査員が料理を一口ずつ食べて回り感想を述べるとそれに対してオーディエンスが票を入れるという食べない人が食べた人の感想で美味しい料理を決めるという面白い仕掛けが施されていた。
「審査員はクラス内で選りすぐりのグルマン達を選んでいる。彼らの語る言葉に期待して下さい!」
というのが主催者たる2年B組が作ったポスターに書かれた前口上だった。
この他に複数名参加の場合は最低品数を人数分とする事など決められていた。