2018年11月3日土曜日 文化祭1日目(4)
三人はマナーハウスを後にした。出口でお金を払う事になっていたので払おうとしたら陽子お姉ちゃんが親友の妹さんとそのお友達からお金は取れないからと言って受け取ってくれなかったので三人揃って丁寧にお礼を伝えた。
男装の麗しい執事の人は手を振って三人を見送ってくれた。
小学生3人の中で陽子さん人気は急上昇。「陽子さんは本当にいい人、きれいな人」という事で意見は一致した。席を立つ前に執事・メイドナンバーワンを決めるアンケート用紙に陽子さんの名前を三人とも書いて入れて出てきて良かったあと思ったのだった。
ミアキは2人を囲碁・将棋部の展示教室に連れて行った。姉から五目並べのゲームができると聞いていたのだ。そこでクラスメイトが巻き込まれていたある事件を解決すると三人は教室を離れた。こういう時、私たちは無敵だとミアキと広乃は思い、ユウスケは二人に無茶させなようにしなきゃと改めて誓っていた。
広乃がまたパンフレットを広げて考え込んでいた。
「次はどこに行こうか?」
ユウスケは二人から何も意見が出なければ外の模擬店を提案しようかと思っていたら階段を上がってきたミフユさんとすれ違ったので手を振った。
すると広乃の頭の中で何かがスパークした。マナーハウスの前でミフユさんと話をして以来、何かモヤモヤしたものが後味悪く残っている事が不愉快だった。ええい、秋ちゃんには悪いけど。そして広乃は振り返った。何事かとミアキとユウスケが驚いた。
「ミフユさん!」
みんな、足を止めた。ミフユが振り返った。広乃は思い切って叫んだ。出たとこ勝負ってやつ?高校生のおばさんに通じるかな。
「私とユウスケ、ミアキちゃんと何か勝負して下さい」
唐突な広乃の願いにミフユは目を瞬いた。一瞬何事かと思ったんだけど、広乃ちゃんの態度を見てなんとなく想像は出来た。そんな事を思いながらやんわりと問い返した。
「んー。時間はあるけどね。何か遊びたいのかな?」
広乃は強い言葉でミフユに迫った。
「いえ、遊びじゃなくてしんけんしょうぶ、でお願いします」
「広乃ちゃんだったっけ。何か怒らせちゃったかな?ごめんね」
「それはお姉さんの方だと思うんです。私、いや、私達は何も思ってません」
広乃ちゃん、なんかムチャクチャだよと思うユウスケとミアキ。でも二人は何故か止められない、止めちゃいけないと思った。
ミフユさんは少し困った顔をしていたけど広乃の売り言葉を買った。
「勝負って何する?挑まれたからには手加減はしないけどそれでいいよね?」
広乃は首を縦に振ると破顔一笑した。
「高校生のおばさんに負けたりしないです」
ミフユは少し口元が上がった。
「明日でもいいなら勝負しようっか。ちょうどいい場所があるしさ」
そういうとミフユは三人を連れて南校舎2階にある調理実習室へ向かった。